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『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』 を読んでいる

2006年01月04日 | 読書ノート
「三島由紀夫」とはなにものだったのか

新潮社

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 三島由紀夫は何だったのか。小説界の石原裕次郎だった。いや,キムタク,ペ・ヨンジュンだった,と思うと解りやすい。つまり,戦後から高度成長期の時代のスーパースターだったのだ。

 学習院。東大。大蔵省。エリート街道をひた走りに走り,緻密で意地悪に難解な文章で武装する知的エリート。小説界のスーパースター。三島がわからん奴は論外で,三島がおかしいというものはバカという世界。三島は活字が市民の日常である時代の知のヒーローなのである。だから,やっぱり三島トラウマのおいらは論外か?

 というと近寄りがたい天才というイメージになってしまうが,そうでもない。例えば,2003年に読んだ本の1冊に『師・清水文雄への手紙』というのがある。三島が学習院の恩師で広島大学で教鞭をとった清水文雄にあてて書いた本だが,文面に現れる三島は律儀で清潔感があって好感がもてる。

 10年前に読んだ猪瀬直樹の『ペルソナ』では,三島の祖父・平岡定太郎は樺太庁長官を務め,父・梓は元農林省水産局長,三島本人もその血を受け継ぎ大蔵省に9ヶ月だけ籍を置いた,三代にわたる高級官僚の家系を通して近代を解き明かそうとしている。まさに,明治からの約100年間を,平岡家三代を軸にしてミクロの近代日本を,原敬や岸信介を登場させてマクロの近代日本を,それぞれ鮮明に映し出している。(アマゾン:堀尾優子さんの書評から一部転載)この脈略では,三島は歴史の生き証人なのである。

 そして福島次郎の『三島由紀夫』。同性愛のお相手の告白本を読んだとき,知の巨人,トラウマ三島が何故か身近な存在に感じてしまった。(当然のことながら,私がホモセクシャルという意味ではなく三島に人間臭を嗅いだという意味で・・・。)こうして三島に関する読書暦をたどってみると,改めてその存在の大きさに驚いてしまう。ノーベル文学賞は川端ではなく本来なら三島だったと,本人が吹聴していたと何かで読んだような気がするが,案外事実だったのかもしれない。ちなみに,お父さん平岡梓の『倅・三島由紀夫』には目をとおしていない。猪瀬や福島の著作にふれたとき,ついでに買ったのだろうが埃をかぶったままである。
伜・三島由紀夫
三島由紀夫―剣と寒紅                                                

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