水木しげる 人生をいじくり回してはいけない (人生のエッセイ)

2024年07月10日 11時20分54秒 | 社会・文化・政治・経済

水木 しげる (著)

ゲゲゲの水木サンが見たこの世の天国と地獄とは!?
水木しげるが、その半生をユーモアたっぷりに綴ったエッセイの数々

 

水木しげるの感性はどこからきたのか?

「水木さんの妖怪や自然に関するアンテナはすごく感度が良くて一般人とは違うと思うんです。<のんのんば」と出会って感性が見いだされ、磨かれ、そのまま研さんを積んで、磨かれてていったのではないでしょうか」水木しげる記念館の庄司行男館長の見解。

<のんのんば>とは実家のお手伝いさんの影山ふみさんである。

地元にまつわる伝説や妖怪の話から、幼い水木さんは「見えない世界を感じる力」を育んだようだ。

「見えない世界」とは「目の前に現出していることだけが事実ではないと考えています。見えないから存在しない、だからそんなものは教える必要はない、という考え方が明治以降、日本の教育の根幹をなしてきました。江戸時代までの迷信や非科学的な古い発想を捨て、文明開化の科学的教育をと考えられたのでしょう」水木さんは指摘する。

だが水木さんによれば、電気や気圧など「感じる」ことはできても「目の見えないもの」を形にする学問が科学。

見れないものが不要なわけではない。

自分も妖怪と言う見えない「命」に形を与える。

見えない世界を感じようにしていると、「死後も自分は存在する」というような考え方になり、「なんとなくおだやかな感じに」になれる。

 

 
水木先生の幸福についての考え方がわかりやすく書かれています。
のんびりとしたラバウルの原住民の方々とのふれあいの中で、幸福とは何かということを、水木先生のご経験と合わせて記されています。
幸福とは何か考えさせられる、でも難しくない、読んだ後にほっとした幸せな気分にさせてくれる良い本です。
 
 
 
よみやすい。
水木さんの言いたいことは、次のようなことだけなのだろう、と思う。
「人生はいろいろなことがある。一喜一憂しない」→ そのうえで、はじめて「やりたいことだけすればいい」という言葉が説得力を持つ。
「幸せとは、神様から与えられたものを、ありがたく頂戴すること」→努力しててにいれるものではないのかもしれない。

戦争を生き抜いてきた水木さんには、どうにもならないことがある、努力すればなんとかなるというような甘い思想はない。また許されない時代だったのだろう。

最後に、私が最も感銘を受けた226P以下を抜粋しておきたい。
『身をすててこそ浮かぶ瀬もある突撃力
ただ、水木サンにいわせると、ふつうの人はねえ、いわゆる突撃力がない。ぐにゃーとしていきてきたんですよ。
戦争で、うわーっと驀進していった、そういう気質はない。それがある人はいいんです。ある人は成功しとるでしょうね。
身を捨てても浮かぶ瀬もあれってね、突撃しないとダメなんだ。生か死かですよ、やっぱり。
時代のせいなんかじゃなくて、突撃力。だから仕事は馬力をかけてやれとはいわないけれど、いわれなくてもできるはずです。
それをやらないっていうのはねえ、性格かもわからんな、ひょっとしたら。
でも、あの、水木先生から観ると、幸せな状態の生活で、かならず幸せになろうっていうのは、妙なかんじなんですよねえ。たいして努力しないで幸せになろうっていうのが多い。
努力して幸せになろうっていう普通の考えをする人はすくないね。本音は一生懸命かもしらんけど、水木先生から観るともう怠け者。ほとんどの人が。

だからのんびり暮らしなさい
やっぱり努力しないと。水木サンはかなりしたですよ。飯も食わずに寝ないで努力しているようなかんじで、努力したからね。
だから水木さんから見ると、ふつうの人は、努力しないで成功したいって騒いでいるようなもんですよ。がんばればかならず神がちゃんと助けてくれるようになってればすごくいいけれどね。
しかし努力してもやっぱり成功するのは一割ぐらい。だから、あとは怠け者になりなさいあきらめてのんびりくらしなさい。その方が幸福かもしれない。』
 
 
本書は、水木氏の過去のエッセイ・インタビューから、主に人生をテーマにしたものを集めたものです(古くは’73年、最新で’07年)。だから、彼の著作本を読んだことがある、ラバウル訪問の特集番組を見た、といった方には新鮮味はないかもしれません。また、書き下ろしなしでこの価格は、正直言って高い。

第2章は深い味わいのある話が多く充実しています。「「家」の履歴書」、「娘よ あれがラバウルの灯だ」、「蝶になった少女」などなど。また、幸福や人生を語る第4章では、かなり真っ向から読者を突き放します。
「・・幸せな状態の生活で、かならず幸せになろうっていうのは、妙な感じなんですよねぇ。たいして、努力しないで幸せになろうっていうのが多い。・・」さらに、時代のせいにはするな、とも。うまくいかないとすぐに不満をもち何かのせいにしたがる、読みながらそんな自分を何度か思い出さされました。

人生をいじくりまわすなというタイトルの真意を、読み終って理解できたように思います。
 
 
感動でした。ネット時代万歳です。あまぞん社に感謝申し上げます。

 

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