巨匠 ~小杉匠の作家生活~

売れない小説家上がりの詩人気取り
さて、次は何を綴ろうか
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咲く、裂く、桜

2017-02-27 23:38:07 | 
麗らかな春が目の前に訪れる
気の早い桜は薄紅の花を付ける
僕はコートを脱いで春仕様
大空へ胸一杯の呼気を吐き出す

僕の大好きな季節
君が微笑んだ季節
僕が故郷を去った季節
そして君を失った季節

今、時間をグルリと戻して
今宵君の温もりに包まれたい
誰でもない君に溺れていたい
君の思い出に浸っていたい
すべてをこの夜に
すべてをその胸に

女優だって
芸者だって
舞妓だって
巫女だって

君の魅力には叶わない
五臓六腑まで染み渡る美
誰も彼も魅了する堕天使

僕だけは知っている
君の左腕の裂けた生傷
陰も陽も知り尽くした僕だから
君を護りたい、君から、君自身から
救い出したいはずなのに

あの日僕は逃げ出した
君の心の深い闇を避けるように

時はすべてを変える
君を僕が支えることなど
僕には無理だと思っていた
何故、今になって過去を愛おしむ
人生経験など大して積んでないのに

かつて僕と君が住んだあの町に帰ろうか
一陣の風が僕と君の頬を切り裂く
君がかつて君自身に向けた刃を
僕は今こそ全身で受け止める

人生なんて儚い夢

2017-02-27 00:51:50 | 

命果てるまで燃ゆる
君は君の中で葛藤する
神の掌の上で転がる君
運命に抗うのも君次第

しかし何故君は先を急ぐ
まだ旅は始まったばかり
果てしなく続く水平線
僕達はこの大航海の主役

急がず、慌てず、抗わず
不動心の如く僕は自己陶酔
人生なんて儚い夢だね
僕は僕の心に語りかける

隣に生に執着する者がいる
僕はその者を愛している
しかし僕は生に拘らない
むしろ運命に従うばかりなり

僕達を乗せたクルーズ船は
舵を大きく右に取る
船体は大きく鳴動し
間一髪座礁を免れる

ほらご覧、人生なんて紙一重
だからしがみつくことないさ
君が見るべきは今
今この瞬間を生きること

過去に於ける君の役割は終わり
未来など、まるで不透明な存在

人生なんて儚い夢だね
時間を操れない僕達は
今という今を積み重ね
過去を吐き出していく他ない

それが人生というものだ

僕達は過去という形で溜め込んだ
無数の今に想いを馳せる
それが想い出というもの

海の彼方を見つめながら
君が言う、人生なんて儚いね
僕は優しく君の肩を抱く
そして今この瞬間を過去に送り出す