the other side of SmokyGitanesCafe
それとは無関係に・・・。
 




GITANES以外はなんでもどうでもよかったのだ。
それとは無関係に・・・。

祖父の書斎には大きめのデスクがあって、その上にはいろいろな
ものがあった。
虫眼鏡もあった。
おじいちゃんなのに、こんなもので何を拡大してみるんだろう?
と子供心に不思議に感じていたが、何のことはない、ただ老眼だっただけだろう。

その他には漆が塗られた盆があって、万年筆と鉛筆数本が並んでいた。
すごく小さい硯と墨、細かい筆、
ゴツゴツとして少し歪んだ小型の鉄瓶もあった。
その鉄瓶を使って、墨を磨る水や湯を差すようだった。
あとはメガネ(老眼鏡だろう)、手紙やはがきが突っ込まれた状差、
鉄製の灰皿とタバコ(ハイライト)、マッチが置かれていた。

なにやら切れそうで切れなさそうでもある刃物も置いていた。
ペーパーナイフだった。
「手紙の封を開けるときに使うんだ」
孫にも優しく語り掛けることなどなかった、つまり大人にも子供にも
同じような喋り方しかしなかった祖父は、その時も低い声でそう言った。

『オトナって、ややこしいな・・・自分はオトナになれるんだろうか・・・』
と思った。

だって、手紙を開封するためだけの刃物が存在するのだ。
そんな面倒くさいこと!

ハサミでもいいのに、そう言えば兄が持っていたアレ(カッターナイフ)だって
あるのに。他のなんでも使えるナイフだってあるのに、
どうして『手紙を開封するときに使うナイフ』なんてものが存在するんだ?
この調子では、何かをやる度にそれ用の道具があるに違いない。
そんなもの覚えきれない、使いこなせない!

幸か不幸か、私は今までペーパーナイフを買ったこともなく、譲り受けたことも
もらったこともない。そして、使ったこともない。
私はひょっとしたら死ぬまでペーパーナイフを使わないかもしれない。

やはり私は心配した通り、
少なくともペーパーナイフひとつ分ぐらいオトナになれなかった。

アインシュタインは、身体を洗う石鹸とヒゲを剃るための石鹸を一つで
済ませていたという。
理由を問われたアインシュタインは
「石鹸を使い分けるなんて複雑すぎる」と答えたとか。

あ、そういえば私はペーパーナイフこそ扱えないが
『夜、自転車に乗る時にかけるためだけのサングラス』は使いこなせている。
つもりである。





コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


« 2047 こよみ »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。