カキぴー

春が来た

「続・カサブランカ」と、ナチス高官暗殺事件

2013年09月23日 | 映画・小説
映画[「カサブランカ」の脚本は、クランクインと同時に7人の脚本家チームによって書き始められた。 仕上がった順に片っ端から撮影していくという手法は、まさに自動車組立工場の流れ量産作業、しかも話の結末は最盤まで決まらず、仕方なくふた通りの筋書きで撮り終えてからその一つを採用した。 つまりワーナーブラザース・スタジオから一歩も出ることなく全てセットで完成させた作品は、1942年11月の初公開に漕ぎつけたが大方の予想を裏切り、3つのアカデミー賞を受賞、さらに文化的・歴史的・芸術的に重要なフィルムを保存する「アメリカ国立フィルム登録簿」の、最初にセレクトれた25本の1本に選ばれる。

アメリカ人がいちばん好きな映画は「カサブランカ」で、一番好きな男優はハンフリーボガードだと、作家の馬場啓一氏は言う。 とうぜん2匹目のドジョウを狙って、テレビシリーズが2本作られたが、それぞれ7ヶ月と3週間の短命で終わっている。 そして1998年に小説として蘇ったのが、マイクル・ウオルシュ著「As Time  Goes B y」 (邦訳 もうひとつの「カサブランカ」。 徹底して映画を材料源として採用、台本から台詞を選び抜いて小説中にはめ込み、読者はリックにハンフリー・ボガード、イルザにイングリッド・バーグマン、ラズロにポール・ヘンリード、サムにドゥーリー・ウイルソンを思い描きながら引き込まれていく。

さらに読者の耳には主題曲の「時の過ぎ行くままに」が知らず知らずに流れている。 映画のラスト、ラズロ夫妻を乗せた旅客機は、空港の深い夜霧の中に消えていったが、イルザはサムに一通の手紙を託す。 「かけがえのないリック、この手紙を読んでいるということは、私がラズロと脱出したということでしょう。 私はパリのあとで考えました。 あなたとは二度とこんな別れ方をしてはいけないと・・・女たちは生涯をかけて愛するひとりの男を探します。 私はふたり見つけたのです・・・リスボンではホテル・アビスに落ち着きます。その先は神様だけがご存知です。 できればぜひ来てください・・・あなたを必要としているのです」  イルザ

ラズロの最終目的は、ユダヤ人種抹殺計画の実質的推進者で、その冷酷さから「金髪の野獣」としてユダヤ人から最も恨まれていた「ラインハルト・ハイドリヒ」の暗殺。 リックは最後にチェコのプラハまでイルザを追って、盟友ルノー署長とこの暗殺計画に加担する。 在英チェコ亡命政府から選抜された10人の兵士は、英国軍特殊工作部から暗殺に必要な訓練を受け、英軍機からのパラシュート降下でチェコに降り立ち、プラハ市内に入った。 1942年5月27日午前10時半、護衛車両をつけず、拳銃を携帯しただけの親衛隊曹長が運転するメルセデスのオープンカーに手榴弾が投げ込まれ、ハイドリヒも拳銃で応戦。

爆発で負傷したハイドリヒは病院に搬送されたが、腹部と肋骨部に車のスプリングと金属片が食い込んでおり、6月4日4時半死去。 その後の報復作戦はすざまじく、落下傘兵は2時間の銃撃戦のあと自決、9月1日までの間にチェコ人だけでも3188人が拘束され、1357人が死刑判決を受けた。 さて続編の結末だがラズロとルノーは戦闘で死亡、松葉つえのリックとイルザはふたたびカサブランカ空港に降り立つ。 サムのピアノは片隅に押しやられほこりをかぶっているが無傷、イルザはまばゆいばかりの微笑みを浮かべて言う 「まだ覚えてるでしょ、ね?だったら演奏してサム、『時の過ぎゆくままに』」を・・・・。