こんな本を読んでいる

日々出版される本の洪水。翻弄されながらも気ままに楽しむ。あんな本。こんな本。
新しい出会いをありがとう。

『日米開戦の真実』を読んでいる

2007年08月25日 | Weblog
日米開戦の真実 大川周明著『米英東亜侵略史』を読み解く
佐藤 優
小学館

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  佐藤による大川周明の分析である。

 大川と言えば、極東国際軍事裁判の初公判で、東條の頭をコツンとたたいたおっさん。A級戦犯になりながらも、「精神障害」の疑いで、死罪を免れた思想家くらいの認識しかなく、満鉄の調査部にいたことも、一時期北一輝と行動をともにしたことも、5.15で下獄したことも知らなかった。そんな具合なので、あえて、著作に当たってみようなどという気は起こりもしなかったし、なぜ、佐藤が大川を取り上げるのか、東條の頭を叩いたおっちゃんを、と訝しく思うのが関の山であった。

 ところが、である。佐藤のガイダンスで読み始めた大川の『米英東亜侵略史』。そこには、米西戦争以降の米国の覇権主義の実相アジア諸国への野心が、簡潔明瞭に語られており、加えて、当時の日本人の時勢の認識が、極めて明快に示されているのである。

 拓殖大学の教授。単なる思想家に過ぎない大川が、何故、英米から恐れられ、その思想と行動が警戒されていたのか、わからなくもないといったふうなのである。それにしても、ベトナム、イラクに連なる米国覇権主義の芽は、既に、スペインとの戦いにおいて発芽し、日本との摩擦は不可避であったことがよく解るのである。

 日露戦争の調停直後から始まった、ハリマン鉄道王の満蒙への鉄道敷設の動きから、カリフォルニア州での日本人排斥運動。ワシントン会議での日英同盟の切り崩しに、ロンドン条約における日本の軍拡への歯止め。周到に準備がなされ、着実に、日本を追い込む様・行動力学は、大戦後も変わらないのである。

 大川の再読で、パクス・アメリカーナを再勉強することができるようである。

 

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