きらく堂日記

鍼灸師の喜楽堂が日々の出来事、過去の思い出、趣味にまつわる話などを綴った日記帳(=雑記帳)です

あらためて思う、健康情報のこと

2012年03月06日 | 健康・養生・鍼灸
元勤めていた会社のOB会に参加した時のこと。

この会は研究所の1部署から他部署に移ったり、定年退職したり・・・の昔の仲間が集まっての飲み会であり、幹事さんの面倒見が良いため、律儀に毎年開かれている。

中高年者の集まりであり、あっちが痛い、こっちが痛いの話から、サプリメントの話など、健康に関する話題も多かった。 世間一般がそうであるように、例えばコラーゲン、コンドロイチン、○△酢、ヒアルロン酸・・・などなど、マスコミで喧伝されている健康補助食品やサプリメント類を常用している人達が結構いた。

 仕事柄、「○△を飲んでいて、身体の調子が良いんだけど、○△は良く効くよね!?。」と同意を求められたりしたが・・・ちょっと困りものである。
 彼らは大企業の研究所に勤務する研究者、技術者で、いわゆるインテリで、科学的思考をする人達で、自分の健康に不安があったりして、健康にはかなり気を配っている(ように見える)人たちであるが、やっていることは、近所のおじいちゃん、おばあちゃんと同レベルであることに驚く。
彼らでもマスコミの情報、メーカーの宣伝に踊らされ、毒されている訳であり、いわんや一般の人達においておや・・・・である。

そんなことも有り。
以前書いた「健康系フリーマガジン」の事をもう一度お浚いしてみたい。

所用で某総合病院に出かけた時のことである。
いつものとおり、休憩室や廊下の展示場所で病院や市が行っている健康セミナーや、講習会のテキストや記事に目を通そうと思った。
この日はめずらしく目新しい綺麗な冊子が積まれていて、表紙には良く見かける「無料、どうぞご自由にお持ち下さい」の文字があり、いわゆる「フリー・マガジン」。

健康や医療に関する解説があり、その後にそれに関する健康食品やサプリメントの広告が満載という例のパターンのもの。
掲載されている食品や材料をざっと見てみると・・・黒糖バナナ黒酢、DHA、EPA、サメ生肝油、スクワレン、オメガ3脂肪酸、ベータグルカン、グルコサミン、ラクトフェリン、コラーゲン・・・・などなど。今話題の名前が並んでいて、これらの効果・効用の解説が一見科学的ではあるが、相変わらずの「針小棒大」である・・・。

 私がよくチェックしている独立行政法人「国立健康・栄養研究所」のホームページの中の「健康食品の安全性有効性情報」では、これらの材料は・・・
「ヒトでの有効性については信頼できるデータが見当たらない」、「○○薬との併用でおそらく有効と思われる」、「適切に用いれば経口摂取でおそらく安全と思われるが、妊娠中・授乳中の使用は避けるべき」、「食事以外から一度に過剰摂取するときは注意が必要」・・・などと、みんな???の付く、慎重な表現になっている。

健康補助食品とは、「こんな実験結果も出ています。」程度のもので、必ずしもヒトを対象にして科学的・医学的に実験検証されていない(例えば医薬品で行われる2重盲検ランダム化比較試験などされていない)ものばかりであることをキチンと認識しておく必要がある。

時間つぶしで見るフリー・マガジンとは言っても、病院に置かれていればそれなりに信頼できる内容と患者さんは思ってしまうのではないでしょうかね・・・あきらかに疑似科学に属する誇大広告満載のこのようなフリーマガジンは病院側でちゃんとチェックして排除すべきではないだろうか・・・。フリーマガジンが何たるものかを理解しているヒトばかりではないのですから・・・「なんでこんな良い本がただなの!?」と不思議がり、かつ有り難がっているおばあちゃんもいるのですから。

健康食品(健康補助食品)はほんとに要注意です。
「食べました」、「効きました」、「治りました」的表現には、眉に唾をつける必要があります。ほんとうに効くなら医薬品とすべきで、ただし、そのためには医学的エビデンス(効用の科学的な実証)が必要であり、実験検証のためには、莫大な費用と時間がかかります。
健康(補助)食品には十分な科学的・医学的エビデンス(実験検証)は必要ないので、どこかの学者や大学教授、しかも専門外だったり、しかも基礎研究だけで臨床を経験したことが無かったり、の人が実験した結果「こんな効果があるらしい、ただしラットの実験で、大量に食べさせた場合・・・」なんていうのを、チャンとした学会に論文発表しないで、一般の人の目に触れやすい健康雑誌に投稿したり、突然本を書いたりする形で、あたかもヒトに大きな効果がある「大発見???」をしたように宣伝したりしています。

 宣伝のうたい文句は、こんな症状の人がこんなに良くなった、こんなに効果があった・・・癌に効いた・・たぐいの経験談ばかりで、この経験談はまずウソと思った方が良いでしょう。実際はゴーストライターの捏造が多いのです。
経験談を鵜呑みにしてはいけませんが、実際は活性プラシーボ効果というものもあるので、話はちょっとややこしい。
言えることは、万が一「あの人には効いた、治った」という事実があったとしても、「私に効く、治る」保証は全くありません・・・と言うことです。
人はそんなに単純な生き物ではありませんから。
お金と時間をかけて、充分に実験検証を行った医薬品だって、万人に効く訳ではないのですから・・・。

「効いた、治った・・・、連絡先は○△へ・・・」のいわゆる「バイブル本」を使った違法商法(厳密には、法の網を潜っている、と言うべきか)も相変わらずはびこっています。

ダイエットのための中国茶(お茶に食欲を無くす科学薬品が混入されていた)で死亡した人が出たのは大分前ですが、新奇なものを試すなら命がけの覚悟が必要です。
ヒトは大昔からそうやって試行錯誤を重ねて、サバイバルゲームを重ねて、多くの犠牲者の下に毒薬と良薬を選別してきた訳ですが、かといって何も自分から積極的にそんな実験に真っ先に協力する必要はありませんね。
クワバラ、クワバラ!
<鍼灸マッサージサロン・セラピット>

最新の画像もっと見る

コメントを投稿