tyokutaka

タイトルは、私の名前の音読みで、小さい頃、ある方が見事に間違って発音したところからいただきました。

タイムカプセルの開き方 -藤田雅矢『蚤のサーカス』新潮社 1998-

2005年05月02日 23時25分59秒 | Weblog
私は本を読むのが好きだが、読むのが遅い。これもトレーニングによって早くなるようなことを聞くが、それほど関心はない。このような調子だから、雑誌以外の本になるとたまっていく一方である。もっとも、読まないうちから古本屋に持っていくような事はしていないが。

大学院に在籍していた頃、個人個人に研究書籍費として1万から2万円が認められていた。もちろん、あらかじめお金が渡されるわけではなく、本の領収書と報告書が必要だった。

人によっては、専門の事典を購入したりしていたが、全集なんか買うと、その一部を補うくらいにしかならず、焼け石に水だ。使える額面が限られているから、私の場合、古本屋で安く手に入れて、冊数を稼いだ。

しかし、あるときどうしても1000円内外の領収書が用意できず、かねて取っておいた領収書を使った。領収書には『蚤のサーカス』代金としてと書いてあったと思う。

この本は、文芸書で大阪万博が中止になったもう一つの日本で、蚤のサーカスにまつわる少年の活躍を描いた内容である。日本版のスタンド・バイ・ミーみたいな話だ。もちろん、学術研究書などとは縁もゆかりもない。

これを書いて報告書を出したら、出金審査に通った。審査なんてあったのかどうかもわからないが。

この本を買った当時、とてもこの種の文芸書を読める精神状態になかった。そこから回復するのにも、かなりの時間が必要だった。相当長いことしまってあったが、ここ数日で読むことが出来た。いま、Amazonなどでこの本を調べてみると、版元品切れで入手困難らしい。話に温かみがあって、面白いのに。

最近、こんな風にタイムカプセルを開いている。