午前1時50分、利根川堤防を歩く。
朧月だった。
この時間帯、人に出会うことはないと想っていたら、大柄な男性とすれ違う。
実はパソコンは、限界なのか午前12時40分ごろに電源を入れたら、5分くらいで電源が切れしまう。
何度も試すが、復帰しない。
仕方ないと散歩で家を出たのだ。
これまで、毎日、1時間以上は歩いてきたが、コロナ禍の自粛で20日間は、取手駅方面へには行っていない。
利根川堤防を歩きながら家人のスマホを借りて、ユーチューブの画像を見る。
亡くなった加門亮や黒木憲のムード歌謡を聴く。
ところで、北柏のカラオケスナック「ワイン」が閉店したことが残念に思う。
黒木憲の元奥さんが経営していた店だった。
中央競馬の元騎手の妹さんとも親しくなった。
また地元北柏の友人とも何度も行った店だった。
8/20(金) 6:31配信
現代ビジネス
あるカザフ人女性の証言
〔PHOTO〕Gettyimages
長いあいだ書こうと思って、どうしても書けなかった。草思社から出ている『重要証人: ウイグルの強制収容所を逃れて』という本についてだ。
【写真】ソ連将校のレイプ、満州での飢餓 澤地久枝「すべてを話しましょう」
なぜ、書けなかったかというと、ちゃんと読めなかったからで、正直にいうと、今でも完璧には読んでいない。あまりにも残酷そうなところに差し掛かると、自己防衛本能が働き、「ここは読むな」と警告を発する。それだけで、私は怖くて震えそうになる。何度かトライしたが、警告はいつも同じところで来た。
同書は、サイラグル・サウトバイというカザフ人女性の話を、ドイツ人ジャーナリストのアレクサンドラ・カヴェーリウス氏がまとめたものだ。1976年、サウトバイ氏は東トルキスタン(新疆ウイグル自治区)で生まれた。ここには、カザフ、ウイグルなど多くの民族がいる。彼らはイスラム教徒だ。
サウトバイ氏はいわゆるエリートで、イリ自治区の大学を主席で卒業し、97年からは医師として働いた。イリの人口構成は90%がカザフ人だが、すでに中国の侵略は進んでおり、医師の80%は中国人。大学では研究や解剖用に、出所不明の健康な臓器がふんだんに提供されていたという。
その後、彼女は母親の看病のため医師をやめ、地元に帰って教員の研修を受けた。公職に就くには入党が必要となり、2001年、共産党員となった。2004年、やはり教員であったカザフ人の男性と結婚し、2005年に娘が生まれた頃は、彼女はまだ将来に対する希望を全て失っていたわけではなかった。
2006年、学校で使用する言葉が、カザフ人にとっては外国語である中国語となった。教師の8割が中国人となり、カザフ人は職を失った。紆余曲折は省略するが、2009年には長男も生まれた。そしてその頃、党では自己批判制度が導入され、職場で全員が、自分の過ちを中国語で記すことが義務となった。
2009年、ウイグル人少女のレイプをきっかけに、ウルムチで大規模なデモが起きたが、中国人兵士がウイグル人の服を着て中国人を攻撃し、その報復と称してウイグル人とカザフ人が大量に虐殺されたという。
2014年には強制収容所の建設も始まった。しかし、その頃にはすでに、習近平国家主席のポスターがあらゆるところに飾られ、カザフ人やウイグル人は生活の糧を失い、ウイグル自治区(東トルキスタン)全域が次第に刑務所のようになっていった。
そのうち公務員のパスポートが取り上げられ、外国には出られなくなった。サウトバイ氏の夫は退職していたため、パスポートがあった。そこで彼らは大きな決断をする。夫と子供達だけでも、まずここを脱出するべきだと。
ここを出て世界に知らせるために
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2016年、3人が旅行を装ってカザフスタンに旅立つのを、サウトバイ氏は「必ず後から行くから」と誓いながら見送った。その後まもなく、チベットで文化を破壊し、人々を虐殺した人物が、東トルキスタンの新しい党書記に任命された。
中国政府による統制は進んだ。顔写真、網膜、声紋による絶対に誤魔化せないIDカードが作られ、健康診断が行われた。外国との交信が断たれ、サウトバイ氏は通信アプリで夫や子供と話すこともできなくなった。あらゆるところに監視カメラと警備員が配置され、突然、消える人が増えた。
そして、2017年、ついにサウトバイ氏も連行され、家族がカザフスタンにいることを責められた。その後も、頭に布が被せられた連行と釈放が何度か繰り返された。
その年の11月、サウトバイ氏が目隠しのまま連行されたのは、いつものように警察ではなく、収容所だった。しかも、ここで教師として働くために。
収容所に関する話は、ご自分で読まれたい。全てを読みきれていない私だが、人間がここまで残酷になれるのかと、信じられない思いに襲われた。古代でも中世でもなく、今、起こっている話だということを考えてほしい。
サウトバイ氏は収容所で、「契約は極秘、収容者に話しかけることも、感情を表すことも、許可なく質問に答えることも禁止」という誓約書を書かされ、24時間ライトのついた監視カメラ付きの部屋をあてがわれた。何か一つ間違えば死刑だ。
一方、収容者は16㎡ほどの部屋に20人ほどが詰め込まれ、いつも手錠と足枷をはめられている。トイレはなく、部屋にバケツが1個置いてあるだけ。この収容所には、2500人ほどが収容されていたという。収容者は、ウイグル全体ですでに100万人に上ると言われている。
彼女を何より苛んだのは、少女が集団で公開レイプされようが、収容者が拷問されようが、助けることはもちろん、感情を示すことさえ許されないことだったという。ちょっとでも同情や動揺の表情がカメラに捉えられたら、同じ運命になるだけだ。
