GITANESを探し回る必要こそないけれど。
それとは無関係に・・・。
最近出張が多い。
東京出張の頻度も増えてきて、そりゃあ出張なのだから仕事が
メインとは言え、せっかく普段あまり行かないところへ行くのであるから
いくつか楽しみはある。
「職業柄」というエクスキューズのもと、服飾品の買い物はモチベーションを
大きく引き上げていることは否定できない(否定できないどころか、無条件全肯定している)。
ところが、頻度が増えてきたものだから
そうそう行くたびに買い物ばかりしている訳にはいかない。
時間もあまりないし、第一カネが続かないではないか。
ということで、施設やショップの視察のみにして買い物の欲求は
強烈な自制心で封じ込めることにしている。
先日の出張で事件は起こった。
羽田に到着した飛行機から降り、到着ロビーへ向かう長い通路で
履いていた靴の底が前触れなく「ぱっかーん」と外れたのである。
で、まあ常に沈着冷静な私としては能役者のようなすり足で
とりあえず静々と到着ロビーをすり抜け、空港内の靴修理屋に
流れるような所作で飛び込んだ訳である。
修理のプロである店の主に経緯を話すと、応急処置程度のことはできますとのことだったので
沈着冷静な私は激しく首を縦に何度も振った。
やっぱり安物の接着靴はこうなる危険性を常に孕んでいたのだろうが
それにしても他に所有しているもっと古い安物接着靴は、まったく問題なく現役で
使えているのに、どうしてこの靴だけこうなったのだろうか?
それも、この壊れた靴はローテーションに入っておらず、ほとんど履いていなかったのに。
修理屋の店主が言うには
「靴は定期的に履かないとダメ。弾力性が決定的に損なわれてしまうから。」
「まったく動かさない靴は死ぬのが早い。接着の場合は特に接着剤が死ぬ。」とのこと。
さすがの説得力だった。
15分ほどで応急処置の接着が終わった。
もうすり足の必要はないのだが、悲しいほどすり足の癖が短時間で身についてしまった私は、
念のためのすり足のまま
「まあ、買い物をする気はなかったけど、この場合は仕方ないなあ。ああ不本意だなあ。
でも、買わないとなあ。ああ、不本意だなあ、ぐふふふ。」と、とりあえず東京駅近くの
百貨店へ。
間に合わせの靴を買うだけのことだから、百貨店ならなんとでもなるだろう。
しかし、いざ買うとなると「やっぱりどうせ買うんだから今度は強い靴の方がいいだろう」
「まあ、末永く履ける方がいいんだから、好みにそぐわない靴をわざわざ買うこともない」
と考えながらシューズフロアを徘徊するが、あろうことか
買う気になる靴がなかった。いや、あるにはあったが15万円だった。いくらすり足が
いやだからって、緊急購入に15万はあるまい。
そこをあきらめ、次の施設へ。
そこにも興味をそそられる靴がなかった。もう、完全にウキウキ買い物気分になっているではないか。
で、結局よく立ち寄る銀座もうセレクトショップへ行く。
ここにはさすがにやっぱり、ちょうど具合のいいのがあるのだ。
最終的には緊急購入らしくない価格の靴を購入。すぐ履くから箱も布フクロも付属の靴べらも
不要と告げ、その場で履き替えた。もうすり足とはおさらばである。
その店に行った際、恒例にしていることがある。
担当してくれたスタッフに「月間でどれぐらい服飾費に費やすか?」を尋ねるのだ。
今回のスタッフは「平均10万円ぐらい。」とのことだった。
前回同じ店で尋ねたスタッフは「15万ぐらい」
神戸の店で尋ねたときは「10万ぐらい」との答えだった。
そうか、そうだよなあ。
この業界人がこの分野にカネをかけない訳にはいかんよなあ。
なんとなく安心しながら足取りも軽やかに店を出た。
外は寒かったが、雨は上がっていた。
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