サラリーマンに人気の作家といえば司馬遼太郎。最近は塩野七生の独壇場かもしれないが,司馬史観などともてはやされ,未だに司馬遼太郎人気は衰えていない。元来,あまのじゃくな性格ゆえ,司馬先生ものは,あえて,避けてきたきらいがある。だから,きちんと読んだのは「坂の上の雲」1作のみ。確かに面白かった。筆の運びもうまいと思った。ことに,維新に功労の無かった四国松山出身の秋山兄弟に焦点をあて日露戦争の立役者に仕立てる構図や,そこに正岡子規や夏目漱石をからめ,文化の香りを漂わせる構成は秀逸である。児玉,大山,乃木の描きかたも骨太である。文庫で7巻とやや大部であるが,すいすい読める本なので,まだ読んでいない人にはお勧めの一冊でもある。
だが,司馬遼太郎に関する評価というものは少し高すぎるのではないか。1作しか読んでいない輩が偉そうなことを言うなと司馬ファンからお叱りを受けるかもしれないけれど,司馬史観などとおおげさだなあというのが正直な感想だ。とくに,明治初期の元勲たちのみが時代を切り拓いたかとも思える組み立ては,若干,抵抗感がある。日露戦争を頂点に坂の上から転がり落ちるリスクを内在させていたのは恐らく事実だろう。確かに,乃木軍の伊地知参謀の硬直した作戦展開と203高地の惨劇は,官僚化した軍のもつ退廃・凋落を予感させている。
しかし,維新のみを美化するのはいかがなものか。歴史のうねりの中で,彼らの果たした役割の大きさは計り知れない大きなものであるとはいうものの,もう少し,引いたところから維新を再評価しないと,何か大きな間違い・ミスリードを起こすような気がする。少し引いたところからの再評価の形を示す力量は持ち合わせていないが・・・。
だが,司馬遼太郎に関する評価というものは少し高すぎるのではないか。1作しか読んでいない輩が偉そうなことを言うなと司馬ファンからお叱りを受けるかもしれないけれど,司馬史観などとおおげさだなあというのが正直な感想だ。とくに,明治初期の元勲たちのみが時代を切り拓いたかとも思える組み立ては,若干,抵抗感がある。日露戦争を頂点に坂の上から転がり落ちるリスクを内在させていたのは恐らく事実だろう。確かに,乃木軍の伊地知参謀の硬直した作戦展開と203高地の惨劇は,官僚化した軍のもつ退廃・凋落を予感させている。
しかし,維新のみを美化するのはいかがなものか。歴史のうねりの中で,彼らの果たした役割の大きさは計り知れない大きなものであるとはいうものの,もう少し,引いたところから維新を再評価しないと,何か大きな間違い・ミスリードを起こすような気がする。少し引いたところからの再評価の形を示す力量は持ち合わせていないが・・・。