きらく堂日記

鍼灸師の喜楽堂が日々の出来事、過去の思い出、趣味にまつわる話などを綴った日記帳(=雑記帳)です

試し斬り反省会

2011年01月23日 | 居合・日本刀
平成23年1月16日(日)、横須賀市久里浜の天神社境内にて、田宮神剣流神明会一同による試斬会が行われた。

当日は良い天気だったが寒い北風が吹いて・・・コンディションは必ずしも良くはなかったが、皆元気一杯で剣を振るったのでした。

私も会員として参加させてもらい、巻き藁四本を斬らせてもらったのだが、後で写された写真を観て、余りの下手さに愕然!(チョット大袈裟ですが)となったのでした。

そこで、写真を観ながら少し自己反省・・・。



まずは「正面の敵・斬り上げ」
これは、前方から来る敵の殺気を感知して、正面から素早く敵に接近、敵が慌てて抜刀しようと柄に手を掛けたところを、素早く逆袈裟に斬り上げ、敵の前腕から胸を斬るという技です。

全体的に力が入りすぎていて、胸が詰まっていて、かつ上体が前のめりになって不安定な姿勢になっているのが分かります。

往々にして屋外や広い体育館などで演武した場合には、思っていたよりも遠い間合いになってしまいがちですが、加えて この時は第一刀目ということもあり、力が入って手首の返しも硬く、剣先に伸びが無いため、畳一枚分程を残して斬りそこなってしまった(斬られた巻き藁がぶら下がっている)。

また、巻き藁の高さがいつも練習している斬り台よりも高い位置にあり、第1刀目なので出来るだけ上の方を斬ろうとしたことも斬り損じの原因かもしれない(この高さでは敵の顔面を斬ることになり、理合に反する)。

いずれにしても、もう一歩の踏み込みが必要であった。

広い屋外、砂利の足場、巻き藁の設置高さ、巻き藁の硬さ・・・など、いつもの道場内での試斬とは異なった環境でも常に充分な技が発揮できなければなりません・・・未熟!!。



次は「右の敵・胴斬り」
これは、右側にいた敵が私を真っ向や袈裟がけに斬ろうと刀を抜き上げた時、素早く体を右に捻りながら抜刀し、そのまま敵が振りかぶった刀を振り下ろす前に腹部を胴斬り(水平に斬る)する技です。

写真では大分高い位置で斬っています。相手の胸あたりでしょうか。
スポンと斬れたので、力が余って拳は体の真横近くまで、刀はほとんど横向き(剣先は横を向いている)になってしまっています。

本来の斬り終りの拳の位置は右前方、腰の高さになり、剣先は前方を向いて、体は巻き藁に正対するというのが一つの形ですが、それから外れた形になっています。
また斬る位置は写真で巻き藁に巻かれた白いひもの少し上のあたりが良い位置で、刀を上から抑えるように(剣先は少し下を向く)斬ります。今回その位置を斬ると心棒にあたってしまいそうですが・・・。

通常、抜刀には大きく2つの方法があります。
一つ目は相手に正対した位置から抜き始めて、斬り終りは半身となる(剣先は前方を向く)と、二つ目は半身で抜き初めて、斬り終りは相手と正対する(この場合も剣先は前方を向く)。

形での居合の多くは前者を用いますが、戸山流などの試斬の場合は後者が多いようです。後者の場合、腰のひねり、上体のひねり、肩の開きによる回転、肘の進展による回転、手首の尺屈による回転のすべての回転方向が同一になるため刀の重さを生かした大きな回転モーメントが得られるため強い斬撃力が得られるからです。
一方、素早く「抜き打つ」には刀の移動軌跡が短い前者の方が有利となりますが斬撃力は落ちてしまいます。それぞれ一長一短があるので、状況によってこれらを自在に使いこなせるようになる必要があります。

今回は後者の方法で、しかも巻き藁が右側にある状態で抜き始めましたので斬撃スピードは相当あったわけで、写真のごとく斬り終りの刀が流れてしまった訳ですが、これでもし握力が弱い人の場合、かつ剣先が藁をかすった、または空振りしたといった時には刀が手から飛び出してしまいます。
飛んでいく方向は斬り手の後ろになりますので、後ろで見ている人は要注意です。

・・・刀は後ろに飛んでくる・・・注意!!



最後は「正面の敵・真っ向」
これは直前の敵を、上に抜きあげた勢いで真っ向に斬り下ろして頭から真っ二つにするという基本中の基本の技です。
戸山流の場合は本居合の組太刀五本目の技になります。前方から近ずいて来た敵が、突然刀を抜きあげて真っ向から斬り下ろしてくるのを、それより早く抜きあげて、相手が斬り下ろしてくる刀を頭上で切り落としつつ真っ向に斬り下げ、相手が後ろに引くところに踏み込んで突きを入れるというもので、「斬り落とし(一刀流の代表技)」が難しい。

今回は写真で見る限り、刃筋も通って良い感じかな。
難点は、体が少し前傾しているのと、後ろ脚が撞木(シュモク)になっているところです。上体の前傾や撞木足は居合道では嫌うものですが、古流の剣術などではあたりまえの形であり、解釈がなかなか難しいところです。
斬るということだけで考えれば前傾・撞木とも自然な姿のように思えるのですが・・・これも一長一短あるようです。

なお、ついでに補足しますと、斬撃の際に狙いをつけるポイントは巻き藁の斬りこみ点ではなく斬りぬけ点となります。そこを狙って斬りつけます。
つまり真っ向の場合は巻き藁に刀が最初に触れる上側ではなく、刀が斬り抜ける下側の点に狙いを(精神を)集中するわけです。
完全に切断するための精神と力をこの一点に向けるわけです。
練習を積むことによって、狙った点を正確に斬ることができるようになります。

これを機会にさらに練習に励みたいと思っています。
「仏神を貴び、仏神をたのまず」独行道:宮本武蔵より・・・ひたすら練習あるのみです。
写真は「田宮神剣流居合・神明会」のホームページから転用いたしました。



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