一度、「助けて!」と縋られた老女に手を添えたら、中世のような拷問道具の並ぶ部屋に連れて行かれて、電気椅子にかけられた。抵抗など誰の助けにもならないことはすぐに理解できた。
この時、サウトバイ氏は生き延びようと決心した。子供達に会うことだけを考えた。そして、ここを出て世界に知らせるために、全てを記憶しておこうと心に誓った。
夫と子供が待つカザフスタンへ
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どんな残酷なシーンにも動じない彼女の態度が監督者たちに認められたのか、収容所に来てから5ヵ月目の2018年3月の夜中、彼女は自宅に戻された。翌日から復職したが、数日後に解任され、次の指示を待てと命じられた。
しかし、彼女は逃亡を決意する。夫と子供が待つカザフスタンへ。たとえ失敗して殺されても、このまま死ぬよりはましだった。同書ではここから、パスポートのない彼女が国境を越える様子が描写される。やはり、読みながら胸騒ぎで苦しくなる箇所の一つである。彼女はすでに心身ともに、ボロボロになっていた。
あたかも奇跡のようにカザフスタンへの電撃入国を果たした彼女は、家族と再会する。ただ、カザフスタンには既に中国の権力が伸びており、一家に平和な生活が訪れることはなかった。まもなくサウトバイ氏は拘束され、中国に送還される危険が迫った。
ところがその頃、カザフスタンで思いがけず大きな運動が巻き起こる。彼女の夫と義兄が、カザフの有名な人権活動家とともに、この件をビデオメッセージで発信した。すると、それがきっかけでカザフ人の怒りが燃え上がり、その輪が国中に広がっていった。カザフスタンには、中国の収容所に消えた家族や親戚を持つ人が大勢いたのである。
2018年7月、サウトバイ氏の裁判が始まった。罪状は「違法入国」。4度の公判は、その度に傍聴人が増え続け、国連、アムネスティや、欧米のメディアまでが注目するようになった。
この時、裁判所に面会に来た9歳の息子を、10cmほどのガラスの隙間から、食い付かんばかりに眺めているサウトバイ氏の写真がある。そのインパクトがもの凄くて、見ただけで涙が出そうになる。これほど母の愛情を表した写真を私は過去に見たことがあっただろうかと思った。草思社はこの写真を同書の裏表紙に使った。
判決は「6ヵ月の自宅監禁」となり、支援者とともに喜んだのも束の間、判決が下されたその日のうちに、ウイグル自治区にいる母親、翌日には妹が逮捕されたというニュースが入り、彼女は打ちのめされた。その後も、カザフスタンの秘密警察に脅される生活が続き、さらに滞在ビザも小刻みにしか延長されず、結局、追い詰められた一家はスウェーデンへの亡命を決意する。
現在、一家はスウェーデンにいるが、心の平安は訪れず、特に彼女の健康状態が芳しくないと聞く。拷問室から聞こえてくる声や、レイプの場に引き摺り出されていく少女たちの絶望的な眼差しが、今なお彼女の精神を蝕んでいる。母や妹との連絡もいまだに取れない。
たとえ何もできなくても
写真:現代ビジネス
一方、ウイグルの人権弾圧は、最近、国際社会の注目を集めるようになり、あちこちで不満が高まっている。
英下院、カナダ下院、オランダ議会、リトアニア議会など、また大臣レベルでは米国務長官ブリンケン氏が、ウイグル自治区で起こっていることをジェノサイドと認定した。ニュージーランド議会、イタリア議会は、非難決議を採択している。米国やEUでは、中国に対する制裁も進んでいる。
日本では、今年の4月、日本文化チャンネル桜、アジア自由民主連帯協議会、ネット番組「ウイグルの声」、南モンゴルクリルタイ(世界南モンゴル会議)の各代表が連名で、国会議員の全員に公開質問状を送付した。内容は下記である。
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【質問】貴方は中国政府がジェノサイドを行っていると認めますか。
一、ジェノサイドと認める。
二、ジェノサイドとは認めない。
三、多数の人権侵害や弾圧はあるが、ジェノサイドとは言えない。
四、わからない。
五、答えることを拒否する。
六、その他(その理由や説明をお書きください)
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その結果、709名のうち、回答があったのが157名。そのうち、ジェノサイドと認めると答えた人が81名。認めないが1名、わからないが8名など。そして、552名は、この質問状を無視した(各議員の見解など詳細は、http://www.ch-sakura.jp/1633.htmlで見ることができる)。もちろん、今期の国会では「ジェノサイド決議」は提起されていない。
ただ、実は国会閉会の前日、下村政調会長や、高市総務大臣など数人が、「対中非難決議文」の国会提出を求め、二階幹事長が承認のサインをするところまで漕ぎ着けていたという。ところが、すんでのところでそれを止めた議員がいて、その理由が「あんまりこういうの(ウイグル問題)興味がないんだよな」だったとか。
ウイグルの人権弾圧には確たる証拠がないと主張している学者もいるので、それならまだわかるが、「興味がない」は、反対の理由としては最低ではないか。そんな政治家は、いったい何に興味があるのだろう。
『重要証人: ウイグルの強制収容所を逃れて』の編集者は、精神的な負担が大きくて体調を崩したという。それでも、これは伝えなければならないと思って、この本を世に出した。ジャーナリズムの王道だが、それに比べて、発信力に恵まれた大手紙やテレビ局の何と逃げ腰であること!
