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藤田宜永『奇妙な果実殺人事件』双葉文庫

2006年09月12日 | reading
ネタバレ注意。

ハードボイルド、あるいは恋愛小説を主戦場とする直木賞作家の、唯一の本格作品。この作家の作品は初めて読んだのですが、残念ながらやはり、余技は余技でしかないな、という印象でした。
死体にパパイヤ被せられてたりする謎は魅力的ながら、解決があまりにも粗雑。込み入った物理トリックってやつは個人的に好きじゃなくて、どうしても点は辛くなってしまうのですが。タイトルから連想される「意外な動機」に関しても、早い段階で想像がついてしまうし(『奇妙な果実』については『美味しんぼ』で知ってたしね)、ファイロ・ヴァンスを真似たような心理分析の仕掛けも茶番に近い。
独特の酷くあっさりとした描写(なんか文章の繋ぎが唐突。他の小説もこんな感じなのだろうか)も含めて、違和感と物足りなさがつきまとう小説でした。完成度としてはDクラスですが、サービス精神、ケレン味は評価できるのと、顔を出す「本格論」がアツいので回避。

作品の評価はCマイナス。

奇妙な果実殺人事件奇妙な果実殺人事件
藤田 宜永

双葉社 2006-08
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