私の恩師であり,最も一緒に酒を飲んだ友である長井務先生が7月7日に亡くなりました.
長井先生と初めて会ったのは後に私も受け持つことになった三重大学の情報科学概論という授業で,当時は名古屋大学からのおさがりの汎用機を用いた物理モデルのシミュレーションをやっていたのですが,鈴鹿高等専門学校の卒業研究で核分裂にもすぐにつながってしまう高電圧大電流での電子雪崩シミュレーションをやっていた私の好奇心をくすぐってくれました.
編入当時は大学での一般教育のレベルの低さと,これまで学んできた高専での数学および電磁気学の非効率さに腹が立っていた時期だったので,型落ちのスパコンとはいえ,パソコンにはないレベルの計算能力・印刷能力に感動し,初めて触れるFORTRAN言語に関係なく機械をいじめ倒す気持ちで変態的な図形を出力しまくっておりました.
そしていつしか,常に酒臭く大学の先生らしくない彼自信に興味を持ち,彼を中心に行われていたパソコンのボランティア講習なるものにも顔を出すようにしました.
そこでWindowsの基礎,文書作成,表計算,インターネットを軽く学びました.
インターネットもWWW, Gopher, telnetやFTPといったものを教えられるわけで,今でいうオンプレミスの電子メールなんてのはなくて,Sun OSでのmailコマンドやmailx, emacsやmuleをいじるわけで,QualcomのEUDORAを使う人達が特権階級の時代でした.
しかし表計算において非常に重要な機能を覚えました.
それがクロス集計,Exceでいうところのピボットテーブルでした.
このパワフルさは今のExcelの設計者が挿入リボンのいの一番に配置していることからも,是非とも覚えるべきツールであることは明白です.
でもできないピボットテーブル.
私も講習を一通り終えたのちに受講生に教える立場に立ち,最初のうちは往生したものでした.
その時,初めて「教えることは学ぶこと」と身をもって知りました.
長井先生は統計のプロでSPSSが趣味というとんでもない人で,彼が楽しそうに教えるピボットテーブルを私も横目に見て,徹底的に覚えました.
その甲斐あって私も大量のデータ処理が屁でもない人間に鍛え上げられました.
しかし,いくら長井先生が楽しそうに教えても,なかなか学生は覚えられないものでした.
私たちが教えた学生が述べ5万人を超える時でも,マスターした学生は少なく,マスターした学生でももったいないことにその価値を理解できないものがいたりしました.
まぁ,それでもピボットテーブルの凄さ気づいてくれる学生が少しでも増えるように,今も学生に表現の機会を与え続けています.
そんな彼らに贈りたい本が最近,技術評論社の電脳会議に紹介されていました.
一般的な本ではピボットテーブルは最後にちょろっと出ていたり,あるいは教えなかったりしている状況です.
ですが,前述しましたが挿入リボンのいの一番にExcel2007からずっと居続ける覚えるべき機能なのです.
最近では高校でも教える先生が増えてきているのが嬉しいですが,まだまだ満足のいくレベルではありません.
この本はそういったもどかしい状況を変えてくれる本かもしれません.
是非,ご一読を.
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