カキぴー

春が来た

カルメン故郷に帰る 島で出逢った「チョッといい女」

2014年04月21日 | 旅行記
東京に春の嵐が吹き荒れた3月中旬の午後、キャプテンIさんの愛機にライセンサーのKさんと僕が同乗し、仙台空港を離陸して90分後、強風に翻弄されながら伊豆の新島空港に着陸した。 キャプテンは3・11の震災で愛機が水没全壊してから3年、以前と同じ「PA-46-マリブー」を入手し、今日が入念に整備してからの初フライト。 6人乗りの同機は与圧式で高度8000mまで上昇でき、時速400㎞で6時間のフライトが可能な高性能機、自家用パイロットにとって、いつかは・・・・的存在。

出迎えのワゴンで着いた宿は、十数年前まで頻繁に通った村営の温泉ロッジ。 さっそく浴衣に着かえて、太平洋を見下ろす高台にある村営の温泉まで5分ほど歩く。 目の前にに式根島、遥か遠くに神津島を望む露天風呂に浸たりながら落日を拝み、宿に帰ると夕食が待ち遠しい。 さて久しぶりのレストランはさま変わりしており、島焼酎と並んで有名日本酒がずらり並び、「みかさ」という固有名詞までついている。 なんとなくワクワクしてきた。 そして・・・・

大皿に盛りつけられた刺身を運んできた女性を見て、三人とも一瞬沈黙。 濃い赤の長袖Tシャツに黒い細身のパンツ、髪の毛を無造作に後ろでまるめ、ひも付きの眼鏡を胸にぶら下げている。 「美人は遅れて暮れる」というが、もう孫のいる年頃だろうに垢抜けており、会話が楽しい。 島焼酎のボトルを空ける中で分かったことは、彼女はこの島で生まれ育ち、早くに上京して高級クラブの売れっ子となり、著名人との交流の中でさまざまなことを学んだようだ。

人口2700人の島にいつ・なぜ戻ったのかは聞き漏らしたが、しばらく村で居酒屋をやった後に、リスクが少なく自由度の高いここの飲食部門の経営を引き受けたようだ。 部屋に帰って伊豆七島の事情に詳しい「AOPA」の畑中紀子事務局長に情報を求めると、「彼女は聡明な有名人よ、石原前知事などとも懇意で、伊豆の島に来ると必ず立ち寄ってるみたい」。 なぜか木下恵介監督・高峰秀子主演の古い映画、「カルメン故郷に帰る」を連想し、いずれドン・ホセとのロマンスも聞いてみたいと思った。

朝食後、昨夜食べ残した刺身の煮つけと朝採りの明日葉を土産に用意し、「これから墓参りに行くので、お見送りできません」と言い残しカルメンは早々と出かけて行った。 風は昨日にも増して木々がごうごうと音を立て、海面の白うさぎが飛び跳ねており、連絡船はすべて欠航。 にもかかわらず三人は大島に降りてバラ寿司を食べることになった。 大島空港へのアプローチは予想通り断崖の真上で猛烈な下降気流に見舞われ、滑走路に叩きつけらかと思いきや、キャプテンはスロットルを巧みに操作し、見事なランディングでフライトの見せ場を締めくくった。