Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

信南交通の路線バス撤退について

2008-01-06 11:01:31 | ひとから学ぶ
 年末に松本市のアルピコグループの経営難が報道されて驚きの声が上がったが、そのすぐあとに飯田下伊那地域のバス事業を行なっている信南交通が、一般路線バスの事業を撤退すると表明した。実は長野県内で一般のバス路線が運行されている路線は少ない。よほど黒字と言われる路線はともかくとして、長野市・松本市以外の路線バスはほとんど赤字だろう。したがって直営路線は数少なく、多くが行政の力を借りて運営されている、あるいは行政から要請されて運営されているのが現状だろう。飯田下伊那地域にいたっては、バスなくしては地域の足がなくなる、という声が高まるものの、一事業者にその責を負わせるには、あまりにも公共性が高いのに住民の協力はない。地方でも景気の良い業種があるだろうに、そのいっぽうで公共性の高いこうした業界は厳しさが改善することは絶対にないかもしれない。このあたりが、わたしのよく言う、民間事業者も車通勤ではなく、公共交通の利用者を増やす努力をするべきという考えに通じるはすだ。妻がよく言うが「公務員が率先して公共交通使うべき」という意見は、それ以上に民間に聞かせてあげたいものだ。

 高速バス事業による収入が、バス会社をなんとか継続させているという話は昔からよく言われていることである。そしてとくに伊那谷のバス事業者にとっては、電車と比較してあらゆる面で都合の良い高速バスは、こうした路線バスを補ってきた。矛盾な話であるが、これがもし飯田線がスピードアップしていたり、完成を見なかった中津川線があったら、どうだっただろう。例えば中央新幹線が本当に登場するころ、この地域のどこかに駅があったら、高速バスの利用者は今のようなわけにはいかないだろう。わが社と同様に、不必要になったら目も当てられず「廃止の日を待つ」、そんな冷たいことを平然と住民はしていないだろうか。財政難の自治体がそれを補っていくことになるのだろうが、行政のやることはバランスが良くない。そうでないことを望むしかない。12/30信濃毎日新聞に、最も利用客の少ない路線の1台当たりの平均乗車密度が示されていて、それによると、1人に満たない0.6人という。そして「人影の少ない駅前の停留所を見て、「これだけ客が少なければ経営も苦しい。仕方ない」」という利用客のコメントを紹介している。「行政の力を借りて」というが、行政ではない。住民がどう捉えるかであり、どうしても必要なものなら本気で住民が考えなくては、足はカバーできない。

 通勤時、電車が飯島駅に到着すると、駅前にマイクロバスが停車している。以前にも触れたが、このバスの利用が増えないという新聞記事を昨年拝見した。電車が到着するのを待っているように駅前に停まっているバスは、おそらくその町で運営している有料バスである。もちろん客は誰も乗っていないし、降車した客が乗るはずもない。1/4の朝、一面雪で白くなった世界に、いつもと変わらずにそのバスは停まっていたが、やはり誰も利用する人はいなかった。この現実を町当局はよく認識しているのだろうか。こんな姿を見ていると、行政に面倒見させても、無意味なものとなりかねない。


 実は撤退を表明した信南交通の中島一夫社長のことに以前「伊那谷の南と北」第2章 においてわたしは触れている。信南交通はバス路線を12路線も維持してきた。おそらく県内でもこうした山間地域を中心にこれほど多くの路線を維持してきている会社は少ないのではないだろうか。赤字でも地域のために努力されてきたことは事実である。何度も言うが、一事業者にさまざまな地方の病の一つを押し付けている住民が〝悪い〟、そう思わずにはいられない。
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