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大学院であまり役に立ちそうもない勉強をしたり、陶芸、歌舞伎・能、カメラ、ときどき八ヶ岳で畑仕事、60代最後半です。

永青文庫秋季展「黄庭堅・伏波神祠詩巻~中国大書家の気に触れる~」

2009-11-24 18:00:28 | 文学・文芸・芸術
最近まで永青文庫という博物館の存在をほとんど意識の中にはなかったが、
ふとしたことから

永青文庫秋季展「黄庭堅・伏波神祠詩巻~中国大書家の気に触れる~」

という案内を見た。

黄庭堅の代表的な行書である「伏波神祠詩巻」については平成18年2月に
東京国立博物館で開催されていた「書の至宝ー日本と中国展」を鑑賞した折、
同年2月15日のこのブログに

 「書の至宝<黄庭堅筆の「行書伏波神祠詩巻」>

と言うタイトルで感想を書いた。書の実物に感じ入っていたので所有者を
はっきり記憶していなかったが、その所有者が永青文庫であった。
そこで再び実物を鑑賞するため、平成21年11月20日(金)、電車とバスを
乗り継いで目白台の永青文庫を訪れた。

=永青文庫の案内表示=



永青文庫は目白通りに面する椿山荘前でバスを下車し、目白駅の方へ2~30
メートル歩き、そこの角を南の方角へ向かって静閑な住宅街を2~3分行くと
右側のコンクリート塀に町内の掲示板のようなガラスで覆われたこじんまり
とした案内表示ボックスがある。塀の入り口から奥の方を覗くとこんもりと
した樹木に覆われた古いコンクリートの事務所のような建物が見える。他に
人影が見えなかったので、ここかな?と思いながら入っていった。


<正面入り口>




<永青文庫と細川家>

この住所は文京区目白台1-1-1、この一帯は肥後熊本細川家の江戸下屋敷
があったところで、今でも僅かではあるが武蔵野の面影を残している。永青文庫
とは、初代細川藤孝(幽斎)、二代細川忠興、その室ガラシャ夫人を始めとする
現在までの細川家に伝来する歴史資料や美術品等の文化財を管理保管して
いる文庫(登録博物館)とのことである。


<一見、事務所のような建物>





昔の役場のような小窓の奥から顔を出した受付の女性に聞くまでもなく、写真の
栞りを開いたところに細川家の家系図があった。当代の細川家当主は総理大臣を
つとめた彼の細川護熙氏である。今まで細川家に美術館があることは知っていたが、
永青は細川家に謂われのある文字を一字宛つとって名付けたということなので
永青文庫と細川家が結びつかなかった。

<栞り>




<黄庭堅筆の「行書伏波神祠詩巻>(重要文化財)

黄庭堅の晩年期における行書の代表作といわれるが、この書は達人の整った
書、というのではなく黄庭堅の書であると言われなければ赤い筆であちこちに
手を入れたくなるほど不揃いであるが、筆致はあくまでも伸びやかで大胆、右や
左に大きく跳ねるところや、文字が大きかったり小さかったり、行が左に寄れ
たり少し左右に飛び出したりで、他の人には到底真似のできない、何とも不思
議な心打つ作品である。





=高村光太郎=

高村光太郎が、「一見するなり心をうたれた、これほど不思議な書はない」と
言ったそうだが、次の言葉が実に妙を得た表現である。

「強いけれども、あくどくない、ぼくとつだが品位はたかい。思ふままだが
乱暴ではない。うまさを通り越した境に突入した書で、実に立派だ。」


=沢山の花押~900年の漂流=

この書には巻頭と巻末に沢山の花押が押してあるが、これらは過去に
この書を所有した人たちが押したもので、花押の専門家の調査によれば
中国の歴史に名を残した様々な著名人や宮廷人の名前が判明している。
1101年の作と言われているので、これまでの900年間、数奇な運命を
たどって細川家に到着したものと思われる。

=重要文化財=

冷泉家が所有する藤原定家や俊成の書や和歌も同じであるが、数百年を
経てその時代の本物に出会う感動は言いしれぬものがある。900年前の
実物というだけで重要文化財の意味がある。そう考えると、保管管理や
補修をしている方々の苦労には頭が下がる。

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黄庭堅筆の「伏波神祠詩巻」については、別途、平成18年2月15日記載の
下記<URL> をクリックして下さい。下記の記事の前後にも<書の至宝>
関連の記事がいくつかあります。

http://blog.goo.ne.jp/umikiyo/e/bdd44e3911f53f0be3a8303742da27fe
「書の至宝<黄庭堅筆の「行書伏波神祠詩巻」>

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永青文庫にはこの他にも見応えのある展示物が多数あった。
永青文庫は周辺の紹介を含めてまだ続くが、タイトルの

「黄庭堅・伏波神祠詩巻~中国大書家の気に触れる~」

は一旦ここで終わりとする。



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