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大学院であまり役に立ちそうもない勉強をしたり、陶芸、歌舞伎・能、カメラ、ときどき八ヶ岳で畑仕事、60代最後半です。

「剣客商売」藤田まことの死と寺島しのぶのベルリン映画祭銀熊賞受賞

2010-02-22 23:40:19 | 文学・文芸・芸術


<私にとっての剣客商売の主役「藤田まこと」と「寺島しのぶ」>

私は「剣客商売」が好きである。現在のシリーズとスペシャルドラマの主役は藤田まことの秋山小兵衛であるが、重要な役回りを演じているもと佐々木三冬、結婚して秋山三冬となった女剣士の役は寺島しのぶである。寺島しのぶは舞台女優としてデビューした当時から、何かを持っている、という感じがしていたが、特に映画に転じてから男女の「性」に関する演技を高い芸の観点から、ためらいもなく演じる女優という意味で注目されていたが、若くして希有な女優であった。今回、第60回ベルリン映画祭で最優秀女優賞を受賞し、女優としてまた一段高いところへ駆け上って行ったが、紛れもなく演技派女優である。おめでとうと言いたい。

一方、藤田まことは、誠に残念であるがこのたび76才での訃報となった。晩年は家庭の負債の問題で苦労されたが、喜劇役者や歌手から出発して今や大俳優の域に到達し、円熟した演技でこれからが楽しみであった。元朝日放送ディレクター澤田隆治氏が22日夕刊の芸能欄で「もったいないな」と書いていたが、けだしその通りである。「てなもんや三度笠」「必殺シリーズ」「はぐれ刑事純情派」「剣客商売」など代表作は数え切れない。心から冥福を祈りたい。

<剣客商売の主役陣の変遷>
・最初のシリーズ
1973年(昭和48年)から始まったテレビドラマ「剣客商売」の出演者は、当初は山形勲の秋山小兵衛、息子秋山大治郎は加藤剛、老剣客秋山小兵衛の年若い女房おはるは音無美紀子と記憶している。

・二度目のシリーズ
10年後の1983年(昭和58年)には歌舞伎俳優の中村又五郎が小兵衛を演じたが、作者の池波正太郎は小兵衛役に中村又五郎をイメージして書いた、といわれている。確かに作品の中で池波がイメージした小柄ながら強い老剣士の面影と洒脱さがあふれていた。私は、この渋い演技を持ち味とする歌舞伎役者が好きである。

・三度目、現在のシリーズ
さらに15年後の1998年(平成10年)になって藤田まことの秋山小兵衛が登場する。藤田まことの秋山小兵衛は以来第5シリーズまでの44話とスペシャルドラマ6話に出演する。藤田まことは、「池波正太郎の世界2剣客商売<一>」という小冊子の中で、「実は自分で売り込んだのです。・・・この役だけは他の誰にも渡したくありません。」と述べている。

藤田まことの秋山小兵衛シリーズでは、息子秋山大治郎は当初は渡部篤郎、今は山口馬木也が、小兵衛の娘のような女房おはるは、あの国民的ドラマとなった「おしん」の少女役だった小林綾子が、そして男装の女剣士、一刀流井関道場の四天王の一人、田沼意次の妾腹の娘、そして秋山大治郎の女房となった佐々木三冬は当初は大路恵美、今は寺島しのぶが演じている。さらにドラマの大事な味付け役となっている料亭不二楼の女将は梶芽衣子が、さらに三冬の父、田沼意次は平幹二郎と重厚な配置である。

<私にとっての「剣客商売」>
このシリーズが始まったとき、藤田まことも山口馬木也も小林綾子も大路恵美も、全然イメージに合わない、と酷評した人がいた。しかし前作シリーズもイメージは当初から固まっていたわけではなく、時間の経過とともに固まったものである。第一シリーズの小兵衛山形勲と第二シリーズの中村又五郎も全く異なるキャラクターであった。

私にとっては、今の配役が最高の「剣客商売」であると思っている。年輪を重ね精進した藤田まことは、もっとも秋山小兵衛らしい秋山小兵衛になっていったと思っている。山口馬木也も小林綾子もその役柄がすっかり板についているし、寺島しのぶに至っては、小柄で可愛らしい女剣士の大路恵美から、体つきも顔つきも男装の女剣士にぴったりに変身し、それが大治郎と結婚して女っぽくなり、さらに息子小太郎ができて母親らしく見えるのはさすがに大女流へひた走る演技派女優の面目躍如というところである。イメージは回を重ねるごとに俳優と監督やスタッフによって積み重ねられ、作られたのである。

<これからの配役とイメージ>
これから、亡くなった藤田まことの演技で固まった秋山小兵衛の役どころがどうなるのか、はたまた名女優寺島しのぶのイメージが三冬の役どころに今まで通り収まるのかどうか、興味津々でもあり、心配でもある。


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