トジハジ日記

日記代わり、家族への発信用として利用させていただいてます。内容はいろいろですが登山が趣味で、公開は山行記録がメイン。

2017.6.18 北ア5月のような大雪山系

2017-07-03 17:55:16 | ブログ

白雲岳頂上に立った時、思わず旭岳方面の雪模様の美しさに二人とも感嘆の声をあげました。

2日目にトムラウシを越すことができ至極、順調だったのだが、相方の靴が。。。。。

200、300名山を達成した人は星の数ほどいるでしょうが、私の憧れである”岳人100ルート”を達成した人はほとんどいないのではないかと思う。この100ルートは5.10以上の岩登り、高度なアイスクライミング、厳冬期の高山縦走、高度な沢登りなどすべての分野で高度なレベルを要求され、今やどの山にもあふれているXX名山コレクターがいくらコレクション好きといってがんばったところで100ルート制覇は所詮無理だろう。そんな厳しい100ルートの中に、縦走の総合的なすばらしさが際立っている理由で技術的には何の問題もない黒岳からトムラウシまでの縦走が入っている。ここなら妻も付き合ってくれるだろうと思い、6月18日から22日または23日の5,6日間で黒岳から富良野岳までの縦走を計画した。残念ながら結果的にトムラウシまでとなってしまったが妻には強烈に思い出として残るに違いない山旅だった。途中で断念したその第一要因は妻の靴の破損、そして残雪の多さにある。6月の大雪山系は北アルプスの5月に匹敵するほどで残雪がとても豊富だ。特に今年は異常に多いらしく、実際に歩いてみて、この時期でもまさに北アルプスの5月並みということが理解できた。後日、トムラウシ温泉でお会いした日本山岳会のメンバーの方が”7月の山開き前の時期にトムラウシまでの縦走をする人は稀で富良野まで縦走するはほとんどおらず技術的にも難しい”とおっしゃっていたが、まさにその通りで、ルートファンティングに苦労したり、キックステップの多用を強いられたりして(アイゼンなどいらないと思って持っていかなかった)思いのほか手こずり、自分の北海道の山に対する認識の甘さを痛感させられた。しかしその反面、ハイシーズンでは経験できない達成感のある山旅になった。ただ雪山初心者の妻には大変だったに違いない。

1日目: 黒岳から白雲岳の避難小屋まで。二人分の冬用シュラフ、六日分の食料、テント、などなど生活道具はすべて自分が背負ったのでザックの重量は一年ぶりに25Kgを超え27kgだ。”今年は異常に雪が多く、前日に黒岳の登りで滑落事故がありヘリで搬送されたので十分注意するように”とロープエー関係者やリフト関係者から再三にわたり警告された。リフトを降りてすぐに雪の急斜面の黒岳の登りが始まった。夏用の軽登山靴しか無い妻は、初めての雪山登山でかなり難儀していた。まだ今の時期はスキーヤー、ボーダーが多く、遅々として進まない我々を彼らが快調に追い越していく。背にはニセイカウシュツペや天塩岳がまだ豊富な残雪で輝いていて素晴らしい眺めだ。夏のコースタイムの3倍くらいかかってようやく黒岳の頂上に達した。早くもこのペースでは白雲岳の避難小屋まで行けないのではないかと心配になったが、妻もこの斜面で少し慣れて順調にその後は歩を進めた。北海沢の登りでは旭岳から黒岳へ向かう単独の登山者が”少し前に熊が北海沢の雪の斜面を登っていきました”と言われ思わず周囲を見回した。稜線からの眺めは素晴らしくいつまで見ていても飽きない。遠く雄阿寒岳、雌阿寒岳、幌尻岳の方までよく見渡せる。途中、白雲岳に立ち寄る。白雲岳は通常、小泉岳との鞍部から登るのだが、かなり遠回りになるので、そこよりかなり手前から雪の斜面を利用して直接頂上へ向かった(ここでも妻にキックステップで苦労をかけてしまった)。這松帯と雪の急斜面を苦労して登った化雲岳の頂上からは旭岳方面の大斜面に広がる雪模様の美しさに二人とも感嘆の声をあげられずにはいられなかった。下りはほぼ夏道に近いルートで小泉岳の鞍部に戻り、ここから歩きにくい這松と雪のミックス斜面を下ると直ぐに今日の宿泊場所である白雲岳避難小屋に到着した。

