urt's nest

ミステリとかロックとかお笑いとかサッカーのこと。

鯨統一郎『月に吠えろ! 萩原朔太郎の事件簿』徳間文庫

2006年09月04日 | reading
ネタバレ一応注意。

萩原朔太郎を探偵役に据えた連作短編集。いつものようなギャグの連打は気持ち控えめで、大正時代のしっとりした感じを出そうという努力の跡は窺えるも、結局『太陽に吠えろ!』のパロディやっちゃったり(解説で言われるまで気付かんかったが)、通常の鯨バカミスに漸近しているのはご愛嬌。
各話の事件から着想を得た、という設定で、実際の詩作が巻末に置かれる構成。このあたりのカラミが作品のポイントだが、事件の方のプロットはいかにも安っぽくて残念な出来だった。竹久夢二、青踏社の面々など同時代人の登場、当時の文壇状況を取り入れるなど、盛り上げる要素は多いが、肝心の骨格がどうにも弱かった。
そんな中、トリックとしてはよくあるものだが、詩とのカラミが綺麗な「怪盗対名探偵」がベスト。この後詩集を読んだが、ここで取り上げられた詩は実際最も気に入った一つだった。鯨さんも刺激されたのでありましょう。

作品の評価はCプラス。

月に吠えろ!―萩原朔太郎の事件簿月に吠えろ!―萩原朔太郎の事件簿
鯨 統一郎

徳間書店 2006-08
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