神楽坂の小粋な街の雰囲気には、第一に、料亭や芸妓さんを思い浮かべる
ことになるが、その面影は懐かしい想い出の彼方に遠ざかり、今はシャレた
レストランや小料理屋さんや甘味処に変わっている。それどころか、どこの街
にも見かけるファーストフード店や喧騒なゲームコーナーや今風のコーヒーショ
ップが幅を利かせている。そういう状況だから、昼時には意外にも若いサラリー
マンやウーマンの姿が多い。ご多聞にもれず神楽坂も大きく変わっているので
ある。今や、若い人たちと、ここに住んでいるフランス人と、他所からきて街を
散策するおばさん達の街なのである。
<戦前・戦後の神楽坂花柳界>
昭和12,3年頃の神楽坂花柳界は戦前の最盛期にあたるが、当時の記録を
見ると芸妓・幇間が600名以上、料亭が150軒を数えたという。
第二次大戦で焼野原になったが、昭和30年代には復興して芸妓が200名
以上、料亭も80軒を数えるまでになり、神楽坂はん子がテレビ・ラジオで
活躍した。
<現在の芸妓さん>
高度成長期は大変賑わったが、その後バブルが崩壊して長い不況のトンネル
に入り神楽坂花柳界は風前の灯となったが、現在、芸妓30名、料亭9軒が
伝統を守ってがんばっている。頑張っているのは芸妓さんたちだけではなく
神楽坂に住む街の人たちと、神楽坂を愛する人たちも頑張っているのだ。
<私と神楽坂>
斯く言う私も18歳の頃から、下町風の、実は山の手の坂の多い神楽坂の、
学生さんたちのための小さな小料理屋で、今で言うところの合コンをして
いたのだ。50年弱たった今も、形にはならない、色々な形で応援してい
る。それ以上の想い出話は別の機会に譲ることとしたい。
神楽坂芸妓をどり<華の会>
平成11年には芸妓の技芸を披露する場として「神楽坂芸妓をどり 華の会」を
開催し、以後毎年、年に1度の恒例行事として継続し今年は4月8日で第8回
目を数えた。一番最初は「毘沙門天善国寺」で行ったが、今回は400名収容
の「牛込箪笥区民ホール」であった。それにしても、箪笥町という町名が残って
いるのが嬉しい。
<神楽坂芸者と写真家「山本陽子」>
最近、話題になるのは写真家、山本陽子である。この映画女優のような
名前の写真家は、もと日本航空のスチュワーデスで、有名な細江英公氏
の弟子だそうで、長い間、神楽坂芸者を撮り続けている。1年以上前に
神楽坂で写真展を見たことがあるが、石畳の路地に洩れる灯火や、芸者
の後姿、その風情を20年以上追い求めているというのだから、素晴らし
くないはずはない。これからも是非、夢のようなすばらしい世界を撮り
続けてもらいたい。
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<神楽坂「まち飛びフェスタ」>
この素敵なパンフレットは昨年の10月に行われた神楽坂の街の文化祭の
案内紙である。これは、広げるとA4の大きさが4枚になる大判で、裏表に
ビッシリ、スケジュールとか、実行演目とか、出演者とかが詳細に紹介さ
れている。
説明によれば、「まち飛びフェスタ」とは、「まちに飛び出した美術館」と
いう意味で、伝統芸能から現代アートまで幅広い分野で行われる、約2週
間にわたる神楽坂の手づくりの文化祭のことだそうだ。
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<「江戸だ!落語だ!神楽坂!」>
下の記事は少し大きく写してあるが、裏面に書かれている、神楽坂
落語まつり「江戸だ!落語だ!神楽坂!」の紹介文である。
<法政大・東京理科大の落研も参加>
中段から下の右側には、専門の落語家に混じって東京理科大学と法政
大学の落語研究会の発表会も載っている。両校の落研はともに長い伝
統があるが、落語家三遊亭白楽師匠は法政大学落研出身である。
<矢来能楽堂>
上の演目紹介の最下段の黒い部分の「真ん中」には、観世九皐会(きゅう
こうかい)「のうのう講座」定例会「融」「三井寺」より
「月の能、月の歌」
とある。定例会とはいえ、安い入場料で見られるのは神楽坂文化祭なら
ではのことである。
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<観世九皐会(きゅうこうかい)観世喜之>
観世九皐会(きゅうこうかい)とは観世喜之が主宰する能・狂言の
グループで、矢来町に能楽堂をもち、主に東京・大阪・名古屋で
活躍している。観世流の分家である観世銕之丞家のさらに分家で、
矢来の観世家といわれている。下のパンフレットは8月の定例会の案
内で、喜之のご子息である喜正が若手の勉強会を率いている。下の
建物は矢来町にある「矢来能楽堂」である。
「8月定例会」
「矢来能楽堂」
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<2006年の「神楽坂まち飛びフェスタ」>
2006年10月21日(土)から11月5日(日)までの2週間と決まって
いる。尾崎紅葉や夏目漱石や坪内逍遥、坂と狭い路地裏文化、伝統
と現代文化の重なり合い、花柳界と現代的なレストラン、住む人の息
遣いが聞こえる街、ことしも楽しいフェスタであることを祈って長くなった
今日の語りを止めることとしたい。
次回は、牛込濠と坂道と狭い路地裏の風情を眺めてみることにしたい。
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今後もぜひ、色々なお話をお聞かせください。
今後とも宜しくお願い致します。