私たちは、たとえ何もできなくても、せめて知らなければならないことはあると、反省を込めつつ、いつも思う。何も知ろうとしなかったから、拉致の被害者を取り戻そうと考えることもなかった。チベットで起こっていたことも、南モンゴルで起こっていたことも、知ろうと思えば知ることはできたはずだが、もう手遅れだ。
だからこそ今、何もできない私だが、同書だけは紹介したいと思った。遅すぎることは承知だが、まだ完全に手遅れではないことを祈りつつ……。
川口 マーン 惠美(作家)
8/22(日) 10:01配信
JBpress
7月12日、一週間後に行動制限を解除することを正式に発表するジョンソン首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
(黒木亮・作家)
ワクチン接種が十分でないところにデルタ株が猛威をふるっている日本の現状は、筆者が住む英国の去年の秋から冬にかけての状況を彷彿させる。ただ違う点が1つある。英国では医療が崩壊する懸念はほとんどなかった。理由は、昨年3月中にコロナ患者用の十分な病床と医療スタッフを確保し、それを厳しいロックダウンで支えたからだ。
イギリスでは「野戦病院」も複数開設された。写真はマンチェスターのナイチンゲール病院
■ 昨年3月中に感染ピークの準備を完了
昨年3月17日、英国の人口の84%を占めるイングランドのNHS(無料の国営医療サービス)のCEOサイモン・スティーブンス卿は、NHSの約10万の病床のうち3万床以上をコロナ患者向けに用意するよう全NHS病院に命令を発した。
具体的には、4月15日以降、急を要しない手術を、最低3カ月間延期し(救急治療、がん治療、その他緊急の対応を要するケースは除く)、退院が可能な健康状態の患者は退院させることとした。
この命令にもとづき、不急部門の診療科を次々と閉鎖・縮小させ、退院できる患者もどんどん退院させ、3月末までに約10万あった病床のほぼ半分を空けさせた。これにより、ピークだった今年1月のコロナ入院患者数3万4336人は十分カバーされた。
一方、医師や看護師の確保も機動的に行われた。新型コロナの入院患者数は3月20日の時点で1580人だったのが、3月末には1万1154人まで急増していた。スタッフ不足が懸念されたので、これを補うため、3月22日には、医療現場を離れていた4500人の医師と看護師に復帰に同意してもらい、その後、医学生や看護学生も動員した。免許が切れていた医師や看護師には、特例で更新を認めた。またNHSでは、通常は異動に本人の同意が必要だが、この時は同意は不要とされ、大量のスタッフがコロナ部門に強制的に異動になった。
その後は、コロナ患者の増減によって一般患者数をコントロールしていった。
毎月末の入院患者数を見ると、ロックダウンの効果が出た昨年7月末にはコロナの入院患者は870人まで減り、一般の入院患者は10万1062人まで増えた。
その後、感染拡大でコロナ患者が2万8112人まで増えた今年1月末には、一般患者数を8万3947人まで減らし、ワクチンとロックダウンの効果が出た5月末にはコロナ患者数が773人だったのに対し、一般患者数を11万1489人まで増やした。
こういうことができたのは、(1)英国の病院の約9割が国営のNHS傘下にあるので、中央集権的に号令を下すことができること、(2)元々日本に比べて入院日数が短いことがあげられる。
後者については、2017年のデータによると、OECD加盟の38カ国の中で日本は韓国(18.5日)に次いで平均入院日数が長く16.2日である。これに対し、英国は6.9日、米国は6.1日、ドイツは8.9日にすぎない。
欧米では、入院させると病院側の採算が悪くなるので、できる限り早く退院させ、手術台の回転数を上げようとする。筆者は18年前に重い肺炎にかかったことがあるが、そのときも通院治療で、「肺炎くらいじゃ入院させてくれないのか」と思ったものである。
■ 「ブロック・バイ」と仮設病院で約1万1000の追加病床も確保
同時にNHSは昨年3月21日にスパイア・ヘルスケアやケアUKなど複数の民間病院グループと、8000の病床、約1200の人工呼吸器、700人の医師、1万人の看護師、8000人のその他の医療スタッフの提供を受けるブロック・バイ(塊の購入)契約を締結した。これらは新型コロナの患者だけでなく、がんなど緊急の治療を要する患者にも使用された。非常事態に鑑み、民間グループも協力し、購入価格は原価(コスト・ベース)だった。
また4月3日から5月5日にかけて、クリミア戦争(1853~56年)の野戦病院で活躍した英国人看護師ナイチンゲールの名を冠したコロナ患者用の臨時の「ナイチンゲール病院」をロンドン、バーミンガム、マンチェスターなど6都市に開設した。6つの病院の病床数は当初3006人で、10960床まで拡大可能だった。場所は国際会議場などの大規模施設を利用し、陸軍が協力して設置した、まさにコロナの野戦病院だった。
さらに全国に500以上あるコミュニティ・ホスピタル(地域の住民のための小規模病院)と介護施設に1万床の病床を空けてくれるよう要請した。
かたや日本はどうだったか。病床確保のために昨年度1兆円以上の補助金を投じたが、事前協議で決めた病床数を提供できない病院が続出し、実際には病床の確保ができていなかった。
1つ気になるのは、日本では日々の感染者数が英国よりも少ないのに、入院患者数が英国の約3倍の1万8611人もいることだ。新型コロナ対策分科会の尾身会長も先日国会で「発表されている数字より実際の感染者数は多いと思う」と述べており、表面的な数字よりも事態は深刻だと考えるべきだろう。
■ データサイエンスを活用した戦略的兵站
英国が、昨年春からマイルストーン・ペイメントなどベンチャー投資の手法を使って開発中のコロナワクチンを青田買いし、約1万人の注射打ちのボランティアと約2万人の医療ボランティアを養成し、接種のロジスティクスも入念に整えた上で、昨年12月9日から一気呵成にワクチン接種を進めたことは、以前「感染者激減、なぜ英国はワクチン接種で先行することができたのか」で書いた通りである。
【参考】感染者激減、なぜ英国はワクチン接種で先行することができたのか (https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65104)
病床確保においても戦略的な「兵站」の成果が如何なく発揮された。
NHSには「NHSデジタル」(本部・西ヨークシャー州リーズ市)という約6000人が働く情報・IT部門があり、そこが患者との最初の窓口になるGP(家庭医)から患者個々人の情報を吸い上げている。これが医療体制の効果的運用を可能にした。
多数のデータサイエンティストがGP経由で送られてくる情報をもとに、地域ごとの将来のコロナ患者数の予測などを行い、経営陣がどの病院のどの部門を閉鎖・縮小し、どの設備と医療スタッフをコロナ病床やICUに振り向けるか、あるいは逆にどのコロナ病床を元の部門に戻すかといった決定や勧告をしている。的確で詳細な予測と指示によって、ごく短期間で必要な病床と医療スタッフの確保を実行しているのである。
