今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

・阿寺山

2011年06月16日 | 山登りの記録 2011

平成23612日(日)

 阿寺山1,509

 

  今年の梅雨は陰性のようだ。梅雨入りして半月ばかり経つが、一日晴れた日はあったろうか?降らないまでも、曇ってハッキリしない。今週末も土曜は雨、日曜は曇りの予報。降らなければイイや程度じゃなくては、この時期山に行けない。山で降られるのも、道がハッキリしている山なら特に問題はないが…。

 

  今年は未だ会津や越後方面に行っていない。太平洋岸に前線が停滞している時は、あるいは日本海側は晴れるかもしれない。今回新潟は日曜に晴れマーク。どこまで当てになるかは分からないが、さてどこに登ろうか?数年来登ろうと思っている未登の山はいくつもある。ヒメサユリ咲くあの山なんかが、第一候補だが、人が多いのは願い下げ。カシミールで物色していたら、目に付いたのは越後三山の八海山の南にある阿寺山だった。地図で見ると、頂上部には池塘が点在するようだ。それも魅力だが、この山は稀に八海山の下山ルートに採られる程度らしく、この山目当てに登る人は積雪期以外は少ないようだ。つまり、何よりも人が来なそうな所に最も惹かれるのだった。

 

  今年は積雪が多かったので、あるいはまだ結構残雪が多いかもしれない。とはいえ、6月も中旬だから稜線の夏道は出ているだろうし、頂上部の池塘ももう出ているんじゃないかな?ネットで調べてみると、災害(どの災害だろうか?)で、この山に下から登る唯一の登山道である広堀登山道が崩壊して通行不能だとか?あるいは、もう復旧しているという最新情報らしいものもある。それらを総合すると、2009年には登山口から沢を辿る崩壊部分が復旧し、夏道は問題無くなったということのようだ。一応この情報から、阿寺山を経由し、越後三山の稜線上にあるジャンクションピークの五龍岳まで往復することにして、土曜の夜に家を出た。

 

  三国峠を越えて新潟県へ、群馬県側は雨こそ上がったもののどんよりとした空模様だったが、トンネルを越え湯沢の町を過ぎると、空には月が見える。南魚沼市(旧六日町)から八海山登山口(八海山ロープウェイ乗り場)である山口集落の手前で、直進するロープウェイ駅への道を分け、右に養魚場の看板を見て広堀川に沿った林道をしばらく進む。直ぐに未舗装になり、更に少し進むとロープが張ってあり、その先には進めない。そこが終点だった。ここで、川に下っていく道との境目に越後三山方面で良く見る木製標柱が立ち、そこには薄れて読めなくなりそうな『広堀登山口』の文字、その下左に『五龍岳6k』右に『山口3.8k』の文字が何とか読めた。ここが阿寺山の登山口に間違いない。

 

ロープ手前の林道退避帯に車を停める。ここには5台くらい停められそうだ。背後の森の藪からは、林道脇を流れる水音とモリアオガエルの特徴ある鳴き声が大きい。青白い月明かりに照らされた山中の林道は、カエルの不気味な声の効果音が加わり、何ともおどろおどろしい光景だった。アラームを5時半としてシュラフに潜った。

 

  5時前に一度目が覚めた。隣に車が一台やってきて停まったのが分かったが、まだ眠いのでアラームが鳴るまで眠った。5時半に再度アラームで目覚める。空に青いところも見えるが、全体としては曇り空。やはり、すっきりとした晴れは期待できないようだ。パンを食べ、残雪に備えてスパッツを付けて556分に出発する。隣の車に人は居なく、覗いた座席に幾つもある袋類を見る限りでは、登山者ではなくて山菜採りの様だった。

 

