今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

・雨見山、川手山

2013年11月30日 | 山登りの記録 2013

平成25年11月23日(土)
 雨見山1,347.2m、川手山1,184m

 山梨の山に先週の土日に登り、これからはいよいよ近場の山の時期になってきた。日曜は予定があって山には行けないので、土曜に『…300山』に載っている山でも登って来ようと思った。今月の初めに登った不納山とは町界尾根を挟んでいる雨見山と、同じく旧新治村のたくみの里周辺の山を併せて登ろうと考え、300山の本と地図を調べてみた。雨見山は、たくみの里(須川宿)から四万温泉に抜ける林道の途中にある川手山森林公園の更に奥に延びる雨見山林道から短時間で登れるという。川手山森林公園という名前にもあるが、林道を四万側に更に進んだところから川手山という山にも登れるらしい。川手山は山というよりも川手山聖園とも呼ばれる岩窟と石仏、ヒカリゴケ、ズニ石(オパールの原石)の産地として、云わば新治の名所の様な所らしい。その他、町界尾根上の東電見回り林道沿いのピークである大須山とかも300山に出ていたのでこれも、もしついでに登れればとオマケの候補に入れたが、日の短いこの時期にそんなには欲張れないだろうと思う。

 金曜の夜、家で夕飯を食べてから出発する。R17で湯宿温泉から左折し、たくみの里を過ぎて日帰り温泉施設『遊神館』のところから林道に入る。川手山森林公園への案内があるが、この公園は現在休業中(実態は完全に廃園状態)だ。集落を抜けると、いきなりのラフロードになった。この林道は四万温泉まで抜けているが、ネットの情報ではかなりの悪路とあった。川手山森林公園入口まででも時速30km以下で、ギアを2段ローのマニュアルに変速してゆっくり走った。乗用車では注意しないと腹をこするが、思ったほどヒドイ道ではない。

 川手山森林公園の入口看板は壊れて残骸といった感じになっている。ここから森林公園(跡地と言った方が良い)までは舗装されているが、両側から低木の枝や草が覆い被さって車体を擦るので車を大事にする人には進められない。しばらく走って舗装が終わると森林公園は左奥になる分岐地点に出た。ここから先は未舗装の雨見山林道になり、雨見山の下を迂回して須川の里に下っているが、その雨見山林道の最高地点が雨見山への取り付き地点だ。少しばかり林道を走ってみたが、これもそれ程の悪路ではない。充分乗用車で走れるレベルだった。この先に有るゲートが閉まっているという情報もあるので、取りあえず森林公園分岐で仮眠することにして車を停めた。時刻は11時半になっていた。空は星空が広がっているが、それ程冷え込んでいない。アラームを6時30分にセットしてシュラフに潜った。

 翌朝6時半に起きておむすびを食べて支度をし、雨見山林道を車で奥に進む。路面はラフだが特にえぐれた所もなくスピードさえ出さなければ普通に走れる。林道入口から100m程の所に草に埋もれた建物が建っていた。これも森林公園の施設なのだろう。大きく山腹を2回程ターンして上り、ゲートが開いていたのでそのまま進んだ。ゲートの先は路面にうっすらと雪が積もっている。最高地点間近と思われるやや幅広の路面の所に車を停めた。このまま進んでも良いが、ここより停め易いところがあるかどうか分からない。もう最高地点までは幾らも無いだろうとの判断で、そこに車を停めて、7時44分に出発することにした。その先も林道はほぼフラットで凹凸も少なく、薄っすらと雪が積もってはいるが、ずっと車が走れそうな状態だった。最高地点間近と判断したのはやや早計で、そこからしばらく歩いたが、まだそれらしいところも見えない。

 更にしばらく歩いていくと、細木にピンクのテープがひらめいている。その5mくらい先にも同じ様なテープが付いていた。ネット情報からこれが取り付き地点かと思ったが、同じ様なテープを大分手前でも見たし、林道はまだずっと上って居る様にも見える。『林道最高地点の先はダケカンバが両脇に並んだ直線路』というあおちゅうさんの記録を見た様にも思うが…、確かにその先にはダケカンバが道の両脇に見えた。しかし、テープがひらひらする所は尾根への取り付きの様には見えなかったので、更に林道を先に進んで2回程カーブを過ぎると、その先に明瞭な尾根が見えてきた。そこだろうと思って進んでいくと、意に反して林道はどんどん下っていくようになった。これで、さっきのピンクテープが取付きの目印と確信して引き返した。今日はGPSを持たないので、地図と実際の地形を見比べてぼくの頼りない勘で登っている。

