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2、津波に抗することができるか?
実績も、検証もないプレキャスト工法
防潮堤の構造 直立式防潮堤の基礎部分は長さ8m~40mの鋼管杭を地下の硬い地盤(支持地盤)まで埋めて、地上の防潮壁を下から支える構造になっている旨、岩手県は説明している。海に面して6m 幅ブロックをかさねて、4本ずつの鋼管杭で下から支え、全長1,600mの鍬ヶ崎防潮堤を支える計画(総266ユニット、1064本鋼管杭、532本地上鋼管)である。(別紙図3参照)
プレキャスト工法とは? 現在の人手不足と資材不足から遠方の工場で防潮堤の部材を作って運び、現地で組み立て施工する工法のことである。すぐ目につく事は、かすがい的斜めの補強がない事と、組み立て部材(パーツ)の膨大な多さである。
1)かすがい的斜めの補強がない事
斜めの補強がなければ強力な斜め構造の台形型防潮堤の代替えにはならない。見た事のない巨大さで住民を納得させようとしているが沿岸の津波被災者はだまされない。
かすがい的斜め補強がない事で、ユニット+ユニット、部材+部材の結合部分に過大な圧力がかかってくると見なければならない。代替えの代償が防潮堤崩壊につながる大きな懸念がある。
2)部材+部材の接触面連結の説明がない事
部材+部材の結合接着面が膨大な数に上り、横に並ぶユニット+ユニットの結合も看過できない連結技術が必要である。「一体型」を追求した鉄筋コンクリート防潮堤や、やはり「一体的」構造である台形型防潮堤に比べて、そのばらばらの寄せ木細工構造の強度は弱すぎて沿岸の住民には理解する事が出来ない。接着・連結技術はそれぞれ接着剤をもってするのか? 鉄筋連結なのか? 噛み合わせなのか? 他の新しい技術なのか? 説明を求めるところである。
3.11の大きな問題であった田老の崩壊防潮堤については「新しい方の堤防はコンクリートの塊を二重に積み上げただけで、鉄筋を通したり、積んだコンクリートを上下でかみ合わせたりしていませんでした」(2011.9.1 東大地震研究所都司准教授=肩書は当時)という調査報告もあった。なお、准教授はこのような(手抜き)堤防は他でも見られます、という。
岩手県は、まさに、長大な海岸線を抱えて、防災工事については沿岸の県民に疑惑を抱かせるものであってはならない。プレキャスト工法は、一体型と違って、経済性や簡便性はともかく、津波防災施設としては「積み木や凹凸のレゴ組み合わせ状態でぶよぶよして気持ちが悪い(不安定)」という批判が多い。安価工法をもって危険性が増すなら本末顛倒というべきである。
3)もろすぎる心棒鋼管
かすがい的補強と関連して、現地では、地上に横列で並ぶ防潮壁の芯になる鋼管が津波の圧力で捥れる(=もぎれる)と思われている。津波は横からの力が圧倒的で、このような広い壁に加わる横からの加速度的襲撃力は壁ごと倒壊させるのではないか? という恐れが広がっている。恐れは被災地の…というより、沿岸の人々の蓄積されてきた津波の経験則である。沿岸の人々は巨大でも倒れる建造物の経験を忘れないでいる。まさか、まさか…はあり得ること、想定外はあり得る事だ。
3、約束の履行を求め、オープンな釈明を求める
1)昨年11月4日の岩手県の宮古市民に対する説明会の席上、主催者はこれまでの地質調査結果については市民に対して公開説明すると約束した。この件の実行を求める。
2)同時に以上に述べてきた岩手県の地質調査に関する方法等それぞれの疑問に対して具体的な釈明(説明)の機会を設けて頂きたい。時間軸、ボーリング間隔等
3)プレキャスト工法、直立式デザインに対する質問に対しても同様に求める。
以上
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