創作 福子の愛と別離 21)

2024年08月06日 00時22分24秒 | 創作欄

福子は、桜桃忌で出会った中学生のゆかりを、三鷹駅に近い喫茶店へ誘った。

そして、二人は太宰文学談義となるのだ。

ゆかりは、福子の深い太宰文学の評価に心を動され「あけみ、おねいさんに兄事していいですか?」と尋ねる。

「兄事? あなたは、大げさななことを言うのね」福子は思わず笑うが、相手は真剣な眼差しだった。

あの時の中学生が眼前にいたので、福子は複雑な気持ちに支配された。

一方のゆかりは、「あの時のおねいさんなのね」と先生の晃と脇に立つ福子に改めて驚きに目を向ける。

晃は、その状況を図りかねていた。

出会った3人は、あの日ように三鷹駅に近い喫茶店へ向かった。

ゆかりは、「相手が、あの時の憧れのおねいさでも、ゆかりは、先生から絶対に離れないわ」と心の内で決意を新たにしていたのである。

「おねいさんは、今、何をしている?」ゆかりは上目づかいに尋ねる。

「水道橋駅のそばの、出版社にいるの」福子は微笑んでいた

「先生とは、どんな関係なの?」ゆかりは、詰問口調となる。

「この人は、僕の大学の同期生」晃は強い口調となる。

「それだけなの」ゆかりは、強い嫉妬心にかられていたのだ。

福子は、女としてゆかりの心情を思いやっていた。

そして、自分を桜桃忌に誘った晃の心情や意図に複雑な思いを抱いたのだ。

 

 


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