■ 厳しいロックダウンでNHSの活動を下支え
こうしたNHSの活動を下支えしたのが厳しいロックダウンだ。英国は昨年3月23日からロックダウンに入り、時期によって強弱の差はあったが、今年7月19日まで続いた。この間、外出は生活必需品の近所への買い物と1日1回の運動に限られていた。同居人以外とは屋内で会うことはできず、食料品店・銀行・薬局・郵便局など、生活に欠かせない店以外はすべて閉鎖された。理髪店も閉まっていたので、筆者は家内とお互いに散髪をしたが、単身赴任の日本人ビジネスマンたちは鏡を見ながら自分の髪を切っていた。
違反者には最大で960ポンド(約14万4000円)の罰金が科された。マスクをあごのあたりまでずり下げていた白人男性が警官3人によってスーパーの床に押さえつけられたり、ジョギングをしていた男性が「呼吸が激しすぎる」と自治体の見回り職員に注意されて口論になったり、闇で営業していたパブの店主が罰金1万ポンド、客はそれぞれ罰金500ポンドを科されたり、100人規模の結婚式を闇で開いた会場に警官隊が突入し、結婚式を中止させ、会場提供者に1万ポンドの罰金を科したりした。さすがにこれだけやると、社会に険悪な雰囲気も漂い、今思い返すと灰色の日々だった。
ロックダウンによってウイルスを駆逐するのは難しいが、感染者数を大幅に抑えることができ、医療体制やワクチンが開発されるまでの時間稼ぎができる。特に、昨年3月から4月にかけての時期は、NHSもまだ新型コロナの治療法も手探りで、ロックダウン以前に感染・発症した患者(ボリス・ジョンソン首相を含む)が次々と運び込まれる中、新コロナ病床の準備と治療チームの編成、他部門から来た医療スタッフのトレーニング、医療スタッフに対するサポート体制の構築、病床を空けるためのコロナ以外の患者の健康状態のチェックと退院手続きなど、やるべきことが山積で、まさに“戦場”だった。この一番苦しかった時期を支えたのがロックダウンだ。
京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授は、日本の場合、「ファクターX」(遺伝的要因、交差免疫、BCG接種、生活習慣など色々考えられるがまだ特定できず)によって従来型コロナウイルスから守られ、欧米のような厳しいロックダウンをせずに済んできたが、変異ウイルスには太刀打ちできないと述べている。その日本で今、より感染力の強い変異種であるデルタ株が爆発的に蔓延している。しかし、病床や医療スタッフの確保が実際にはできておらず、ロックダウンも行っていないので、医療崩壊が起きるのは必然だと言える。
日本以外で「ファクターX」が存在する可能性がある中国、韓国、台湾、ベトナム、シンガポールなどは、日本より厳しいコロナ対策を行い、人口比で見ても感染者数や死者数は日本よりはるかに少なく抑えている。英国やフランスでは規制に違反しても、外国人でも罰金を払えばすむ(パリ在住の日本人はバゲットを買いに外出した際、必要書類の不携帯で135ユーロの罰金を科され「世界一高いバゲットになった」と嘆いたという)。しかし、シンガポールではコロナ規制に違反して他の世帯の人間と会話・飲食をした12人以上の外国人が国外退去処分になっている。
■ コロナとの共生開始
英国は18歳以上の成人の75%超がワクチンを2回接種しており、7月19日にロックダウンの行動規制をほぼすべて撤廃し、レストランや商店も通常営業に戻った。新型コロナの1日の感染者数は、7月17日に5万4183人に達したが、その後、2万8000人程度まで減った。医療崩壊の懸念はないが、一時期待が高まった集団免疫の成立はデルタ株の蔓延で遠のいた。
行動規制が撤廃されたと言っても、公共交通機関や商店内ではマスク着用がサービス提供者側から求められ、半分以上の人たちがそれに従っている。高齢者のマスク着用率は今もほぼ100%である。
コロナ・シフトで一時しわ寄せが行き、手術待ちの患者が増えたNHSも、状況が落ち着いてきている。元々NHSは、どんな疾患でもまずGPに診てもらい、紹介状をもらい、アポイントメントをとって専門医のところに行かなくてはならない。時間がかかるので、疾患が慢性化してしまうこともある(大けが、心臓や脳の発作、網膜剥離といった緊急事態は例外で、救急車を呼び、病院の救急外来に搬送してもらう)。
評判が悪いNHSではあるが、コロナ禍のような非常事態では前述のとおり威力を発揮する。コロナ・シフトだけでなく、個々人の健康状態をGPが把握しているので、高齢者とともに最優先された基礎疾患がある人たちへのワクチン接種の案内も確実に行われた。
筆者は昨年上梓した『カラ売り屋、日本上陸』(KADOKAWA刊)の中の一編「病院買収王」の取材で、日本のある病院グループの経営者をインタビューした際「英国の制度が羨ましい。GPが最初に患者さんを仕分けしてくれて、必要な人だけが専門医にかかる。日本は大した疾患でなくてもいきなり高度医療を提供する大病院や大学病院に患者がやって来るのでかなわん。もっとけしからんのは、医者が少なくて大変な土日に、空いてるだろうと思ってやって来る患者で、こういうのはもう来るなと言いたい」と嘆いていたので、医師の視点と患者の視点は180度違うのだなと思わされた。
日本では特に勤務医が安い給料で酷使され、彼らの献身的な自己犠牲によってコロナ禍の医療も支えられている。サステイナビリティという観点からは、限界に達しつつあり、やはり抜本的な対策が必要だろう。「日本は民間病院が多いから、英国のようにはいかない」ではもはやすまされない。現に英国は6つのナイチンゲール病院を設置し、民間の病院から病床や医療スタッフの提供を受ける契約をしっかり結んでいる。要は本気度の問題だ。
黒木 亮
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8/19(木) 9:06配信
日刊ゲンダイDIGITAL
塩野義製薬の手代木功社長(C)日刊ゲンダイ
東京都の新型コロナウイルスの対応が「制御不能な状態」に陥り、「もはや自分の身は自分で守る行動が必要」だという。
デルタ株「芸人クラスター」の恐怖…くりぃむしちゅー上田晋也は2週間ぶり復帰も激ヤセ
河野太郎行政改革相は、8月10日までに総接種回数は1億回を超えたと発言。菅義偉首相は8月下旬までにすべての国民の4割超が2回目の接種を終えることが目標と述べている。
しかし、感染拡大は一向に収まる気配がない。都内の1日の感染者は1万人超えも予想され、ついに都内の自宅療養者は2万人を超えるなど(8月16日現在)医療提供体制は逼迫度を増している。政府は緊急事態宣言を9月12日まで延長し、対象地域を13都府県に拡大させたが、他には打つ手がない状態にまで追い込まれてきている。
こうしたなか現場の医療関係者や国民に希望を持たせてくれるのが、大手製薬会社の塩野義製薬が年内の「早期承認」を目指し開発を進める飲み薬タイプの新型コロナウイルス治療薬だ。ワクチンの開発では出遅れ、海外勢に後れを取ったが、飲み薬タイプの治療薬が実用化されれば国内はもとより世界最速の治療薬となる。
