発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

FACTFULNESS

2020年01月09日 | 本について

◆世界を正しく見ることができるのか

 去年読んだ最後の本が『FACTFULNESS10の思い込みを乗り越え、データを基に、世界を正しく見る習慣」。書店にあった本のPOPには「あなたの常識は20年前で止まっている」と書いてあって、ギクっとする。なんとビル・ゲイツさん、オバマさんの推薦文もついている。ビル・ゲイツさんに至っては、この本が読みたいという学生全員にプレゼントしたらしい。なんだかすごいじゃないか。400ページもあるけど、君は読むか、僕は読むぞ、と読んでみた。頭の半分はスッキリした。中村哲さんは公衆衛生的に正しかった。でも頭の半分はスッキリするものではなかった。悪いのは本ではない。

◆なぜデータの隠蔽や、忖度の付加が悪いかということ。

 この本は、ある特定のことに関する考えを啓蒙しようするのではなく、考え方についての問題提起である。情報やデータを読み間違えないための知識である。スッキリしないのは、この本とは関係なく、何か良くないことが起きていると私が思ったせいだ。こういう本は、データや情報が意図的に操作されていないものである、という前提のもとでないと成り立たない。

「これはおそらく忖度された情報であるので、額面通りに解釈せず、割り引いて考えるべきだな」と思うことが増えた。行間から漂うご都合主義を読みとるのはひねくれ者の得意分野だが、ただ、どの程度忖度されているのか。それを各々が勝手に考えなければならないので、得られる判断は個人の見解要素からさらに、てんでバラバラになる。また、少ないデータは貧弱な見解をもたらす。混乱を招く。

 だからデータ隠蔽や情報操作についてはもっと怒るべきなのである。

 さらに悪いことには、その混乱した方向というのは、かならずしも忖度やデータ隠蔽をおこなったひとたちが誘導しようとする、つまり彼らが思っている「正しい」方向とは限らず、もっと思いがけない悪い結果をもたらすかもしれないと私は思うのだ。

 この本を読んで、私は、世界を正しく見ることの困難さを思い知らされたのであった。それでも、あのひとたちの気づかない分野で事実を読みとることはできるはずだ。われわれは試されている。

 で、私はつぶやく。「やっぱ、野生のカンだぜ、イェイっ!!」

 


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