明るくなった機内ー夜明けー海にそびえる断崖。 悪天候の中、暗い海を長時間飛び続けてきたパイロットにとって、陸地を目にするのは大きな喜びであることに変わりはない。 機体が見えてきて夜の明けたことが分かり、やがて霧の帯に取り巻かれたニューファンドランドの岸壁が見える。 過酷な天候や海をまんまと出し抜いた幸せな罪の意識を感じる。 夜と嵐はベガ・ガルを捕まえ、ベリルは19時間もの計器飛行を強いられた。 分度器と地図とコンパスを使って新たな進路を設定しながら、コンパスが指す磁極と実際の方角を修正する。
しばらくすればニューブラウンズウイック、それからメイン州、そしてニューヨーク、ここまで来れば大丈夫。 太陽の光と眼下に見える海が美しい。 ここから600kmの海を越えればその先は陸でケープブレトン島だ。 ベガ・ガルは追い風に乗り、最後のタンクの燃料は4分の3以上残っている。 ベリルの目に映る世界は、新しいまだ人の手に触れていない世界のように輝いている。 彼女がもう少し賢明だったら、こんな瞬間が長くは続かないとわかったはずだ・・・エンジンが振動し始めた。 エンジンは停止し、プスプスと音を立て、再び始動するかと思うと咳き込むような音を立て、海に向かって黒い煙を吐き出した。
原因は多分エアロックだ!それしかない、空タンクのコックを開閉したら解消するかもしれない。 コックの小さなつまみは鋭利な金属製の留め金で、何十回も開閉するうち手から流れる血は地図や服の上に点々と滴ったが、事態は好転しない。 エンジンをなだめながら惰性飛行を続けた。 油圧や油温は正常値を示し、マグネットも無事だったが高度は徐々に下がり、エンジンが息を吹き返すたびに何とか高度を稼いだ。 ついに陸が見える!視界は良好、数十キロ先の陸地もはっきり見える。 進路が正しければあれはケープブレトン島だ・・・やっと陸地の上に来た。 地図をひっつかみ現在位置を確認すると、シドニー空港まで12分、そこで着陸して修理すれば続行できる。
またエンジンが止まって滑空し始める。 でももう気にならない、これまでどおり息を吹き返すに決まっている。 だがエンジンは止まったままだった。 沈黙のままベガ・ガル地上に向かう、真っ黒な大地の上に大きな岩が点在し、ベリルはバンク、ターン、サイドスリップと、機を操りながら岩をかわす。 タイヤが地面に接触し、沈み込むのを感じる。 機首が泥の中に突っ込み、彼女はつんのめってフロントグラスに頭から突っ込む。 ガラスの割れる音がし、顔に血が流れるのがわかる 。 よろめきながら飛行機を出て、真っ先に時計を見る。 21時間25分。 大西洋を横断し、イギリスのアビンドンから名も無い泥沼へ・・・無着陸で。
大西洋横断のあとベリルはベガ・ガルを買い取る金がなかったので、J・Cは富豪のインド人に売った。 そのインド人は飛行機の手入れについては無知だった。 彼はベガ・ガルをダルエスサラームの空港の吹き晒しに放置したのでエンジンが錆びつき、翼の塗料は剥がれ、多分ベリル以外の誰からも忘れられた。 今頃は海中に葬られてしまったかもしれない。 ベガ・ガルはべリルを裏切らなかった。 飛行のあと機体を調べると、ニューファンドランド沖のどこかで、最後の燃料タンクの吸気孔に氷が入り込み、キャブレターへのガソリンの流れを阻害していたことがわかった。 そんなハンディーを負ったベガ・ガルが何故あんなに長時間飛び続けてくれたのか?ベリルは不思議でならなかった。
しばらくすればニューブラウンズウイック、それからメイン州、そしてニューヨーク、ここまで来れば大丈夫。 太陽の光と眼下に見える海が美しい。 ここから600kmの海を越えればその先は陸でケープブレトン島だ。 ベガ・ガルは追い風に乗り、最後のタンクの燃料は4分の3以上残っている。 ベリルの目に映る世界は、新しいまだ人の手に触れていない世界のように輝いている。 彼女がもう少し賢明だったら、こんな瞬間が長くは続かないとわかったはずだ・・・エンジンが振動し始めた。 エンジンは停止し、プスプスと音を立て、再び始動するかと思うと咳き込むような音を立て、海に向かって黒い煙を吐き出した。
原因は多分エアロックだ!それしかない、空タンクのコックを開閉したら解消するかもしれない。 コックの小さなつまみは鋭利な金属製の留め金で、何十回も開閉するうち手から流れる血は地図や服の上に点々と滴ったが、事態は好転しない。 エンジンをなだめながら惰性飛行を続けた。 油圧や油温は正常値を示し、マグネットも無事だったが高度は徐々に下がり、エンジンが息を吹き返すたびに何とか高度を稼いだ。 ついに陸が見える!視界は良好、数十キロ先の陸地もはっきり見える。 進路が正しければあれはケープブレトン島だ・・・やっと陸地の上に来た。 地図をひっつかみ現在位置を確認すると、シドニー空港まで12分、そこで着陸して修理すれば続行できる。
またエンジンが止まって滑空し始める。 でももう気にならない、これまでどおり息を吹き返すに決まっている。 だがエンジンは止まったままだった。 沈黙のままベガ・ガル地上に向かう、真っ黒な大地の上に大きな岩が点在し、ベリルはバンク、ターン、サイドスリップと、機を操りながら岩をかわす。 タイヤが地面に接触し、沈み込むのを感じる。 機首が泥の中に突っ込み、彼女はつんのめってフロントグラスに頭から突っ込む。 ガラスの割れる音がし、顔に血が流れるのがわかる 。 よろめきながら飛行機を出て、真っ先に時計を見る。 21時間25分。 大西洋を横断し、イギリスのアビンドンから名も無い泥沼へ・・・無着陸で。
大西洋横断のあとベリルはベガ・ガルを買い取る金がなかったので、J・Cは富豪のインド人に売った。 そのインド人は飛行機の手入れについては無知だった。 彼はベガ・ガルをダルエスサラームの空港の吹き晒しに放置したのでエンジンが錆びつき、翼の塗料は剥がれ、多分ベリル以外の誰からも忘れられた。 今頃は海中に葬られてしまったかもしれない。 ベガ・ガルはべリルを裏切らなかった。 飛行のあと機体を調べると、ニューファンドランド沖のどこかで、最後の燃料タンクの吸気孔に氷が入り込み、キャブレターへのガソリンの流れを阻害していたことがわかった。 そんなハンディーを負ったベガ・ガルが何故あんなに長時間飛び続けてくれたのか?ベリルは不思議でならなかった。