 ピンクテープの付近は笹が膝丈くらいで、その上に薄っすらと雪が載っている。これを見たら昨年の男鹿岳を思い出した。今日はその辺しっかりと対策して、防水の確かなレインスーツのズボンを履いたので万全だ。8時4分に笹薮に入る。ストックで雪を払いながら、笹の斜面を少し登ると、その先にも赤テープが点々と見えた。背中には朝日が当たり、今日は不思議と暖かい。登っているうちに背中に汗をかいてきたのでパーカーを脱いだ。しばらく登ると、ミズナラの茂るはっきりとした尾根地形になり、防火帯かスキー場みたいに木々の無い幅広の笹原の帯が直上している。良く見ると、車の轍跡の様な平行する二本のへこみが笹の足元に見えるので、今は笹が茂っているが、かつては作業道ででもあったのだろう、車が上っていた道だったのではと思われた。そのうちに正面に丸い山が現れ、右手に同じ様な高さの丸い山も見えてきた。地図と見比べて、右の山が雨見山で正面が1,356mの南西峰と判断される。南西峰の下を北に回りこんで雨見山に取付く。ここにも赤テープが点々とあり、腰丈の笹を漕いで南西峰と雨見山を繋ぐ鞍部に登り上げた。笹の上の雪もこの陽気に融けてきている。浸みてくることは無いが、ズボンや靴は既にびっしょり。

 雨見山の最後の登りはやや急になって、ずっと同じ様な笹を漕ぎ、9時10分に山頂に着いた。雨見山の山頂は笹に覆われ、ミズナラの樹林に包まれている。葉が落ちた今でも余り眺めは良くない。木々越しに西には送電鉄塔が並ぶ町界尾根が直ぐそこ、北は銀嶺の谷川連峰とその下に赤谷湖、東には吾妻耶山が近く武尊山の、中でも7月に登った剣ヶ峰山が意外に近くに見えた。南は子持山・小野子山と榛名が近く、南東に霞んで赤城山はやや遠く見えていた。これらの景色はみんなミズナラのスリット越しだ。山頂は全面笹に覆われ三等三角点標石がぽつんと笹の中に立っている。周囲の木々にはGさんの旧名板、すかいさんのもの、Gさんのプラプレート、これも良く見るメタルのものなど、幾つものプレートが見られた。景色こそ良くないが笹にミズナラの感じが良く、静かな寂峰のイメージは好ましかった。

 山頂は笹に雪が積もって座るような所も無い。倒木をイス代わりにして笹の中に腰掛けて休む。今日もリンゴを齧りながら真っ青な空の下、独り占めの寂峰を楽しんだ。パンと柿ピー等もつまんで9時34分に雨見山を後にする。復路は南西峰から雨見山との間の沢を挟んで直降する尾根に引き込まれ、大分間違えて下ってしまう。登ってきた時の景色と違い随分雨見山が急峻に見えてきて、その上赤テープが何時の間にか全く無くなっている事に気づいて引き返したが、標高で50mくらい間違えて降りていた。南隣のやや不鮮明な尾根に移ってまたテープを見つける。しばらく下りると尾根が細まり、笹に覆われたかつての作業道跡?の傾斜地を降りて、取付いたひらひらテープの地点に10時46分に戻った。林道を歩いて車に戻り、雨見林道を降りて川手山森林公園から舗装路を下り、四万に抜ける林道秋鹿大影線に出る。分岐にはオレンジベストを着たハンターの軽トラックが停まっていた。

 次の川手山に向かうため、森林公園入口から四万温泉方面に林道を上っていく。森林公園入口から先は大分道に凹凸があったりして荒れている。乗用車では走りたくないような道だった。腹を擦らない様にゆっくりゆっくり走って、こんな道だから川手山登山口まではかなり長く感じた。川手山登山口は川手山聖園の別名もあるが岩窟・石仏の周遊コースで、入口はかなり広い広場になっていた。新しいトイレや東屋が建ち、広い駐車場もある。古い絵看板は『光苔』が強調され、周遊コースの石仏等よりもヒカリゴケを見る所のようにある。他の説明看板によれば、昔ここで修行を積んだ僧とその功徳について、また弟子が製作したとされる馬鳴菩薩(めみょうぼさつ)について書かれている。オパールの原石であるズニ石の産地であったことも書かれていた。要するに山というよりも、ここは名所旧跡の類であるらしい。地図で見ると、石仏巡りの周遊コース最上部が川手山の山頂となっている。しかし、休日であるのに周辺には全くヒトケが無かった。周遊して戻ってくるまでにも人一人会わなかった。帰りに支度をしている合間、オフロードバイクと4駈がそれぞれ林道を通過していったのを見たくらいだ。