■すでに臨床試験をスタート
塩野義製薬はすでに7月22日から新型コロナ治療薬の初回投与を実施する臨床試験を開始。治験が難しい医薬品を発売後に評価を行う条件で承認する「条件付き早期承認」を年内にも厚生労働省に申請する予定だ。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が説明する。
「新治療薬はターゲットとなる新型コロナウイルスが増殖に必要な『3CLプロテアーゼ』酵素を阻害し、ウイルスの増殖を抑え込む効果があります。すでにコロナに感染したネコの実験でコロナウイルスを阻害することに成功し、人にも有意だといわれていたんです。年内の承認の可能性は十分に高いと思います」
治療薬は軽症から中等症の患者が対象で1日1回、5日継続して飲むことで体内のウイルスを除去し重症化を防ぐと期待されている。同社は実用化に向けて国内で100万~200万人分を供給できる体制を年内に整える。
「塩野義の経口治療薬と同タイプの治療薬は、米国のファイザー社も開発を進めています。ファイザー社に先行して実用化に成功すれば素晴らしいことです」(室井氏)
現在国内で承認されているコロナ治療薬はレムデシビル、デキサメタゾン、バリシチニブ、そして菅首相お勧めの抗体カクテル療法カシリビマブとイムデビマブの4種類だが、いずれも点滴薬だ。治療薬とワクチンの違い、そして経口治療薬について元埼玉社会保険病院院長の鈴木裕也氏が述べる。
「ワクチンはインフルエンザやはしかなど感染症の予防で打つ治療薬(予防注射)で、体内に侵入したウイルスから体を守る抗体を作り、免疫を獲得します。治療薬は侵入したウイルスを殺し増殖を抑える薬で、さらに飲み薬は点滴薬と違って自宅で簡単に飲める画期的な治療薬です」
医療体制逼迫の抑制に早期の実用化がまたれる。
(ジャーナリスト・木野活明)
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8/19(木) 17:00配信
Forbes JAPAN
感染力が強まった新型コロナウイルスの変異株「デルタ株」の流行により、感染者と入院者数が急増している米国で、重症患者の治療に使用されるリウマチ治療薬「トシリズマブ」が大幅に不足している。
「アクテムラ(Actemra)」の商品名(EUでは「RoActemra」)で知られるこの薬を製造・販売するスイス製薬大手ロシュの子会社、米バイオ医薬品企業のジェネンテックによると、米国内のトシリズマブの需要は、「ここ2週間だけをみても、パンデミック発生前と比べて400%増を大きく上回る水準に達している」。そのため、8月20日には在庫が底を突く可能性があるという。
ジェネンテックはさらに、次の入荷分は8月末までに米国に到着する予定であるものの、入院者数が増え続ける現在の感染状況からみて、供給不足は「少なくとも数週間から数カ月」、続く見通しだと述べている。
■WHOが使用を推奨
トシリズマブは、入院が必要になった新型コロナウイルス感染者の治療薬として、緊急使用許可を取得した数少ない薬の一つだ。ウイルスそのものを標的とするのではなく、免疫の過剰な働きによる炎症反応を抑える目的で使用される。
世界保健機関(WHO)は今年6月、トシリズマブは人工呼吸器やエクモ(ECMO、体外式膜型人工肺)などが必要になった重症患者の死亡リスクを低減させるとして、投与を推奨すると表明した。
だが、これまでに実施された臨床試験の結果にばらつきがあることから、今のところ使用を正式に承認した国はなく、いずれも緊急使用許可にとどめている。
■増産も供給は追い付かず
WHOは8月18日、低・中所得国の感染症予防・治療を支援する国際機関、ユニットエイド(UNITAID)と共同声明を発表。デルタ株による感染拡大によって入院者数が急増する中、「トシリズマブが世界的に不足している」と述べ、ロシュに対し、トシリズマブの製造に必要な技術やノウハウを広く共有することを求めている。
WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長は、ロシュは数が限られたこの薬について、「すべての国に公平に供給されることを保証する必要がある」と主張。供給が追いつかない状況の中、同社には「さらなる対応」が必要だと訴えた。
ロシュは16日の発表文で、パンデミックの発生以降、世界的な需要に対応するため、トシリズマブの生産拡大を図ってきたものの、今後「数週間から数カ月」にわたって世界的に供給が不足する見通しだと警告。同時に、同社(そしてトシリズマブに関連する特許権を保有する中外製薬)は、低・中所得国での製造を他社に認める考えがないことを明確にしている。
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8/22(日) 9:20配信
ニュースイッチ
SpO2はコロナ患者の重症化の目安となる
新型コロナウイルス感染拡大による自宅療養患者の急増に伴い、動脈中の酸素飽和度(SpO2)を測定するパルスオキシメーターの供給が追いつかない事態となっている。コニカミノルタ、小池メディカル(東京都江戸川区)、日本精密測器(群馬県渋川市)などは、増産や拡販に対応するものの、前例のない需要急増がいつまで続くか読み切れず、さらなる設備投資や増員には二の足を踏んでいる状況だ。各社とも難しい判断に迫られている。
コロナ「飲み薬」開発急ぐ。オンコリスバイオファーマ社長の展望
コニカミノルタは4月から段階的に生産能力を高め、6月からはコロナ禍前の約20倍となる月産数万台を生産している。8月上旬に数万台レベルの注文が自治体からあり、在庫がほとんどない状況となった。9月も引き続き同程度の生産を継続する予定だ。工場では基板実装の工程で24時間体制を取っている。
国内シェア首位の日本精密測器は設備強化や増員をし、本社工場の生産能力を2020年比約1・5倍まで高めた。コロナ禍前の1・5倍程度の注文がある状態だが、マイコンをはじめとする半導体が不足し、汎用品で代替している。製造原価が上昇したが、価格は据え置いた。
オムロンヘルスケア(京都府向日市)、小池メディカルは中国メーカーがOEM(相手先ブランド)供給する。オムロンヘルスケアでは、4月から計画比約2倍の注文が続いている。小池メディカルは8月以降、コロナ禍前に比べて注文が約5倍に急増。1・5―2カ月分程度の在庫を確保してきたが、在庫がほとんどない状況となった。
パルスオキシメーターの確保を進める東京都は約7万台保有し、そのうち既に約4万台を区市町村などに貸し出している。墨田区は約900台を確保。約400台を住民に貸し出しており、今後も確保を続ける予定だ。
厚生労働省によると、自宅療養患者は11日の段階で全国に約7万4000人いるとしている。新規感染者のピークはいまだ見えておらず、今後もパルスオキシメーターの需要が高まることが予想される。
