仙台は首都圏在住者3人が発言者 名古屋は発言者のうち4人が関東・関西在住
最終処分場を決めることができるのか。
政府は、今後のエネルギー政策について国民の声を聞くための意見聴取会に関し、電力会社の社員が意見表明することを認めないよう運営方法を改めることになった。
意見聴取会は、国の将来を左右する重要な政策に国民の声を反映させる大切な機会であり、当事者の主張を聞く場ではない。
運営の見直しは当然のことだ。しかし、なぜ当初からそうしなかったのか。「国民の声を本気で聞く気があるのか」と疑われるようでは、政策決定の正当性は確保できない。
意見聴取会は、2030年時点での原発の比率を0%、15%、20〜25%とした政府の選択肢について、それぞれを支持する国民から考えを聞くものだ。パブリックコメントの募集、議論とアンケートを組み合わせた「討論型世論調査」と並び、今回の政策決定に国民の意見を生かす有力な手段として取り入れられた。
全国11カ所で開催するが、これまでに開かれた3回のうち、仙台市では東北電力の企画部長が、名古屋市では中部電力原子力部の課長が、いずれも原発推進の立場で意見を述べた。発言者は、1会場9人に限られる。その1人が、原発推進の当事者である電力会社の幹部では、「国民の意見を聞く」という会の趣旨に反するし、公平性も疑われる。
聴取会の仕組みそのものにも疑問がある。発言者が一方的に考えを述べ、質疑も議論もない。意見はまったく集約されないが、これをどうやって政策決定に反映させるのか
事務局を務める広告代理店によると、名古屋では応募者のうち原発比率0%支持が7割弱、20〜25%は2割強で、仙台でも応募者の約7割が0%支持だった。こうした比率を見ると、発言者を各選択肢につき3人ずつとすることにも疑問が残る。
さらに、仙台では首都圏在住者3人が発言者に選ばれ、原発の必要性を訴えた。名古屋でも、発言者のうち4人が関東・関西在住だった。
全国で開催するのは、原発立地の有無などにより、地域によって見解も異なりうるという前提で、各地域の意見を聞くためだろう。より地元の声を反映させる形での運営が望ましい。
原発政策を巡っては、国主催のシンポジウムなどで「やらせ」による世論誘導がなされ、国民の不信を招いた経緯がある。今回も、政府は15%案を軸に着地点を探っているとの見方がある。反原発運動が大きな広がりを見せている背景にも、そうした政府への強い不信感があるはずだ。
意見聴取会は今後も続き、討論型世論調査も控えている。政府は国民の不信を招くことのないよう、公正性の確保に意を尽くすべきだ。