東日本大震災で被災した教訓を生かし、カエデの種子をヒントにしたプロペラで、弱い風でも発電できる小型風車を福島大共生システム理工学類の島田邦雄教授(47)(流体工学)が開発した。従来のプロペラ型風車より効率がよいうえ、安価なのが特徴という。島田教授は「原発事故の影響で節電が叫ばれる中、少しでも省エネに役立ててほしい」と意気込んでいる。
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もともと紅葉狩りが趣味の島田教授は、カエデの種が落下する際、勢いよくくるくる回ることに震災前から着目、発電に利用できないか思案していた。震災では自らも福島市内の自宅で被災し、停電によって携帯電話もラジオも充電できなかったことから、カエデの動きをヒントに電力を得られる小型風車の開発に本格的に着手した。「災害時に強いエネルギー、電力を得られるものを作りたかった」と島田教授。
「カエデの種型風車 風とも」と名付けられた風車のプロペラは長さ約8センチ、厚さ約1ミリのプラスチック羽根3枚でできており、先端部を風上に向けて曲げ、回転軸に角度を付けた。これによって、同じ大きさのプロペラ型風車と比べて回転数が5倍、発電量も最大で10倍に上がり、十数時間かかっていた乾電池や携帯電話の充電がエアコンや換気扇からの吹き出す風でも数時間で可能という。しかも、地下鉄の構内やトンネルの入り口など、家庭以外のエネルギーも利用できる。製作費用も1千円からできるとあって経済的だ。
島田教授は「従来はねじっていたが、カエデの種型は平板を曲げるだけ。製作時間もあまりかからず、誰でも作れるのが特徴。しかもコンパクトなので場所を取らない」とアピール。さらに、小型のため原発周辺の放射線モニターの電源としても利用可能という。
既に今年1月に特許を出願済みで、実用化に向けた準備を進めている。
現在は直径60~70センチの試験用風車の研究を進めており、将来的には家庭用を念頭に直径1・8メートル程度まで大型化した風車を作りたいという。この風車で平均的4人家族が必要とする電力の約半分を賄うことができるようにするのが目標だ。
島田教授は「震災で苦しんでいる人たちは生計が大変。家の中で省エネができる部分を最大限に生かし、電気代を節約して家計の足しにしてもらいたい」と話している。