各社とも在庫がなく需要に対応しきれていない状況だが、需要の先行きが読めないことや半導体不足などから、さらなる設備の増強、増員には消極的な姿勢。品薄感は今後も継続しそうだ。
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和也は何とか大学を卒業できた。
先輩の鈴木治朗は2年連続、卒業論文を書かずに留年となった。
大学院に進みたかった和也は、母親の信子に反対されて諦める。
「大学院!ふざけるんじゃないよ。父さんは会社を首になって、今はペンキ屋の手伝いだよ。我が家はね!経済的に余裕、全くないからね!」和也は子どもの頃から母親の金切り声とヒステリーにうんざりしている。
幼児時に母親から折檻を受けたことがトラウマにもなっていた。
「そんなに、叩く、蹴るでは和ちゃん死んじゃうよ」隣の金子婆さんが止めに入る。
大学の4年間、一度のバイトもせずに先輩の鈴木の世話になってきた。
酒を飲まない二人は、喫茶店で文学談義に明け暮れる。
親から小遣いなどもらえない和也は、先輩に昼飯代も出してもらっていた。
「金は天下の回りもの。卑屈になるな」鈴木の口癖だった。
「そうですか」
「そうだ。人生には金では解決できない深淵がある」
ドストエフスキーの信奉者である鈴木は、深淵の意味を語る。
1849年(日本では幕末・嘉永二年)12月22日は、作家のフョードル・ドストエフスキーが銃殺直前に特赦を受けた日だ。
銃殺直前に命を救われたドストエフスキー は、死の深淵を覗き、そして大作家となる。
「我々は、高等遊民でゆこう」鈴木はパイプを口にくわえる。
「高等遊民ですか?」和也には遠い存在に想われた。
鈴木の父親は東大の法学部を出た弁護士で、国会議員だった。
大学を卒業するのに、和也の就職先まだ決まっていなかった。
謝恩会は赤坂のホテルで挙行された。
大学院に進んだ松浦浩平と和也が惚れていた加藤のぞみたち4人が受付をしていた。
式次第を微笑みながら手渡す、着物姿ののぞみの姿は絵になっている。
惚れ直す思いがする。
和也はライバルの小松崎大輔がのぞみと既に婚約していることを知らなかった。
1年後、松浦浩平がのぞみの結婚式に招かれたとハガキを寄こし、大きなショックを受ける。
二人が交際していたことを和也は、全く認知していなかったのだ。
高等遊民(こうとうゆうみん)とは、日本で明治時代から昭和初期の近代戦前期にかけて多く使われた言葉であり、大学等の高等教育機関で教育を受け卒業しながらも、経済的に不自由がないため、官吏や会社員などになって労働に従事することなく、読書などをして過ごしている人のこと。
概要[編集]
閲覧できる範囲では『読売新聞』1903年9月25日の「官吏学校を設立すべし」での論説が、高等遊民に触れられている最も古い資料である。
また、一時期は上級学校への入学や上級学校卒業後の就職が叶わなかった者が高等遊民となり、高等知識を持った彼等が自然主義、社会主義、無政府主義などの危険思想に感化され、それらが社会問題に繋がると考えられていた。
高等遊民はなんら生産的な活動をせず、ただ日々を雅やかに過ごしたり、学問の延長として己の興味のある分野(趣味の活動を含む)を追い求めていたりした。夏目漱石が作中にしばしば用い、『それから』の長井代助、および『こゝろ』の先生、川端康成の『雪国』の主人公のように、しばしば文学のテーマとしても取り上げられた。
石川啄木は、旧制中学校卒業後に立身出世がかなわず父兄の財産を食い潰して無駄話を事業として生活している者を遊民としていた。
最終的に昭和初期満州事変・日中戦争へと続く対外戦争の中で起きた軍需景気により、就職難が解消し、国家総動員体制の元で何らかの形で戦争へ動員され、高等遊民問題は解消に向かっていった。
kotoyumin
高等遊民
明治から昭和初期にかけてよく使われていた言葉だ。高等教育を受けながらも職につかず、読書などをして過ごす人のことだ。
漱石の『それから』における長井代助、『こころ』における先生などが、その代表例だ。
高等遊民は漱石の造語じゃない
漱石の中で高等遊民という言葉が使われたのは『彼岸過迄』だけ
高等遊民は実業家よりも家庭的
芥川龍之介はこのように言ってます。
ところが、高等遊民という言葉は、漱石が作った造語ではありません。
漱石以前に、社会問題として、高等遊民という存在が取り上げられたのです。
それが明治44年頃。1911年です。
明治後期に、高等教育を受けても、適当な働き場所がなく、失職困窮している人の社会問題として高等遊民があった。(中略)
糊口(ここう)のために奔走することなくもっぱら自己の知性教養を高めることができる境遇にいる人。精神的貴族。
『夏目漱石必携』より
夏目漱石は自分の作品の中で高等遊民という言葉を使ったのはたった1つだけです。それが『彼岸過迄』に登場する松本恒三に対してだけです。
漱石が『彼岸過迄』を書き始めたのは、明治44年の暮れ。
作品の舞台設定は、明治44年の秋~翌年の春といった数か月の間です。
松本「……田口が好んで人に会うのはなぜだと云って御覧。田口は世の中に求めるところのある人だからです。つまり僕のような高等遊民こうとうゆうみんでないからです。いくら他ひとの感情を害したって、困りゃしないという余裕がないからです」
敬太郎「実は田口さんからは何にも伺がわずに参ったのですが、今御使いになった高等遊民という言葉は本当の意味で御用いなのですか」
松本「文字通りの意味で僕は遊民ですよ。なぜ」
夏目漱石『彼岸過迄』より
「高等遊民続出の傾向は政府当局の最も恐れるところ」
「いやしくも高等教育を受けた相当の紳士が、単に職業なきの故を以て危険人物の代名詞とみなされる高等遊民の名をもって呼ばれることは、耐えがたき1つの侮辱であろう」
「危険人物の代名詞」とのこと。
こんな風にも、見なされていたんですね。
自分で高等遊民だと名乗るものに会ったのはこれが始めてではあるが、松本の風采ふうさいなり態度なりが、いかにもそう云う階級の代表者らしい感じを、少し不意を打たれた気味の敬太郎に投げ込んだのは事実であった。
「失礼ながら御家族は大勢でいらっしゃいますか」
敬太郎は自みずから高等遊民と称する人に対して、どういう訳かまずこういう問がかけて見たかった。
すると松本は「ええ子供がたくさんいます」と答えて、敬太郎の忘れかかっていたパイプからぱっと煙を出した。
「奥さんは……」
「妻さいは無論います。なぜですか」
敬太郎は取り返しのつかない愚ぐな問を出して、始末に行かなくなったのを後悔した。相手がそれほど感情を害した様子を見せないにしろ、不思議そうに自分の顔を眺めて、解決を予期している以上は、何とか云わなければすまない場合になった。
「あなたのような方が、普通の人間と同じように、家庭的に暮して行く事ができるかと思ってちょっと伺ったまでです」
「僕が家庭的に……。なぜ。高等遊民だからですか」
「そう云う訳でも無いんですが、何だかそんな心持がしたからちょっと伺がったのです」
「高等遊民は田口などよりも家庭的なものですよ」
・高等遊民=家庭的に暮らせない
というのが敬太郎のイメージ。これは私もあなたも同じイメージではないですか?
