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春が来た

待たれる、寄付の税制議論 (2)

2010年03月09日 | 社会・経済

シアトル滞在中、ここに本部を置く、アメリカ西海岸最古の州立大学で、北西部最大の規模を誇る、ワシントン大学を、2度ほど訪問したことがある。 校舎や教室、その他の施設 いたるところに、マイクロソフト会長 ビル・ゲイツ氏 の名前が彫られた、さりげない金属板を目にする。 彼と彼の財団は、この大学にとって最大の支援者で、ネーム版の張られたところが、彼の寄付で作られた施設。 互いの結びつきは、父親がここの卒業生なのと、マイケルソフトの本社が同じ州のレドモンド市に在り、優秀な卒業生を、この大学から多く採用してるから。 因みにシアトルは彼の生誕地で、広大な住居が、郊外の湖畔に建つ。

「アメリカという国は、寄付の貰い方が上手い」 これが私の印象。 ビルゲイツならずとも、寄付したくなるような気分にさせるのが、分かるような気がする。 ここ数年のニュースでも、ビル・ゲイツ氏や投資家のウオーレン・バフェット氏が、数兆円規模のお金を寄付すると発表して、世界中を驚かせた。 アメリカでは南北戦争後から、富を蓄積した資産家達が私財を提供し、学校や美術館を作り、 またカーネギー、ロックフェラー、フオードなどの助成財団(ファンデーション)が、次々と設立された。 

またメトロポリタン美術館や、ハーバード大学も、NPO(特定非営利活動法人)によって運営されている。 そうした歴史的背景や、寄付文化が、富の偏在や収入格差に対する、大衆の不満を和らげる、いわば緩衝材になっているように思う。 年間所得が10万ドル(約1000万円)以上の人の9割が、NPOなどに寄付をしているアメリカ。 これに対し、我が国では年収5000万程度の人でも、約10%しかしてないのが現状。

金持ちから沢山の税金を納めてもらい、それを貧困所帯や福祉施設などに役立て、貧富の差を小さくする仕組みを、経済用語で 「所得の再配分」 という。 日本ではこの運用を、国が中心となって行ってきた。 つまりどこからお金を集め、どこに分け与えるか、そのほとんどすべてを、歴史的に国が決めてきた。 しかしアメリカの納税者は、すべてが国任せでは、納税の実感も喜びも湧かない。 せめて所得の一部だけでも、「使い道を自分で決めたい」 そうした思いの延長先に寄付行為があった。 つまり、国を経由する「間接納税」だけでなく、個人の意思や考えを活かせる 「直接納税」 への自由思想が、システムの根底にある。

団体や学校だけでなく、宗教や科学、絵画や音楽、さらには映画といった芸術分野まで幅広い寄付が認められているアメリカ。 賛否両論あるだろうが、まず議論してみてはどうだろうか?

 


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1 コメント

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Unknown (ばりこ)
2010-03-09 17:07:40
ワシントンD・Cは東にあるけれど、ワシントン州は西海岸にあるんですよね。昨年、姪が結婚した相手はその週の出身で、写真を見せてもらいましたが、整然としたきれいな町並みでした。
成熟社会のような面もあるけれど、寄付の土壌については、遅れているというか日本はまだ未熟なのですね。
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