創作 福子の愛と別離 20)

2024年08月05日 23時18分28秒 | 創作欄

何と言うべき偶然であろうか、福子は過去に中学生であったゆかりと、桜桃忌で出会っていたのだ。

福子は大学での卒論に際して、「太宰文学の愛と死」をテーマにした。

当時、21歳の福子は太宰の桜桃忌に初めて行ってみた。

その後、心が支配されたように毎年のように桜桃忌へ足を向けていた。

当時は、オウム心理教による、凶悪事件が起こっていた。

そのことは、福子にとって「宗教は何のためあるの?」と率直な疑問を抱かせたのである。

だが、福子は、同期生の晃に誘われて参加した仏教系の宗教の座談会で、宗教の真の意義を知るが信仰に至ることはなかった。

そして福子は、太宰文学にますます魅了されていくのだ。

参考

太宰文学ファンには、政治運動の挫折、精神病、心中といった、ショッキングで破滅的な、ゆえに魅力的な「太宰神話」を抱く人が多かった。

だが、一方では、小説家太宰治の本領とはむしろ、どんなにシリアスな場面でもどんなに苦しい場面でも、どこかそんな自分を俯瞰して、自分で自分のことを笑ってしまうような感覚にあるのではないか。
あるいは逆に、一生懸命に、切実にふざけているような感覚にあるのではないか。

言葉によって着飾り、また、言葉によって苦しんだのが太宰治という小説家である。
自分の思いは言葉でしか表現できない。でも、その言葉は自分の思いとは違ったかたちで伝わってしまう。
だからまた言葉を発する。その必死さが滑稽であり、愛おしい。

 

 


親が挑戦する姿は子どものやり抜く力を育む

2024年08月05日 12時21分35秒 | 伝えたい言葉・受けとめる力

▼「今」を生きる。

「今日」を生き切る。

どんなに地味でも、たゆまず流した挑戦の汗は、金の歴史となって結晶する。

▼親が挑戦する姿は子どものやり抜く力を育む。

▼人は老いて、何時かは死ぬ。

<人生の有限性>に目を向けながら、どのように生き、何を成し遂げるのか。

そこに人生の価値は輝く。

▼原水爆の使用は、地球の自殺であり、人類の自殺を意味する。

▼核兵器の非人道性に対する認識を国際的に高めるためには指導者の被爆地訪問である。

政治指導者が被爆者の苦しみを知り、被爆の実相に触れることで、核問題解決の取り組みを<不可逆で揺るぎないないもん>にしていくためである。

▼核兵器の脅威を地球上からなくすために、今こそ、平和と生命尊厳の思潮をさらに広げていかなければならない。

 


科学は絶対ではないはずだ

2024年08月05日 11時50分59秒 | 沼田利根の言いたい放題

国家とは、何であるのか?

慈悲の理念が、国家の運用に不可欠と期待されるのだが、現実はそうではない。

そして、平等という理念もあるはずだが、それも欠落している。

「科学」とはそもそも何であるのか?

未知の領域に対しては、科学は絶対ではないはずだ。

その意味で、科学は謙虚であり、包摂的であることが期待される。

 

 


創作 福子の愛と別離 19)

2024年08月05日 10時43分15秒 | 創作欄

母の絹子は、東京新宿にある東京女子医科大学の出身者であった。

医学部の教育理念は、自らの能力を磨き、医学の知識・技能を修得して自立し、「至誠と愛」を実践する女性医師および女性研究者を育成することにある。

さらに、知識・技能だけでなく、患者一人ひとりに向き合い、それぞれの悩みを解決できる医療者、医療を実践する過程で、様々な人々と協働しながら、社会を先導する医療人、そして多様なキャリア形成とライフサイクルの中で、自分を磨き続けることのできる女性医師あるいは女性研究者を育成する。

絹子の心をとらえたはのは、「至誠と愛」を実践する女性医師という理念であった。

絹子は、大学の同期生の牧野紀子によって、仏法哲学を知り深く興味を覚えた。

それは、<死んだら終わり”ではなく、死は次の生への始まり>との生死観であった。

そのよういに捉えた方が、人生の最終章まで「生」を輝かせていくことができるのである。

絹子は、晃を信仰に導くとともに、大学院へ進み教師になることを勧めた。

絹子が師と仰ぐ指導者が「私の生涯の最後の事業は教育です」と言ったことが、彼女の心を深く動かしたのである。

母親として、一人息子の晃に医師になることを期待していたのであるが、その期待は裏切られていた。

医師は人の命を助けることだ。

教師は、人を育てることであり「教育の目的は子どもの幸福の実現」と師は言っていた。

「あなたのために、これまで郵便貯金をしておいたからね」母親は笑顔となりバックから貯金通帳と印鑑を取り出して、喫茶店のテーブルに置いた。

晃は、その場では確認しなかったが、貯金は850万円余であったのだ。

晃は、新宿駅のホームで甲府に帰る母親を見送る。

そして、母へ感謝の念が込み上げてきて涙ぐむ。