  林道から標識に従って広堀川に下る。川沿いに道とも言えないコースが赤ペンで指示されている。へつったり、石を飛んで渡渉したり、特に赤ペンの指示に従わなくても要するに歩き易そうなトコロを進めばよい。タニウツギのピンクの花があちこちに目に付く。この花は日本海側ではごく普通種だが、この時期に新潟や会津方面の山に行く時だけ見られるので、いつも新鮮で美しいなと感心する。

 

雪解けで水量の多い広堀川のごうごういう水音を聞きながら、藪っぽい踏み跡(道とは呼べない)を溯る。川の中に造られたコンクリート護岸の先で、628分に広堀川から離れて右手に沢を上っていく道に入る。広堀川上流にずんぐりと高く丸い山が雪斑のシルエットを見せている。八海山の最高峰入道岳(地元では丸岳と呼ぶ)だ。登山道入口に真新しいパソコン製パウチの案内標識が付けられていた。そこには『阿寺山登山道 竜神碑・ジャバミ清水方面→』と書かれてあった。ジャバミとは蛇食のこと。夏草に覆われ気味の道は湿度も高く、蒸し暑い。少し登ると、その竜神碑があった。花崗岩の石碑に『大芳尼竜神』と彫られている。大変芳しい女の竜神ということなのか?そんな竜神なら見てみたい気もする…真鍮製の鐘がその前にぶら下がっている。これは八海山の登山道にもあったが、叩くときれいに澄んだ音が山峡に響いた。

 

竜神碑の脇に水が湧き出している。ここから藪っぽい道を少し登ると、その先は沢沿いに登っていく。沢は水量も少なく、飛び石伝いに登って行ける。一応赤ペンのマーキングが右に左にと付けられているが、むしろ歩き易そうなところを適当に歩いた方が良さそう。そのまま、この石の多い急な沢をどんどん登る。振り返ると林道がもう小さくなり、遥か先に魚沼丘陵と六日町の市街が俯瞰された。蒸し暑い感じだが、空はますます曇っていく様で、魚沼丘陵にも低い雲の帯がまとわりついていた。

 

山のあちこちから、エゾハルゼミの大合唱が始まっている。まだ、鳴き方が上手ではない感じで、「ミョーキン」の部分がはっきりしない。その声にカッコーやホトトギスの声が重なり、初夏の山は賑やかだ。足元では相変わらずモリアオガエル  

のくぐもった鳴き声もしている。みんな、種族保存の自己主張をこの時とばかりやっているという訳だ。幸い、今回は雪解け時期の越後の山ということで、虫対策の防虫ネットを持参していたが、今のところ意外にも虫は少ない。刺す虫も、目に飛び込んでくる虫もいないので、これで蒸し暑くなければ良いのだが…。

 

 石の多い沢から、右岸に導かれ尾根に取り付く。今までの雑木の樹相から、細くすらりとしたブナ林の登りとなる。新緑と灰白色のブナの木肌のコントラストは美しく、このブナ林はどこぞの『美人林』よりもはるかに美人だった。しかし、美しく整ったブナ林はホンのわずかで、間もなく高度計で1,000mとなる辺りから、コースは藪気味の株立ちブナの窪地を行くようになると、残雪が出てきた。夏道はこの辺りから途切れる様になり、ここから藪と残雪に夏道を探すRFの登りとなる。

 

多雪に押しつぶされて寝ている株立ちブナに倒木が加わり、何度も何度も道を外す。マーキングは少なく、あってもそれは残雪期に付けられたものらしく、木の高い枝なんかに付けられているので参考にもならない。途切れ途切れだった残雪も、大きな雪田を何度も横切る様な登りになった。ますますコースが分からない。2万五千図の破線のコースと、実際のこの山の夏道は違っているようだ。2万五千図では沢の窪状から北側の尾根を詰めていくようにルートが取られているが、実際には南に大きく迂回して高度を上げている。そのため、頂上手前で数段の緩傾斜地を横断するようになっている。今はそれが雪田となってルートを分断しているからその先のルートを探すのに右往左往して時間ロス。夏道以外の所は、横に這った株立ちブナと、びっしり茂った低潅木に笹が混じり、とても潜り込んで進める状態ではない。

