Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

40‰

2009-09-06 19:38:23 | 歴史から学ぶ

 飯田線の沢渡―赤木間にある藤沢川の鉄橋の北側すぐにある標柱は、これより40‰の下りというものが下り方面に向かって立つ。そこから約230メートル北に下るとこれより40‰の上りという標柱が上り方面に向かって立つ。たった200メートルほどであるが、ここがJR鉄道全線の中でも最急勾配区間だという。藤沢川が段丘を削りだして押し出した天井川を造っていて、この天井川を越えるために沢渡からほぼ平らに南進すると一気に鉄橋まで上りつめるのである。いったん鉄橋上で緩勾配になり、鉄橋を超えると再び33.3‰という勾配で赤木駅に向かって約800メートルほどの長い坂を上っていく。とはいってもわたしはつい最近までここがJRの最急勾配区間だということは知らなかった。毎日この区間を通勤で乗車しているが、坂であるという印象はどこかにあるものの、それほど急であるという印象は無い。沢渡駅を発車するとスピードを上げていき、この坂を難なく上っていく。スピードが落ちるという印象もほとんどない。最急勾配区間が200メートル程度という短さがそう思わせるのだろうか。むしろΩカーブで減速して走る飯島―伊那本郷間(与田切川鉄橋から伊那本郷駅までの間)の坂の方が減速するだけに急なのではないかと思っていた。あるいは伊那大島―山吹間とか元善光寺―伊那上郷間もけっこう勾配がある。

  実はこのことを知ったのは最近刊行されているシリーズもの週間「歴史でめぐる鉄道全路線」(週間朝日百科)創刊3号からである。あまり一般には知られていない理由は、1997年に廃止されたJR横川―軽井沢間の碓氷峠越えの66.7‰が有名なこともある。現在は廃止されてしまっているわけであるが、廃止後もJR以外にはこの沢渡―赤木間より急な箇所があって、はるかに緩勾配であるこの区間の勾配が見劣りするということも理由だろうか。それにしても沢渡―赤木間に最急勾配区間があると知って「あそこだろうか」と思ったのは藤沢川から表木へ上っていく長い坂である。ところがそこではなかった。平行して走る道路からその場所を探してみると、確かに藤沢川へ上る坂が急であるということは察知したが、乗っているとまったくそんなことは感じない。ようは電車にとってみれば40‰など「へのかっぱ」程度なのである。

  さて、たまたま鉄道シリーズが朝日新聞出版社と集英社で発行されていて、前者は7/26発行号、後者は8/6発行号と接近していた。どちらも長い飯田線を扱っているから全線を網羅するには紙面が限られている。したがってどうしても「飯田線」と思って開いてみても、身近なことが「載っていない」と思う人も多いだろう。とくに後者は飯田線を南の方から紹介していって、けっきょく駒ヶ根あたりで打ち止めになっている。ようは伊那市あたりのことは書かれていないから、伊那市あたりの書店に並んでも売れないだろう。証明するように市内のいつも寄っている書店でも表紙を見なかった。いっぽう前者はまだ少しばかり伊那市近辺のことが紹介されていて、その一つがこの急勾配区間のことだった。それでも長ーいこともあってほんの少ししか身近に感じないからあまり売れる感じがしない。いまだにその書店には残部が棚に並んでいる。売り切れない前に買おうなんていう心配はまったくなかった。

  撮影 2009.9.4  写真は上り方面(飯田方面)に向かって撮ったもの。確かにここから急になっているのが解る。

コメント


**************************** お読みいただきありがとうございました。 *****