創作 あの頃の自分 3)

2024年08月30日 09時43分19秒 | 創作欄

木村勇作は、何時も誰かを好きになっていた。

3番目の職場は2年勤めたが、ここでいじめに遭うのだ。

元自治省の役人であった広田孝蔵社長は京都大学を出ていて、私立大学出身の社員たちを「頭の悪い奴らだ」と侮蔑していた。

さらに、猜疑心の強い歪んだ性格で、秘書の金子清子を監視役にしていたのだ。

社員が社内で何をしているを探るのである。

電話は秘書の清子によって盗聴されていた。

「君は、使用の電話が多いのではないか」社長に呼ばれた女好きの佐野真司は叱責される。

「堀君は、ライバル会社の人間とどういう関係なのかね」

「実は、大学の同期生なんですが」

「わが社のことは、しゃべってないろうね」

「はい、なにも」

「以後、余計な付き合いはするな」

「わかりました」

社長室の扉は常に開かれているので、社員たちには、聞き耳を立てていた。

木村勇作も社長室に呼ばれた。

「雑誌が減り過ぎているそうだ。どこと、どこへ持っていつたのかね」社長は老眼鏡を外しながら、勇作を詰問するのだ。

勇作は、新規広告先を拡大しようとしていたのだ。

「効率的な営業をするんだよ。木村君、浜君に聞いたのいだが、先月も雑誌を社内の書庫からたくさん持ちだしたそうじゃない」

浜博子は勇作の監視役であった。

勇作の大学の系列の短大を出た博子は何故か、勇作にいい感情を抱いていないようであった。

色々と社長に告げ口をしていたのだ。

勇作が髪にアイパーをかけていることも、社長に告げていた。

実は、勤務先のオフィスの隣に理容室があったのだ。

また、地下の大ホールのコンサートへ行ったことも、博子は告げていた。

社内の規定で広田社長より先に、社員が退社することを禁じていたのだが、勇作は午後7時開演のコンサートへ行ってのである。

それは、二期会の新春オペラコンサートであった。

叱責された勇作は退社を、すでに決意していたのだ。

1年前に退社した先輩の水島翔太が「うちの会社に来ないか」と誘っていたことが幸いする。

そして、勇作は新らたな勤務先で恋した山崎瑞奈と出会うこととなる。

 

 

 

 

 

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「センス・オブ・ワンダー」... | トップ |   
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

創作欄」カテゴリの最新記事