 

ようやく高度計で1,300mに達した。大きく広い雪田に出る。ここからは眺めも良く、北には八海山が間近に望まれ、南に離れて巻機山が雲海から頭を出していた。ここまで、雪に足跡一つなく、最近この山に登っているらしい人の痕跡は見当たらなかった。元々それ程人の多い山ではないのだろうが、この時期は尚更人も登らないのだろうと思われた。

 

その後も藪と倒木の夏道を見つけるのもつかの間、また残雪にルートを失し、雪解けの水流沿いに藪の中を登り、やがて広々した傾斜雪田に出た。景色はますます素晴らしいが…でも山の下から湧き出すガスは少しずつ這い上って来て山を隠し始めている。右手に見える樹林に覆われた小山が山頂だろうか?雪が消えた株立ちブナと潅木の島状のブッシュを大きく回りこんで東側に登り上げた。そこは阿寺山の平坦な池塘群があるハズの山頂部だった。向かいに中ノ岳が大きく目に飛び込んできた。

 

分厚い(3m以上ある)残雪に、頂上部一帯はまだ覆われていた。小山が南と北に二つあり、南の小山が三角点があるピークだ。地図には三角点ピークに破線の記載が無いが、大きな雪庇の跡であろう堰堤状の残雪をそこまで進むと、途中雪が消えている藪の一角に『阿寺山』の木製標柱が立つ夏道を右に見て、三角点ピークへは藪が切り開かれ簡単に登れた(これを藪漕ぎしなくて済んだ…)1034分に阿寺山山頂着。藪の切れ間から中ノ岳が大きく望まれる。しかし、谷の下の方からは次々にガスが立ち上ってきて、雲海上の山稜を包もうとしている。天気は確実に下りになっている。藪が刈られた中央に二等三角点標石があり、倒れんばかりに大きく傾いていた。これも雪の力に因るものだろう。直ぐに三角点ピークを降りて残雪の堰堤を伝い、阿寺山の標柱がある、そこだけ雪が融けて露出した夏道で荷を下ろして休憩とした。

 

お腹が空いていたので、おかかおむすびを食べた。汗を沢山かいて少し脱水気味であるのか、ぽろぽろとしたご飯は喉を通らない。ジャバミ清水で汲んだ冷たい水で流し込むようにした。不思議と乾き物なのに、おかき(ワサビおかきが鼻につーん)やカリントウは普通に食べられた。少し腹も収まると、疲れた身体がだるくなった。周囲にはショウジョウバカマが幾つも咲いている。ツバメオモトのかわいらしい花も足元にあった。少し痛いが、夏道脇の丈の低い笹の中に身体を横たえた。ああ気持ちが良い…。陽射しこそないが、曇った天を仰いでいると、暖かい。少しばかり目をつぶってうとうとした。

 

目が覚めると11時半になっていた。20分くらい眠ったのだろうか?だるさが無くなった。荷をまとめ、広々とした頂上雪原を八海山寄りに行ってみる。一の池は分厚い残雪が擂り鉢状に融けて、ほんの少し姿を現していたが水は黒く濁っている。北にある小山の所まで行くと、少し八海山が近づく。この辺りに三の池があるはずだが、分厚い残雪がまだ窪地を埋めていた。八海山の入道岳(丸岳)が良く見える。八峰の岩峰も、大日岳の頂上にある石碑が何となくそれと分かる。登り着いた時にはすっきりと見えていた周囲の山も、少しずつまとわりつき這い登ってくるガスに隠れるようになってきた。500m程離れている三角点ピークもおぼろに霞むようになった。1146分に阿寺山山頂雪原を後に下る。濃いガスに巻かれたら、この残雪にルートも失いそうだ。

 

