発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

大久保利通は、東京で薩摩の海を思う

2019年08月26日 | 物見遊山
◆鹿児島中央駅
 鹿児島に行く。10年ぶりくらい。
 駅ビルは、他の九州のおもだった駅にあるのと同じ、JR九州運営のアミュプラザ。
 昔からある駅前のビルは、キャンセビルというが、薩摩ことばで「来やんせ」は、来てね、とか、いらっしゃいという意味で、山口弁に翻訳すれば、オイデマセビルといったところである。イオンが入っている。前に来たときはダイエーだった。
 駅の観光案内所で市営バス電車の一日券を買う。天文館に出てホテルに荷物を預け、鹿児島シティビューという市内観光地循環バスに乗る。

◆黎明館
 鹿児島県歴史資料センター黎明館の常設展示を時間をかけて観覧。先月リニューアルされたばかりなんだって。
 
 薩摩硫黄島のメンドン(抗不安剤に同じ名前のものがあるらしい)や悪石島のボゼなどの仮面の怪物のビデオを鑑賞。仮面はプリミティブで多くは南方系な雰囲気だが、下甑島のトシドンは年末に子どもを諭しにやってくる四角い鬼面で男鹿半島のナマハゲみたい。ともかく不思議な仮面がたくさん。
 維新から西南戦争にかけての展示も当然多い。

◆大久保利通は朝に薩摩の海を思う

 黎明館の展示で今回印象に残ったのは、大久保利通の洗面道具である。ウィキペディアに「(大久保は)青いガラス製の洗面器具を使い……」との記載がある。その本物が展示してあったのだ。
 装飾の省略された濃いセルリアンブルー。洗面器と水差し、円筒形ポマード入れ瓶と、あとひとつ、小さな四角い蓋つきの箱は何を入れていたものなのか、石けん箱か、の四点セット。洗面器は昔の琺瑯の洗面器によくある広がったタイプ。
 強化ガラスとは思えないから相当丁寧な扱いが必要だったのだろうが、そこは庶民の生活ではないので、誰かがワゴンか何かにのせて運んでくれたのだろう。水差しにはぬるま湯を入れて。肖像写真を見るに、髭の手入れは大変そうだし、髪はしっかりとポマードで撫でつけてある。毎朝の仕度には時間がかかったに違いない。
 明治元勲のなかでも、洋装がとりわけオシャレな大久保さんだが、東京で、家でも彼は洋風の生活を送っていたという。道具選びにも大久保利通のスタイリッシュな生活様式が伺える。彼が朝食に好んだのはコーヒーと、ブランデーをたらしたオートミールだそうな。オートミールを炊くのにコツは要らないし、火さえあればそう時間もかからないから家庭で毎朝食べるのに合理的ではある。それにしてもスノッブね。
 だけど彼は朝がくるたびに薩摩の海を思い起こしていたのかもしれない。そんなセルリアンブルーの洗面道具だった。
 
 鹿児島に関してはまた。


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