福子は、水道橋駅で制服姿の高校生であるゆかりと度々出会うことがあった。
実は、ゆかりは福子の動静を見張っていたのである。
「福子が先生とデートするのではないか?」ゆかりは、その場を抑えるようと意図したるのである。
だが、晃はその時期には、母校ではない大学院の博士課程へ向かっていた。
高校教師から大学の教員への転身を目指しての勉学であった。
それは、母への恩に報いたいとの晃の強い一念からである。
福子は決意した。
「あの子、晃さんのために死ぬかもしれない、そんな予感がするの。私は、あなたと別れても、新しい恋をするかもしれない。でも、あの子は晃さん一途なのね。怖いくらい」福子は晃に抱かれた渋谷のホテルで言うのだ。
晃は、太宰文学ファンの二人の女の狭間にあって、自身の立場を俯瞰する。
「こんな関係になっも、福子さんは、僕から離れ行くの? とても理解できないな」晃は複雑な思いにとらわれる。
「いいのよ。私のことは、今は、あの子が、とても気がかりなの」福子は涙ぐむ。
28歳の二人は、思いもかけずに17歳の少女に翻弄されたのだった。
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