それに対して、高等遊民である松本は、「高等遊民は田口などよりも家庭的」と答えます。
田口とは、実業家です。
イワン・セルゲーエヴィチ・ツルゲーネフ1818年11月9日(ユリウス暦:10月28日) - 1883年9月3日(ユリウス暦:8月22日))は、フョードル・ドストエフスキー、レフ・トルストイと並んで、19世紀ロシア文学を代表する文豪である。ロシア帝国の貴族。
ロシア中部オリョールに、地主貴族の家庭の次男として生まれる。
15歳でモスクワ大学教育学部に入学、1年後、ペテルブルク大学哲学部に転じる。1838年から1841年までベルリン大学で哲学や古典語を学ぶ。1843年、内務省に職を得るが翌年に辞す。1842年、批評家・ベリンスキーに会い、以後、親交を続けた。
1843年、叙事詩『パラーシャ』(露: Параша)を発表。
その年、夫と子のあるオペラ歌手、ポーリーヌ・ガルシア=ヴィアルドに一目惚れし、彼女を追ってパリに移り住んだ。
それ以後、西欧とロシアを往復する生活が終生続いた。
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イリーナ・クプチェンコ (出演
内容(「キネマ旬報社」データベースより)
『暴走機関車』などのハリウッド映画も手掛けたアンドレイ・ミハルコフ=コンチャロフスキー監督が、ツルゲーネフの代表作を映画化したラブロマンス。
19世紀中葉のロシア貴族社会を背景に、理想に燃えながら夢破れるインテリ貴族の悲劇を描く。
内容(「Oricon」データベースより)
イワン・ツルゲーネフの代表作を映画化。“愛されるよりも愛したかったのです…”清楚な乙女の哀しい愛の物語。
イリーナ・クプチェンコの、ロシアの大地の精ともいうべき無辜な美しさ・・・
人生に疲れ、くたびれてはいるが内面には「純粋さ」を大切に抱えこみ、生きる希望の欠落から「なすすべも無く傷ついてゆく」貴族の男。
無辜な精神と、虚無の精神の邂逅。
画面は、すべてがクプチェンコの可憐な魅力を引き出すためにあるのかと思わせるほど、ヒロインの美しさが脳裡に残る。
心の中の思いを抑えて 静かに歌うクプチェンコの歌声も、永く心を捉えて離れない。
むかしNHKを録画したテープを擦り切れるまで観た宝物のような映画です。
一生パッケージソフトでお目にかかることなんてあるまいと思っていたのに。
よりによって5.1チャンネルにリマスターされ発売されるなんて…
ありがとう神様!IVC!(涙)
廃墟となった庭に戻ってきた
妻に裏切られ生ける屍のような男。
そんな彼をすこしずつ故郷の木漏れ陽が癒していきます。
青いワンピースで戯れる春の乙女とともに
再びめぐってきた青春の喜びと悲しみを歌うオフチンニコフの旋律!
ロシア文学の典型・余計者の心象風景を
これほど印象的にとらえた映画をほかに知りません。
19世紀デカブリストの乱後に現れたという彼らの虚しさにはどこか
この時代の学生運動に敗れた若者像も重なって見えてきます。
時間が止まったようなピクニック場面の色彩感。
恋をささやく夜明けのバルコニーから滴り落ちる水の音。
モーツァルトのソナタを遠くに聞きながら
息を潜めて切り出される決別の言葉。
農民の子を自負しながらも耕したこともない土地の泥にまみれ
妻に三行半をつきつけられながら
それでもただどうしようもなくスープを貪る男の情けなさ。
すべての夢が覚める残酷で美しいラストは何度観ても苦しくなります。
併録のインタヴューで監督が「どこかでヴィスコンティを意識していた」
なんて語っているのも興味津々。
タルコフスキーやミハルコフのみずみずしさを愛している貴方!
なかなか観る機会のない映画ですが即買いです!!!!
内容(「BOOK」データベースより)
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
本名、島地純。1926年東京生まれ。東京外国語大学ロシア語学科卒。
ロシアの文豪チェーホフが亡くなる年まで大切に使っていた秘密手帳の中の一文です。
この手帳には、日々の出来事への感想や、戯曲や小説の材料となるアイデア、隣人や親せきへのグチなど、さまざまな事柄がつづられており、いわゆる作家のネタ帳のようなものですね。
彼の死後、妻によって大切に保管されていた手帳は、日記や覚書などと共に『チェーホフの手帖』として一冊の本にまとめられています。
身長190センチを超える長身に、ちょっとアンニュイなタレ目の美形、さらに医者の頭脳と作家のユーモアを兼ね備えたチェーホフは、ロシア文学史上でも指折りのイケメンモテ作家としてひそかに有名なんですよ。
劇作家として成功し、文壇の寵児となってからは、道を歩くだけで花束が降ってきたり、女性たちに囲まれるなど、いわばアイドル的な人気があったと自ら書きのこしています。
青年時代からモテモテで女性に不自由しなかったチェーホフは、女性について非常にシビアな目を持っていました。特にこの秘密手帳では、女性についても恋愛についても、歯に衣着せぬストレートさで批評しています。
最近では『干物女』という言葉もあるように、男性の目を気にしない女性は、同性から見ても魅力的とはいいがたい存在ですよね。
男性と交際していなくてもオシャレできれいな人はいますが、恋する女性の艶めく美しさにはやはりかなわないもの。
実際に、恋をすると女性ホルモンが分泌され、髪がツヤツヤになったり肌がきれいになるとも言われています。
男性もまた女性の目を気にすることで、身だしなみに気を使ったり、スマートにふるまおうとします。一昔前は、女性に知的に見られたいがために、必死で哲学書や詩を読んだりする男性も結構いたんですよ。
チェーホフまでとはいかずとも、異性との交際によってさまざまな経験をすることで、人としての魅力が増すのは間違いありませんから、より豊かで素敵な人生を送るためにもいくつになっても恋する気持ちを忘れずにいたいですね!