 川側の駐車場に車を停めて、12時に周回コースに入る。説明看板では右回りが正しいコースのように書かれているが、『…300山』の記録と同じく左回りで入る。この付近は明るいミズナラ主体の雑木山で、既に葉は落ちているが落ち葉を踏みながら感じの良い山道を登っていく気分は清清しくさえある。登りだすと直ぐに『月海法印』と書かれた立派な立て札があり、浅い岩窟の中に、作られて余り時間も経っていない様な石像があった。この月海法印というのが、この山の云わば開山者で、江戸末期にこの川手山山中の岩屋で修行したのだという。これにまつわり天然の岩窟内に多くの石仏を祀って周回コースにしたのものが現在の川手山聖園なのだそうだ。またしばらく登ると形の良い石門があった。妙義の石門等よりスケールは小さいが、その分直ぐ近くからでも石門全体が見られる。石門の上は傾斜がきつくなって階段等があり、登り上げた尾根の反対裏側に岩屋があって十二山神が祀られていた。そこから方角を転換し南側に回りこんで登り上げると大日如来の立て札、その左手に少し登った所が川手山の山頂だった。川手山周辺は海蝕された石門の様な奇岩があちこちにあるということ、下りのコースには多くの奇岩が見られた。

 この周回コースの中では川手山山頂は周回地の一つになっていない。山頂は岩混じりの小さなコブに過ぎなくて、川手山山頂の表示等も無い。川手山の名前は無かったが、『シャクナゲ群落』という標識が山頂の方角を指していた。12時55分に川手山山頂に着いた。山頂には図根点の標石と一段下に月23と刻まれた山標石がある。山頂の一番高い所はヤブ状で、川手山と書かれたGさんのプラプレートが一枚あるだけだった。一段下に降りると、足元のシャクナゲ薮の上に送電鉄塔が建つ大須山のある町界稜線が見えた。右手にはその大須山の派生尾根上のピーク1,356m南西峰と、さっき登った雨見山がそのピークに重なり頂上部がホンの少しだけ見え、林道から登って行った尾根が良く見えた。ここで荷を降ろしパンを食べて休憩する。昼を回り早くも影は長く伸びて来た。

 1時34分に川手山山頂から降りて岩塔が並ぶ稜線を北に辿る。下りのコース(本来の登りコース)の方が二十二夜様、妙石洞、蔵王権現等の見るポイントが多い、展望台からは破風山方面や中之条の蟻川岳が見えていた。下の秋鹿大影林道付近を見下ろすと、尾根の落葉松が金色に輝いて黄葉している。展望台から傾斜のきつい斜面を降りていくと、月海が修行したという行者窟を見て、このコース一番の見どころである『馬鳴菩薩(めみょうぼさつ)』の石像がある岩屋へ回りこむ。この馬鳴菩薩というのは養蚕の神だそうだが、馬に跨り手に様々な道具を持った千手菩薩が1mばかりの円形の石版レリーフになっている。明治の初めに月海の弟子が月海が描いた下絵を元に彫刻したものだと、新治村(当時)教育委員会がここに立てた看板に説明されていた。

 馬鳴菩薩というのは中国の民間信仰がその発祥ということだが、何時の間にか仏教像の一つになり、養蚕の神様ということになっていったらしい。糸車やまゆ玉などを手にしているところはいかにもそれらしい。しかし、この像の価値はそんな説明などとは関係ない。まず、丸い石版の中からあたかも今出てきたように馬の上に跨る菩薩像の崇高でリアルな表情に驚く、とても修行僧の一弟子が作ったモノとも思えない。全体に非常に気高い雰囲気を持ち、その上、馬に揺られる動きさえも感じられる。こんな山奥の岩屋の奥に放置されている石像とは思えなかった。しばらくその崇高で優美な石像に魅入った。家に帰って馬鳴菩薩をネットで検索し、石像や絵等の様々な像を見たが、どれもいわゆる型どおりの仏像の域を出ないものばかりだった。川手山の馬鳴菩薩像は仏像というよりも、作家の美術作品といった印象を強く感じた。それだけにリアルで訴えるものが多い。

