今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

・鬼ガ面山、浅草岳

2013年10月04日 | 山登りの記録 2013
平成25年9月29日(日)
南岳1,354m、鬼ガ面山1,465.1m、北岳1,472m、前岳1,568m、浅草岳1,585.5m

 土曜は1日イベントのため出勤だったが、家に帰らずそのまま山に向かう。先週飯森山と川桁山に登ったばかりだが、この秋のうちに登っておきたい山が幾つかあって今回もまた会津方面だ。新潟・福島県境の浅草岳は、随分昔に只見側の八十里越え入口の入叶津から登ったが、その時に眺めた鬼ガ面山の岩壁は見事だったことを覚えている。その鬼ガ面山の爆裂火口壁の縁を辿ってみたいと、地図を見て思っていた。この懸崖はいわゆる非対称山稜の見本の様なので、勝手に北アルプスや谷川岳などと同じ豪雪による侵食、いわゆる雪食の周氷河地形なのかと思い込んでいたが、これは現在の浅草岳と鬼ガ面山一帯からなる大きな火山の火口の跡、つまり爆裂火口壁なのだということを最近知って、へーっと納得した次第だ。有名な八ヶ岳の硫黄岳や浅間山隣の黒斑山なんかと同じだったのだ。県境の六十里越から鬼ガ面山を経由して浅草岳を往復するコースは、距離が長くアップダウンが多いので人は少ない様だ。岩壁の縁を歩くので、景色は当然良いし、変化もあって面白そう。未登の鬼ガ面にはこんな興味からぜひ登っておきたいと思い、この秋に登る予定の一つに上げて置いたのだった。

 道路検索では新潟回りの方が会津経由より距離も30km短く、到着時間は早いという結果。半信半疑ながらそれに従って、今回、行きは新潟回りとしたのだが、結局買い物や食事をしたりして出発は夜7時半過ぎになり、R17は新潟県内の街中を走るので思うようには走れず、登山口になる六十里トンネル新潟側入口に着いたのは0時を回ってしまった。とはいえ、帰りはいつもの会津・日光経由ですいすい順調に走れたものの、時間的には大差なかった。途中の信号が少なくて、ほとんど町を抜けない道ながら、30kmの距離の違いはやはり大きかったということだが、ほぼ走りっぱなしの会津経由の方が距離が長くても燃費的には良かった様だ。

 六十里トンネル新潟側入口手前右側に、公衆電話があるカマボコ型のコンクリート建物と広い駐車場があり、そこに軽のワンボックスが一台停まっていた。0時を回っていたので、広い駐車場の奥に車を停め、直ぐにシュラフに潜った。仕事を終えたまま長距離を運転してきて疲れたのか、程なく眠りに落ちた。

 翌朝5時にアラームで目覚める。まだ薄暗いのでぐずぐずしていたが、5時半に起きて支度をし、あんマーガリンパンを食べる。快晴の空が広がり、少し寒く感じる。6時5分に出発する。先に停まっていた軽自動車の主も登るようで、支度をして今にも出発の様子だった。駐車場から新潟側に少し戻ると、『鬼ガ面山→』の標識があり、そこに登山カード入れのポストがあった。記入して投函し登山道に入る。県境稜線には雲がのしかかり、それが福島県側から滝雲になってこちら側に落ちている。ジグザグに登る道は大変良く整備されているが、これは送電鉄塔見回りの巡視路と、鬼ガ面山登山道が一部重複しているため電力会社が整備している様だ。水場を横切り、ジグザグのきつい登りをしばらくして後ろを振り返ると、南に毛猛山等の毛猛山塊の一群がせり上がってきた。雪に彫琢された鋭角の山容は見事で、登高意欲も湧くが、残念ながらこれらの山は薮に埋もれて道は無い、残雪期に登るしか無い山々だった。

 県境稜線に登り上げ、只見側を覗き込むと直ぐ先に草地の広場があり、大きな反射板鉄塔が2基建っていた。ここからしばらくは緩い稜線登りになる。送電線巡視路が二分し、浅草岳への道は上を指す。笹は良く刈られて幅広の道がこのまま南岳まで登っていた。南岳の急な登りになると田子倉湖を俯瞰し、会津方面は大展望になる。新潟側も毛猛山塊の向こうに未丈ヶ岳や越後三山が見え、会津側は遠くに燧ケ岳、会津駒、丸山岳等が雲海の上に頭を出していた。南岳に登り上げると、目の前に大きくどっしりとした浅草岳が初めて姿を現した。とてもそれは標高1500m程度の山には見えない。浅草岳からギザギザと波打つ火口壁の岩壁は、ドレープドレスの様な幾重もの襞をつけて、突き立ったローソクの様な岩峰を手前に突き立たせ、この南岳まで切り立って続いている。8時17分に南岳山頂に着く。後続の人のベルの音が直ぐ下でチンチン聞こえてくる。南岳の山頂は、人が5人もいれば一杯になるような狭い場所で、主三角点標石が斜めに傾き、南岳と書かれた青い小さな手作り山名板が足元にあった。後で鬼ガ面山本峰から見たら、ここは突きたったツクシの頭の様な所だった。

