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大学院であまり役に立ちそうもない勉強をしたり、陶芸、歌舞伎・能、カメラ、ときどき八ヶ岳で畑仕事、60代最後半です。

書の至宝<黄庭堅筆の「王史二氏墓誌銘稿巻」>

2006-02-16 16:13:03 | 文学・文芸・芸術


「王史二氏墓誌銘稿巻」(おうしにしぼしめいこうかん) 

黄庭堅(こうていけん)が、王潨(おうしゅう)氏と史扶(しふ)氏の墓誌銘
を頼まれて起草した草稿二紙を合装した書巻である。墓誌銘草稿の中
に、王潨氏は1086年(元祐元年)に亡くなり、史扶(しふ)氏は1096年
(紹聖三年)に没し3年後の1099年(元符二年)に葬られたと書いてある
から、草稿二紙の作成年代は10年~13年程度の差があることになる。

黄庭堅の年代(1045-1105)から推測すると、王潨(おうしゅう)氏の墓
誌銘は黄庭堅が41歳前後、史扶(しふ)氏の方は54歳前後の作という
ことになる。

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<作品の年代>

「王潨(おうしゅう)」氏の墓誌銘稿巻・・・・・黄庭堅四十代前半の作
「史扶(しふ)」氏の墓誌銘稿巻・・・・・・・・・黄庭堅五十代中頃の作   
                           
二つの墓誌銘稿巻とも、文中に沢山の加筆訂正があり、草稿段階の普
段の筆致や雰囲気が伝わってきて面白い。また、十数年の歳月の違い
による書体、書風の変化が窺えてる。後年の方が、横棒が右上がりに
なっており、しかも、全体の書風が変わっている。

晩年は草書に傾注し、超俗的で率意の書風の傑作を残しているといわ
れるが、そういう目で見てみるとなお興味深い。一番下に、草書の代表
作を載せておいた。

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(二紙とも、一部のみ掲載)


<「王潨(おうしゅう)」氏(字を永裕)>の墓誌銘稿巻  
                                     
  
      
  

                                           
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 <「史扶(しふ)」氏(字翊正)>の墓誌銘稿巻  
 
                   



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黄庭堅自身については、前回の文章を引用する。

黄庭堅(こうていけん、1045-1105)は、北宋時代の四大家(蔡襄、蘇軾、
黄庭堅、米芾)の一人であるが、四大家の一人である蘇軾のもとで詩文を
学び、書画にも通じていた。書は、唐時代の有名な顔真卿(がんしんけい)
や懐素(かいそ)などの革新的な書を学んだ。下の行書を見ると分かるが、
彼の書は長い横画と左右に伸ばした払いが独特で、力強さと厳しさが感じ
られる。晩年は禅の道に入り草書に傾注したらしいが、変化の妙を尽くし
た個性的な書風の作品を残している。

宋時代の書は「意」をとる、といわれているが、極めて個性的な書風である。
黄庭堅(こうていけん)晩年の「超脱の書境」と評する人もいるが、禅の求道
者のような雰囲気があり、円熟した書の境地が感じられる。

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<詩人・黄庭堅(こうていけん)>

黄庭堅は詩人として高名であるが、詩文は唐宋八大家の一人である蘇軾(そ
しょく)に師事した。蘇軾門下四学士の一人に数えられているが、門下第一位
であり、むしろ年齢も近いところから友人的な関係にあったと思われる。

しかしこの二人は、政治的には恵まれず地方左遷が多かった。蘇軾は最後に
戻ることができたが、黄庭堅は配所で没した。黄庭堅は後に「江西詩派」の開
祖と仰がれているが、「蘇黄」の詩はわが国でも禅宗の五山文学において尊
重された。

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晩年の作と云われる「行書伏波神祠詩巻」と上の「墓誌銘稿巻」を比べる


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<参考>
黄庭堅の草書「諸上座巻」




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