 馬鳴菩薩の下にも幾つもの岩窟があり、どこにも石像が鎮座していたが、他にはどれも取り立てて見るものは無い。真新しい幾つかは非常に稚拙な作りで、技術的に難しいのならもっと素朴で単純なものの方が良いのではと思った程だ。「光苔(ヒカリゴケ)」の岩窟は格子がはめ込まれ、恐らく盗掘を防ぐためだろうが、残念ながらその光るコケはしばらく覗いてみても確認できなかった。一周して2時46分に登山口まで戻ってきた。雨見山でも川手山でも、今日は全く山の中で人に会わなかった。林道の広場は陽が傾き、夕暮れも間近の雰囲気だ。荒れた林道で車の下回りを擦らないようにゆっくり引き返す。森林公園入口で、またオレンジベスト2人の乗ったトラックとすれ違うが、他には車もバイクももう走っていなかった。そういえば、ハンターは何度か見たけれど、鉄砲の音は朝から一度も聞いた記憶が無いのも不思議だ?

 里に出た所にある奥平温泉『遊神館』の温泉に入っていく。以前来た時に塩素臭がして余り印象が良くなかったが、やはり今回も塩素臭はしていた(特に露天風呂の方は強く感じた)。循環加熱なので、こういった日帰り温泉施設としては仕方がないのかもしれないが、ぼく的にはやはり余り良い印象ではなかった。身体だけは良く温まった。おみやげに地元のリンゴ(ぐんま名月)を遊神館の売店で買った。『ぐんま名月』は群馬県作出品種で沼田水上・中之条地域の特産で、甘くジューシーで香りもあり、とてもおしゃれな味のするリンゴだ。作付面積が少なく希少品といえるので、見つけたら直ぐに買っておきたい。最近はリンゴの本場、青森辺りでも栽培されているとか…。リンゴの大きな袋を提げて車に乗り込み、夕暮れの新治を後に帰路に着いた。


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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
雨見山も川手山も人気なさそうです (ノラ)
2013-12-01 15:38:36
あさぎまだらさん こんにちは。山梨の知られた山よりこちらの群馬の寂峰の方が私的には雰囲気が好きですね。雨見山はいかにもぼさやまって感じがして。川手山の下の遊窟の菩薩像はいい感じです。こういうのがあってもあまり人は来ないもんなんでしょうか。山梨と群馬の違いでしょうかね?
夏はやはり場所柄で山ビルが出るんでしょうか?もうハンターの出没する季節なんですね。気をつけないといけませんね。なんか事故の報道もあったようです。
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雰囲気の良い山ですね (あさぎまだら)
2013-12-02 01:17:01
ノラさんこんばんは。
今日は家内と東京に行っていました。なので山は休みです。
雨見山は正に寂峰といった表現がぴったりの山です。静かで良いですね。川手山の石像はなかなか良いもので、美術的に価値があるように思います。山ビルはどうなんでしょうか?稜線一つしか離れていないので、いるのかもしれませんね?ハンターは最近高齢化しているせいもあって事故が増えているみたいです。気を付けなくてはいけませんね。
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奥さんと東京って (ノラ)
2013-12-02 21:43:12
あさぎまだらさん奥さんと東京とは?観劇?映画?展覧会?モータショーってことはないでしょうね?サッカーでもないな?コンサートってこともありますね。東京メトロの地下鉄文学の中に,昔子供の手を引いて歩いた江戸川だったかの土手の道を長年連れ添った奥さんと一緒に歩きながらそっと手を差し出してつなぐなんて詩が有りましたよ。
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そんなロマンチックじゃないです (あさぎまだら)
2013-12-03 01:50:56
ノラさんこんばんは。

そんなロマンチックじゃないですよ。いつもの食いだおれです?江戸東京博物館行って新宿でタイ料理を腹が破けるほど食べました。ははは。
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馬鳴菩薩 (しぼれ)
2013-12-03 19:42:56
あさぎまだらさん こんばんは
馬上の菩薩、ぜひとも覗いてみたくなりました。石門、奇岩あり、情報ありがたくストック直行です。
ヤマビル避けて11月から葉枯れの時期ですね。
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馬鳴菩薩 (あさぎまだら)
2013-12-04 01:47:06
しぼれさんこんばんは。
馬鳴菩薩は一見の価値があります。その他はご愛嬌といった感じもしますが…。林道はあまり路面が良くないので気を付けてください。ヤマビルは心配ないですね。
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