 南岳はそのまま通過し、ここからは上り下りが続く。右手は切れ落ちて何百メートルも下が丸見えの部分もあり、足を滑らせば真っ逆さまという状況だ。概ね岩壁沿いの密薮に切り開かれた道を歩くだけで特に危険も無いが、時々右手1m程先には全く何も無い縁を歩く部分もある。そこには雪で押しつぶされ道の上に枝を横に伸ばした木があったりする。そんな木の枝にうっかり乗って足を滑らせば、そのまま下に落っこちてしまうのは間違いない。落ちたら、まず助からないだろう。

 何度か岩壁の襞を上り下りして、8時49分に鬼ガ面山の山頂に着いた。鬼ガ面山山頂は途中の登山道に比べると、西側に木が高く生えて余り眺めは良くない。黄色い山頂標柱が建ち、三等三角点標石がある。ここも余り休むような所ではないので、そのまま先に進む。行く手にこんもりと丸い北岳が近づく。いよいよ浅草岳も大きく迫ってくる。襞のような岩壁の縁を回りこんで上り下りし、左に分かれた道を辿って9時8分に北岳に着いた。ここは素晴らしく眺めが良い。縦走路から分岐して外れているからか、刈り払いは山頂までしてあったが、余り人もやってこないようだ。波打つような鬼ガ面山の稜線が良く分かる。ここに来て始めて北西に守門岳が姿を現した。会津や越後の山々は波を打つように逆光に浮かび上がっている。遠くの山々はどこだか?ちょっと確認できない。北岳で荷を降ろして初めて休む。写真を撮ったり、小腹が空いたのでコロッケパンを食べた。チンチンベルの音が下を通過していくのが聞こえる。後続の人はここに寄らずにそのまま縦走路を登っていくようだ。

 9時20分に北岳を下り、浅草岳に向かって行く。北岳分岐から一旦急な下りをしばらく降りるのだが、ここで足を滑らして転んだ。けがをする様な事もなかったが、この時腕時計が外れて落ちたのに気がつかなかった。しばらく登って北岳が二コブくらい向こうに見えるくらいになり、時間を確認しようとして無いことに気がついた。帰りに周辺を探したが結局時計は見つからなかった。5年間山で一緒だっただけに残念な思いだ(ちなみにカシオのプロトレック、チタンベルト仕様です)。

 北岳からはいよいよ浅草岳に向けて直接の登りになる。今日は夏のように日差しが強く暑い。急な登りで汗をかき、前岳に繋がる薮のトンネルの様な道を抜ける。真下に木道が敷かれた草原と、その向こうには守門岳や川内山塊の大きな眺めが広がる。前岳を下りきって木道に降り、ここで新潟側からの五味沢、ネズモチ平の2つのコースと合流する。浅草岳は四方から登山道が登っているが、新潟側のこの2つのコースは2時間半から3時間くらいで登れる楽なコースだ。先年の大雨災害で利用できなくなっていた一番楽なネズモチ平登山口からのルートが今年復旧されたので、少なくなっていた登山者も戻ってきた様だ。実際山頂付近に居たほとんどの人はネズモチから登ってきた人たちだった。

 青紫のリンドウが目に付く草原を下って木道に降りると、直ぐ向こうに紅葉で彩りを増した一段高い浅草岳山頂が見えた。傾斜湿原の縁を木道で歩く。川内山塊の山並が直ぐ目の前で、6月に登ったばかりの粟ヶ岳が良く見えた。この方角からだと、双耳峰で分かり易いハズの矢筈岳がどれなんだか良く分からない。北には遠く飯豊連峰、手前に御神楽岳や狢ヶ森山辺りが見える。西には大きく根を張った守門岳が間近で見事な山容だ。ぽくぽくと木道を歩いて行くと、守門の青雲岳にあった様な木製のお休み場が2ヶ所あった。最後の急な登りで石祠と一等三角点がある浅草岳山頂に11時4分に着いた。

 25年振りの浅草岳山頂。前に来た時は夏の暑い時期だったからか、山頂には誰も居なくて独り占めだった。一等三角点や石祠がある山頂には六十里登山口から後続して先行していった人が1人だけ休んでいた。眼下には田子倉湖が十字型に光り、会津や越後の山々、鬼ガ面山大岩壁を俯瞰する雄大な眺めが広がる。六十里登山口から鬼ガ面山を経由して登ってきたので、ずっと見てきたこの眺めにはもう感動は無いが、新潟方面からや入叶津から登ってくると、これはクライマックスの眺めだろう。