2日目:4:30頃避難小屋を出発。小屋の管理人はまだ入っていないが、ここに数日間住みついて自分では主と思っている親父さんから、私がごみ袋をザックの外につけていたら、いろいろ小言を言われて少々不愉快になる(途中で捨てたり、トイレに置いていく人が多いらしくしばらく我々の行動を監視?していた)。登山道はほとんど平坦に近く体力的には初心者でも問題ない。途中、まだ真新しい熊の鋭い爪痕が土の出た登山道に残っていてヒグマが間近にいる気がして緊張する。高根が原付近は昭文社の地図に熊注意とあるが、よく当たっている。ヒサゴ沼避難小屋までが当初の計画だが妻の調子次第では後のことを考えてトムラウシの南沼まで行きたいと内心決めていたが、出発して2時間も経たない内に妻の片方の靴の先がぱっくり口を開けた。紐での応急手当を繰り返しながら進むも、他方の靴も口を開けてきた。さらい悪いことに後ろ側も口を開け始め、そっくり剥がれ始めてきている。黒岳の登りのキックステップの繰り返しが原因だろう。忠別岳付近まで来ると二年前に登った石狩岳や二ペソツ岳が大きく間近に迫って見える。やはり何回見ても二ペソツの山容には惚れ惚れする。途中の五色岳は大半の人が特別に気も留めず通過するだろう。しかしこのピークで水を流せば日本海、太平洋の二海に流れていくことになる貴重なピークだ(東大雪に三国山がありそこが唯一、オホーツク海、日本海、太平洋に流れる三海のピーク)。そんなことを思うとなんの変哲もないこのピークも興味が湧いくる。ここからヒサゴ沼避難小屋の分岐までは夏のシーズンでは考えられないことと思うが、再三、残雪のせいで道迷いをした。GPSがあればなんの心配もないが今回は持参していない。読図力と勘に頼るしかないが視界が効くので遠回りをすることも再三あったが軌道修正はすべてうまくできた。ガスがかかっていたら実に心細く感じ、焦るかもしれない。この時期にこの山域の経験の全く無い人にはGPSは必須かもしれない。ヒサゴの分岐に着いた時、避難小屋で泊まるか南沼までいくか疲労の色が濃くなった妻に確認するが、自分の心を見透かされたように”南沼まで頑張る”という。すまないと思いながらもトムラウシに向けて歩を進めてしまった。2009年7月15日頃に起きたトムラウシ遭難の記憶は新鮮に残っている。4か所ほどの遭難場所も本で読んでよくわかっているので、そこを通過するたびに当時の遭難者の気持ちを思い心の中で手を合わせた。トムラウシ頂上にはかなり遅くに着いた。妻の喜びが伝わってくる。1枚だけ年賀はがき用の2人が納まった記念写真を撮り、日没まで時間も余りないのでそうそうに頂上を後にして南沼テント場へ下った。南沼のテント場は2回目だがまさに楽園ともいえる環境。今の時期は雪融け水がごうごうと流れ、水には不自由しない。ここから見る十勝岳、富良野岳へ続く山々は雪に覆われ、妻の靴でこれからもキックステップが多用される縦走が可能だろうかと心配になる。もし完全に剥がれてしまったら雪の斜面をトレットパターンの無い靴で登降するのは危険きまわりない。シュラフに入っても判断に悩んで寝れない。しかし自分を信頼してよく寝ている妻を見ていると、自分のやりたいことに固執し、妻に過酷な縦走を強いようとしている自分の愚かさに自分が嫌になる。そして心は決まった。明日は降りよう!縦走は止めてトムラウシ温泉に下ることを決心したら、やっと眠りにつくことができた。

3日目:今日も快晴に近く、こんな好天気の中で下山するのは口惜しい気分だ。出発早々、すぐに夏道が消えルートファンティングに苦労する。5年ほど前に一度きているが、それでもトムラウシ公園の辺りは地形が複雑で再三迷ってしまった。藪も這松も無視して進む私に妻が怒りの声をあげるのは再三だった。夏ルートが使えるようになったのは、ほとんど下山口に近いカムイ天井を過ぎてからだった。夏道と異なり、ずーと沢筋を下ったのでどこから夏道方向に方向転換して登るかが心配だったが、ありがたいことに雪の上に人間の3倍以上はある赤色の矢印が迷いやすい2か所に描いてあり大変助かった(後で東大雪荘の壁新聞で数日前、地元山岳会の人がボランティアで道迷い防止の為に描いたと書いてる記事が掲載されていた)。トムラウシ山頂が望める最後の箇所から。青空に突き上げるトムラウシに最後の別れを告げ樹林帯へ入る。天気は明後日までよさそうなので今日中に車がおいてある層雲峡まで戻って翌日、意中の山を登りたいなーと思いながら、またもや自分勝手なことを考えていることに気づき(翌日わかったことだが半日に層雲峡まで戻るのは不可だった)、ここまで頑張ってくれた妻へのご褒美に温泉でゆっくりとさせてあげようと、スマホのアンテナが立つカムイ天上を過ぎた辺りで東大雪荘に宿泊予約を入れた。妻はてっきりタクシーの手配と思っていただろう。しばらくして短縮コースとの分岐点に到着。先回来た時は短縮コースからの速攻登山で実質、ここで登山は終わりだったが、今回はまだ1時間30分ほど登山口までかかる。疲れた妻にはとても長く感じられたようだったが爽やかな新緑の中、二人とも満ち足りた気分でラストウォークを楽しんだ。この時期の登山に私を信頼して何も心配せずについてきてくれた妻に感謝の念で一杯です。

二人分の装備、食糧で膨れ上がった70Lのザック。歩き続けれるか少々心配だった。
 層雲峡ロープウエイ乗り場にて

早くもスタート早々、黒岳の雪の斜面で気分が悪くなったハジさん

延々と続く雪の登山道
 白曇岳頂上

白雲岳避難小屋が雪の溶けた丘に建っているのが見える


 ロックガーデンは雪が無かった。

 赤矢印が無いと間違いなく迷う



カムイ天井まで下ってきてもまだ豊富な雪



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