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乾くるみ『林真紅郎と五つの謎』光文社文庫

2006年09月17日 | reading
ネタバレ注意。

勝手に連作でラストに繋がると思ってたので梯子を外された感がありましたが、一話ごとに見ても、それぞれ見所のある短編集です。この作家の、恐ろしく破壊的な過去の作品から見ればおとなしくはありますが、やってることはなかなかに先鋭的。
それぞれの作品に「偶然」が強く作用している。その形を取り出すのがこの作品ににおける名探偵・真紅郎の「シンクロ推理」。どこか人工的なものを感じさせる世界観のなかで、その「偶然」がうまく機能していると思いました。いい加減ミステリも数読んできたけど、似たような作例がすぐには思い浮かばない…山口雅也『奇偶』なんてのはあるけど、あれともまた違うしな。
ベストは「過去から来た暗号」。暗号モノって好きじゃないけど、コレは凄いと思った。タダでさえ有名な「踊る人形」式の暗号同定に真っ向勝負を挑んで、ミステリとしても、気のきいた物語としても、高い達成を見せています。
しかし『Jの神話』『匣の中』『塔の断章』『マリオネット症候群』とこの作品並べて、同じ作家の作品とはとても思えんね。作風幅広すぎ。『イニシエーション・ラブ』の文庫化が楽しみです。

作品の評価はB。

林真紅郎と五つの謎林真紅郎と五つの謎
乾 くるみ

光文社 2006-08-10
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2 コメント

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ネタバレ (sin)
2006-09-18 21:35:12
「シンクロ推理」て。勝手に。まるで清…。ウェイトレスが親指隠す話が印象的。そんな奴おるか!と。暗号はいいね。暗号ってだけで面白いさ。
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ファミレスの (urt)
2006-09-18 22:08:19
あの話は一番奇怪だった。なかなかよろしいと思いました。
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