あっという間に読み終えてしまった。
村上龍の「五分後の世界」。
第二次世界大戦において沖縄上陸・広島/長崎への原爆投下後も敗戦を受け入れず国連軍と戦い続ける日本という設定に、現代から迷い込んだ主人公を通して、現代日本を批判していく作品。
「愛と幻想のファシズム」や「半島を出よ」など村上龍作品と同様の世界観があります。
ここに出てくる「純血な」日本人はアンダーグラウンドと呼ばれる地下都市にて生活を行い、軍人から中学生に至るまで、しっかりと肉体的なトレーニングしており、自分で考え、情報を鵜呑みにしないよう教育を受けており、現代のような外交でアメリカや中国、ロシアなどの周辺大国と同等に交渉できない政治家は存在しない。
ただし、「純血」ではない国民は占領地化された表の世界で、半ば占領した各国の人の廃棄場扱いされており、そこに生きている「日本人」は秩序のない街の中で「恥」を受け入れ生きていく。
上述の他作品同様、現代日本の脆弱さに警鐘をもたらす作品です。
主人公が新たな世界で考え方に変化が出始めたのと同様に、読者にもその世界観を必死に訴えかけてるように感じられます。
上っ面だけ流すと割と「なんだ」とも思える作品ですが、根底には結構複雑な思考を求められているように思えます。
村上龍作品は基本的に好き(というかつい読んでしまう)なのですが、読後ぐったりしてしまいます。