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春が来た

「飛行船空母・メイコン」&「搭載機・F9Cスパローホーク」

2014年06月12日 | 戦争
戦争はとてつもないものを発明する。 「メイコン」は偵察任務を目的に1931年アメリカ海軍によって計画され、グッドイヤー社で建造された「空飛ぶ航空母艦」の2号機。 金属の骨組みをアルミニウム製の外皮で覆い、浮力はヘリウムを満たしたゼラチンラテックス製気嚢15個が主役。 全長239m・全高45?・重量198トン・乗員91名・積載量72トン、8基のガソリンエンジン(560馬力)によって最高速度は140km/h。 最大の目玉は「F9C複葉戦闘機」5機の搭載が可能なこと。

1920年代アメリカが軍事目的として飛行船に着目した理由は、長大な航続距離と積載量。 遠方にある敵国基地などの周辺まで飛行船で到達し、搭載機を目標上空まで飛ばしての強硬偵察を計画していた。 飛行船の先進国ドイツが第一次世界大戦で敗戦国となり多くの賠償金を課せられると、アメリカはその一部として建設中の飛行船一隻を要求し、引き渡しを受ける。 これが「メイコン」開発の第一歩。

ところで搭載機・愛称スパローホーク(猛禽類のハイタカのこと)だが、カーチス社製で乗員1名・全長6m・全幅7m・エンジン415HP・最大速度283km/h・航続距離475km・武装2×7ー62mm機銃1基。 小型で大型飛行船の搭載に最適と評価され採用されたが、もう一つの大きな選択理由は、この複葉機が飛行船に合わせて飛ぶことのできる「低速性能」にきわめて優れていたこと。 

さてこの搭載機をどうやって離発艦させるのか? パイロットたちからトラピーズ(空中ブランコの意)と呼ばれた飛行船の係留装置に、機体の上翼の上に取り付けられたフックで吊るして船外に降ろされ、エンジン出力を上げて飛行船のスピードを上回るとフックが外れる仕組み。 着艦は飛行船との速度を合わせながら接近し、フックを係留装置の受け口に引っ掛けてエンジンを切る。 まさに空中サーカスさながらの神業だが事故はなかったという。

飛行船の最大の欠陥はタービランス(乱気流)に弱いこと。 1号機のアクロンは1933年ニューイングランド沖合でタービランスに遭遇して墜落、指揮官以下乗員73名が犠牲となった。 それから2年後、メイコンもカリフォルニア沖で大型のタービランスによって墜落、死者2名。 これで世界から注目された飛行船空母も、わずか数年で消え去った。 その後に起こる歴史的惨事が1937年の「ヒンデンブルク号爆発事故」。 これが致命傷となって華やかな飛行船の時代も、あっけなくその幕を閉じた。

  


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