福子は、桜桃忌で出会った中学生のゆかりを、三鷹駅に近い喫茶店へ誘った。
そして、二人は太宰文学談義となるのだ。
ゆかりは、福子の深い太宰文学の評価に心を動され「あけみ、おねいさんに兄事していいですか?」と尋ねる。
「兄事? あなたは、大げさななことを言うのね」福子は思わず笑うが、相手は真剣な眼差しだった。
あの時の中学生が眼前にいたので、福子は複雑な気持ちに支配された。
一方のゆかりは、「あの時のおねいさんなのね」と先生の晃と脇に立つ福子に改めて驚きに目を向ける。
晃は、その状況を図りかねていた。
出会った3人は、あの日ように三鷹駅に近い喫茶店へ向かった。
ゆかりは、「相手が、あの時の憧れのおねいさでも、ゆかりは、先生から絶対に離れないわ」と心の内で決意を新たにしていたのである。
「おねいさんは、今、何をしている?」ゆかりは上目づかいに尋ねる。
「水道橋駅のそばの、出版社にいるの」福子は微笑んでいた
「先生とは、どんな関係なの?」ゆかりは、詰問口調となる。
「この人は、僕の大学の同期生」晃は強い口調となる。
「それだけなの」ゆかりは、強い嫉妬心にかられていたのだ。
福子は、女としてゆかりの心情を思いやっていた。
そして、自分を桜桃忌に誘った晃の心情や意図に複雑な思いを抱いたのだ。
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