 山頂周辺には20人以上の人がいるが、みんな山頂ではなく周囲の草原のあちこちで憩っている。一等三角点やら山頂の記念写真を撮って、人が居ないからここの隅で休もうかと思ったが、直ぐにみんなが下に降りて休んでいる理由が分かった。山頂には大きな羽蟻が大群で飛び回り、それがチクチク刺しに来るのだ。いやー、これには退散。山頂を降りて、前岳方面に少し登った行き止まりの木道終点に逃げた。山頂以外には羽蟻はやって来なかった。今日のお楽しみ、大きなグレープフルーツをスマイルカットして食べる。これは美味しい。ソーセージパンやおかきを摘んで、しばらくは色づいてきた草原(湿原)の青黄色いカーペットや、遠くに見える粟ヶ岳や川内山塊の山々の眺めを楽しんだ。幾つかあるお休み場にも人が居るが、見渡して数えても10人を超えず多くはない。後から登ってくる人もあるが、下っていく人もありで、山頂は人で一杯にはならなかった。北側に傾斜した浅草岳山頂下の草原は展望デッキの様だ。大きく聳える守門岳や川内山塊、御神楽、飯豊の広大な眺めは何時までも見飽きないのではあるが、帰りも長い。11時25分に支度をして浅草岳山頂部を後にする。木道の分岐付近でリンドウの写真を撮っていたら、朝後続して北岳に寄っていた時に先行した方が下っていった(この方は長野の方で、鬼ガ面山辺りから話をしながらほとんど一緒に下った)。下りだけ鬼ガ面コースを降りていく人たちも幾人かは居たが、鬼ガ面コースはやはり静かなものだった。鬼ガ面山の手前で足元にキベリタテハが休んでいた。

 下りも岩壁の縁を歩く時には注意が必要。でもこんな山は楽しい。長い下りも鬼ガ面山辺りからは、塩尻の方と色々情報交換しながらのんびり降りたので退屈しなかった。登山口には15時56分に降りた。

 帰りは会津回りで帰ることにして、只見に下る。確かに会津は車も信号も少なく、町の通過もほとんど無いのですいすい走れる。只見から南会津町の旧南郷村にある会津みなみ温泉という所に寄って入浴する。実はここは町の電気屋さんなのだった。温泉が湧き出したので日帰り温泉を始めたそうだ。入口は電気屋さんの看板が出ている店舗の間に温泉専用の入口がある。面白そうなので入ってみたが、狭くて2度目は無い感じだった。3人入れば一杯になってしまう様な温泉だ。ぼくが入った時には誰も居なかったが、後から2人入ってきてもう一杯。余り落ち着かない。小さな内湯だけで、泉質はナトリウム塩化物泉とのことだが、独特の臭いがしていた。取りあえず汗を流して気持ちが良かった。

 入浴後は田島に抜け、田島のいつものスーパーでお弁当を買って食べた。南会津は店が無いのが唯一困ること。食事できる所は少なく、コンビニもほとんど無い。食事後、夜の7時を過ぎたが、家には9時半には帰ることができた。

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2 コメント

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鬼ケ面山からの景色いいですね (ノラ)
2013-10-05 13:15:23
あさぎまだらさん こんにちは。鬼ケ面山方面から登るのは長いけれど景色はいいんですね。今度登る機会があったらこちらから行きます。前回は私も相当前です。その時は真夏で山頂はガスの中,周りの木道が少し見えたぐらいです。でも鬼ケ面山の岸壁だけは良く覚えてます。ここは雷に閉じ込められた初めての記念すべき山ですから,忘れられません。
前回の飯森山と川桁山が展望は期待外れだったので今回は満足されたようで,何よりです。この辺りは私は守門と浅草岳しか行ったことないので御神楽もまだだし。毛猛山は名前からして薮山って感じで恐ろしげですね。
時計は残念でした。昔私も7年ぐらい使ったプロトレックの初代をベルトが切れて落としました。
何処で落としたのか忘れました。確か奥武蔵のどこかです。
電気屋さんが営む温泉って言うのも非常に珍しいですね。土地の人しかこないでしょうが。
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眺めは最高ですね (あさぎまだら)
2013-10-05 14:10:50
ノラさんこんにちは。
午前中は仕事でした。雨で今週末はダメですね。
鬼が面山はずっと岩壁沿いなので眺めは最高です。高度感も抜群で、下りは下が丸見えなので結構気を使いました。落ちたらアウトです。
毛猛山、登りたいですね。川内山塊も間近に見て、また登りたくなりました。矢筈岳は良くわかりませんでしたが。
時計は正直なところあまり気に入ってなかった?ので買い換える口実になりましたが、愛着も無くもないので、まあ少し残念です。
会津みなみ温泉って名前は良いけど、これって、いう感じでしたね。入ってくるのは案外地元の人ではないようです。僕の他に入ってきた2人は興味半分の旅行者みたいでした。この辺り沢山温泉があるので、地元の人は来ないみたいですよ。
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