巨匠 ~小杉匠の作家生活~

売れない小説家上がりの詩人気取り
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右足の降ろし場所

2014-01-18 22:40:29 | 日記
思えば遠くへ来たもんだ。
筆を執るときのボクは未来志向ではなく原点回帰。
書けば書くほど、自分があまりにも多くの過去を積み重ねてきたことに驚愕します。
一昨年手始めに書いた中編小説「過去とともに去りぬ」。初期作品ということもあり、あまりの稚拙な仕上がりが恥ずかしくて仕方がないのですが、これを読んでくださっている方が私の作品の中では何気に一番多いようです。分からないものですね。
さて、この作品に登場する「抹消屋」。彼がエピローグで残すこの言葉は今のボクが読んでもなかなか秀逸だと思います。
たとえば私一人をとってもこれからどれだけの未来を積み重ねて行けるのか知る由もありませんが、自分にとって都合の悪い過去であろうと消せる訳がないですし、それをありのままに受け容れた上で永遠に不完全な存在(=人間)として生きていくのが私達の使命なのだと思います。
今この瞬間までの過去を背負って次の一歩をどう踏み出すか、ボクは今地面から上げた右足の降ろし場所を必死で探しています。



親愛なる皆様へ


私がいなくなる前に残しておきたいことがあります。

人はみな消してしまいたい過去を持っているのでしょう。

ただ、そういう過去もあってこその人生ではないでしょうか。

私はいまこの瞬間をもって過去をつくることも過去をなくすことも終わりにします。

そして皆様は今まで歩んできた過去とともに生きてください。

それでは、さようなら。

作家気質

2014-01-18 17:45:34 | 小説
目に映るものがなんとなく似ているように思います。私にももしかしたら作家気質なるものがあるのかもしれません。

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俺もパパになっちゃったよ、育児とか親の責任とか、これからいろいろと新しい「不自由」を背負い込むんだろうなあ、と苦笑交じりに首をかしげた。
おおい、見えるか、空の上から、俺の赤ちゃんが見えるか? パパになった俺が見えるか?
おまえは死を選んで、おまえを苦しめてきたものから解放されて、永遠の「自由」を手に入れたのか? でもそれは、すごく悲しい「自由」なんじゃないのか?
俺は、まだしばらく--少なくとも、この子がおとなになるまでは、こっちにいるよ。こっちの世界には嫌な「不自由」もたくさんあるけど、気持ちいい「不自由」だっていくつもあるんだ。そんな「不自由」を楽しんで、味わって、生きていける「自由」が、俺にはあるから。

「きみの町で」(重松清)
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タカシ、俺はオマエに教えてほしいことがあるんだ
俺は昔から人間がとても好きだった
それがいつしか人を疑い、憎み、傷付け、
そして気が付けば人から欺かれ、遠ざけられ、無関心を決め込まれ、
終いには自ら死を選ぼうとしていた
愛すべき人達を愛せず、自ら遠く遠くへ旅立とうとしていた
なぜ、人は死を選ぶのか、死のうなどと思うのか
オマエはどうしてそうしたんだい
誰だって人生を悲観したり、この世の中が嫌いになったりすることもあるだろう
だって、人間は不完全なものだから、完璧なものではないのだから
親友や恋人を裏切ったり、周囲に無関心になったり、誰かを追い詰めたり
そんな人間という愚かな存在を見切り、自らこの世を去る決断をする
そういう人もいて当然だと思うんだよ
でもオマエは「今を生きろ」と言う
なぜ、この世を捨て、死を選んじゃいけないんだよ
人間は完全でない部分も含めて人間
そんな人間の織りなす世界をそのまま、あるがまま認め、受け入れろと言うのかい
じゃあ人間が犯す幾多の過ちを俺達はどう許せばいい
人間という罪深い存在をどう愛せばいい
そして不完全な人間という存在として俺はどう生き続ければいいんだい

「タカシ」(小杉匠)
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