本を読みたくなるツボ,なるものがあるかどうかは知らないが,友人に言わせるとどうもあるらしい。それは何かというと,性への誘い,ということらしい。こいつをうまくつかめば,どんな子供でも,放っておいても本読みになるというのが彼の説である。
何故,彼がそこまで力説するかというと,彼の中二になる娘さんが,このコツをつかんで驚異的な本読みになっているかららしい。夏目漱石,太宰治はもとより,村上春樹や吉本ばなな,はもちろんのこと,三島由紀夫に飛んだかとみれば,井上靖もこなす。しろばんば,なつくさふゆなみ,北の海,などなど,なんでもありの乱読ぶり。しかも,小学校高学年からはまっているというのだから,少々驚きである。
自分を振り返ると,確かに夏目漱石は『坑夫』まで読むまでにはまったし,井上靖もお気に入りで,もちろん,石坂洋二郎だとか,石川達三なんかにもウロウロしたりしたけど,そのきっかけは,太宰治。中三の時,太宰の『人間失格』と『斜陽』を読んで,中二時の教科書の『走れメロス』との違いにおそれおののき,三枚の写真が人生のゆらぎを写す鏡になっていたことを発見してから,やっと,本を読むことのおもしろさを知ったという程度だった。
それまでは,むしろ,読書は嫌いな方で,せいぜい,シャーロックホームズの冒険だの,星新一などが専門だったから,友人のお子さんの本読み振りはちょっと脅威で,まるで立花隆の若いころみたいだなと思った。世の中には確かにその種のひとたちがいる。中学時代からの友人の分析が正しければ,彼女をして本に駆り立てているものは,性,そして種,それは人生も含めて生るということへの飢餓感に集約できるわけだから,彼の娘さんだけでなく,この禁断の木の実さへ与えれば,どんな子も本好きになるわけだ。
久しぶりに友人と会ってやった一杯。意外なことに話題のひとつは本の話になった。『こころ』は2時間で一気に読んで,俺は,先生みたいに親友を裏切らない,少なくとも死には追いやらない,などと,感情移入して,気が高ぶって眠れなかった高校生の時をなつかしく思い出した。 blog Ranking へ
確かにエッチな本なら読みたくなりますよねぇ(意味が違う?)
というわけで,エッチな本は読書力を身につける基礎だという友人の俗説は,あながち外れたものではないと思います。