下りも大きな雪田を横切って藪、また雪田を横切って藪と、幾つもガスに巻かれ気味の雪田を過ぎ、ハッキリとした沢沿いのルートに出るまでは気が抜けなかった。美人ブナの森を出たら、岩ゴロの急な沢を下る。また蒸し暑さがぶり返してきて、下りなのに汗びっしょり。タムシバやオオカメノキの白い花が目に付く。1314分に蛇食清水(ジャバミ清水)に降りた。ここでまた少し休んで、足元の良くない沢をしばらく降りる。タニウツギがあでやかで美しいが、夏草で藪っぽい道を更に降りて、1348分に竜神碑に出た。帰りは鐘を二つ鳴らした。澄んだ音が再び山峡に響く。すっかり曇って山の上部は雲の中。行きに賑やかだったエゾハルゼミの声も音を潜めていた。しかし、沢の水溜りには、くぐもったモリアオガエルの声が相変わらず陰気に聞こえていた。

 

広堀川に下りて、川沿いもまたかつての道は崩壊して歩きにくい。広堀川の上流に朝はきれいに見えていた入道岳も、かろうじて一部が薄っすら見えただけ。1426分に車に戻った。隣の車も既に無く、山は静けさに満ちていた。結局一日誰にも会わなかった。

 

帰りは一つ山向こうの三国川沿いにある五十沢温泉の旧館をやっと見つけて、その源泉掛け流しの熱い湯に浸る。丁度誰も居なくなり、余り広くは無いが、しばし独り占めの温泉で大満足。あーあこんなのが最高だな…。五十沢温泉は新館(というか、今はここが宿泊施設として営業)の方に本谷山に登った際に入浴していたが、あっちのごく普通に比べれば、ここは前世紀の雰囲気で良い(かなりくたびれた建物)。地元のお年寄りくらいしか入浴しないようです。一応宿泊もできるのかな?まあ、雰囲気的には同じ六日町にある山岳荘には負けるけど…あそこは完全にタイムスリップの凄さで、また行きたいと思っている。

 

阿寺山しか登れなかったけれど、ぼく的にはこんな山登りがとっても楽しいのでした。

 

※今回虫除けのネットは使わなかったのですが、車に乗ったら首筋に違和感が…で、マダニを一匹潰しました。ダニにたかられたのは久々です。うーん、暑くて虫の多い新潟の山は、やっぱり秋が良いのかも。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
藪まがいと残雪の山行ですね (ノラ)
2011-06-16 21:56:11
あさぎまだらさん こんばんは。このルートはとても一般ルートといえるようなものではないですね。それにしても,まだ虫があまり発生していなくて良かったですね。
御神楽山あたりではブヨが大発生だそうです。
エゾハルゼミは私も天狗山で今年初めて聞きました。株立ちの雪で押しつぶされたブナと笹の中なんて歩きたくないです。ほんとにご苦労様でした。そんな所だからこそ人に逢わないのでしょうね。頂上付近の雪塀の残ったものでも迫力ある景色です。
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夏道がどうなんだか? (あさぎまだら)
2011-06-16 22:47:20
ノラさんこんばんは。
そうですね。阿寺山の登山道は八海山下りのバリエーション、あるいは越後三山縦走時のエスケープルートという位置付けが最も妥当と思われます。
単体で登る対象ではないのでしょう。積雪期あるいは完全な(4月ごろ)残雪期に日帰りピストンしている記録は見ますが。そんな訳で、災害で崩壊した登山道が完全復旧しない限りは一般登山コースじゃないのでしょう。
雪が完全に消えた時の夏道の状態は分かりません。しかし、少なくとも倒木や圧雪に捻じ曲げられた樹木が塞いでいる箇所も多く、やはり普通の登山道とは考えない方が良いようです。頂上部の池塘群は魅力ですけどね…。虫の居ない秋が良いのかなあ、と思います。
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