恋愛格言師匠 チェーホフ
今週の恋愛格言をのこしたのは、ロシアを代表する劇作家で短編小説家の文豪、アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフです。
ロシアの南西部、黒海にほど近いタガンログの貧しい家に生まれましたが、優秀だったチェーホフはモスクワ大学医学部に学び、医師となりました。
学業のかたわら短編ユーモア小説家として作家活動を開始。1887年に発表された長編戯曲『イワーノフ』で一気に文壇の寵児となると、『かもめ』、『三人姉妹』、『桜の園』といった代表作を次々に生み出しました。
作品に出てくるモテ男はチェーホフ自身の分身ともいわれ、実際に本人も信じられないくらいモテたとか。
人生を通してずっとモテ期だったようで、1904年にはモスクワ芸術座で『三人姉妹』が舞台化され、次女マーシャ役を演じた女優オリガと結婚しています。
うらやましい人生ですね。
8/21(土) 23:10配信
Nippon News Network(NNN)
新型コロナウイルスの深刻な感染拡大が続く東京都内で、新たに5074人の感染が確認されました。
都内の新たな感染者は10歳未満から90代までの5074人で、4日連続5000人を超えました。
一緒に食事をした親族が感染し、10歳未満の女の子の感染が判明したり、10代の男性が友人5人と会って全員感染したりと、お盆時期や感染力の強い変異株にまつわる感染例がみられるということです。
重症者は20日より3人減って270人でした。
また、30代から80代の6人の方の死亡が確認されましたが、全員ワクチンは接種していなかったということです。
このうち30代男性は、自宅で心肺停止となって搬送先の病院で死亡し、その後の検査で感染が判明しました。肥満やぜんそくの基礎疾患があったということです。
8/21(土) 11:21配信
女性自身
《政治が重症・中等症ベッドを増やすよう医療界に「命令」を出し、従わなければ強烈な制裁を加えるしかない。》
【写真あり】防護服を着たスタッフが動き回る大阪暁明館病院の現場
元大阪府知事で弁護士の橋下徹氏(52)が8月18日、こんなツイートをしたことで批判を集めている。現在、新型コロナウイルスの感染爆発で、コロナ患者の重症・中等症の病床が不足している。橋下氏は、医療界の協力不足が原因だとして、政府が医療施設に病床提供の命令を出し、従わなかった場合は“強烈な制裁”を加えるべきだと主張しているのだ。
だが、医師で小説家の知念実希人氏は橋下氏のツイッターを引用したうえで、こう反論した。
《制裁!!?? 1年半、必死にこのスペイン風邪にも匹敵するウイルスと戦ってきた医療従事者に対して『制裁』を加えるとおっしゃるのですか!? そして、いつから病気はコロナだけになったのでしょう? コロナ病棟を増やすということは、他の病棟を削るということですよ。》
さらに知念氏は、やはり医療界への病床提供の強制と罰則を求める橋下氏の別のツイートを引用したうえで、こうツイートした。
《この辺りの意見って『COVID19を診ていない病院はサボっている』って妄想から来るんだろうな。違いますよ。COVID19対応病院で診療できなくなった、他の疾患の患者さんの受け皿になっているんですよ。悪性腫瘍、外傷、循環器疾患、代謝疾患、自己免疫疾患etcetc 病気はコロナだけじゃないんだよ。》
■辛辣なカウンター「だったら医者になったら?」
また、橋下氏が選んだ《制裁》という言葉は、大きな反発を招いたようだ。医師や看護師など医療従事者のものと思われるアカウントからはこんな批判が出ている。
《なぜ?制裁? 重症が見れる規模の病院の医療従事者のほとんどはコロナが始まった去年3月くらいからずっと病院側から行動制限されて働いています。ずっとです。これ以上何をしろと。あと素人目からはわからないと思いますが重症例は長年訓練された医師でしかまともな対応はできてません。》
《なんで医療業界頑張って仕事してるのに、プライベートも制限ばかりなのに「強烈な制裁」って謎な制裁されなきゃいけないの?》
現在、橋下氏の当該ツイートには、およそ1800のリプライと6000以上の引用ツイートが行われているが、多数が橋下氏の意見を批判するものだ。
なかには、府知事時代の橋下氏が高校生との面談で、府政について苦言を呈した生徒に対し“あなたが政治家になってそういう活動をしろ”と切り捨てたことを引き合いにだして、《だったら医者になったら?》や《病院経営者になれよ》と皮肉るツイートも。
いずれにせよ、“医療界への制裁”という橋下氏の主張は広く受け入れられたとは言い難いようだ。
8/21(土) 19:30配信
テレビ大阪ニュース
大阪府は21日、新たに2556人が新型コロナウイルスに感染したと発表しました。1日の感染者数は4日連続2000人を超えました。年代別で最も多いのが20代の793人、次いで30代の430人、10代の398人です。また亡くなった人は2人、重症者の患者は新たに基礎疾患のない30代男性2人を含む計175人で、重症病床使用率は29.8%。軽症・中等症の患者は計1844人で病床使用率は72.4%となっています。自宅療養者は13107人、また未就学児97人、就学児62人の感染も確認されています。
4日連続2000人超 感染爆発の大阪…
吉村知事は20日、自身のツイッターに「重症化予防を目指し、様々な取組みをしてます。命を守る最後の砦である重症病床が足りなくなれば、救える命が救えなくなります」と投稿。
また「全重症病床の使用率が50%を越えれば、大規模商業施設やイベント等、大阪における都心の動きを止めます。やりたくありません」と記し、重症者の増加傾向に危機感を示すとともに、感染対策の徹底を訴えています。
TVOテレビ大阪
8/21(土) 20:22配信
毎日新聞
国内の新型コロナウイルス感染者(8月21日現在)
新型コロナウイルスの感染者は21日、全国で新たに2万5492人確認された。過去最多だった20日(2万5876人)に次ぐ多さ。重症者は前日から72人増えて1888人に達し、9日連続で最多を更新した。死者は34人。
【知っておきたい】新型コロナ、緊急性の高い症状は
山形(69人)▽群馬(325人)▽岐阜(345人)▽愛知(1445人)▽三重(427人)▽広島(381人)▽高知(87人)▽大分(215人)▽宮崎(158人)――の9県で過去最多の感染者が確認された。
宮城、茨城、静岡、兵庫、福岡、熊本の各県で過去の感染者数が修正された。【まとめ・千脇康平】