夜窓より ☆私の考えなり流儀なり☆

日刊『中・高校教師用ニュースマガジン』に連載中の教育への雑感をまとめておきます。夜間定時制高校の教師の視点です。

■「そして明日へ」(2)

2018年11月18日 | 教育
【連載】

■「そして明日へ」(2)

  瀬尾公彦(愛知県) 
  seo@ksn.biglobe.ne.jp


新任から退職まで、5校を歴任した。まず全日制に4年。若いうちにと

夜間定時制に希望して、そこで12年。すっかりはまってしまい、異動す

るならば、夜間定時制という希望が叶えられて3校目が13年。そして、

夜間定時制で、6年、3年。合計38年。定年退職。

 

時代は移り変わり定時制も又様変わりしている。かつてのやんちゃな生

徒があふれるイメージから、おとなしい定時制へと。全日制を経験した

若い先生などが、あまり疑問も抱かずに、ある種従順な生徒たちに、な

かなか昔では考えられない感じの、規律を中心とした価値観の学校運営

が粛々となされていく。



かつての、ある種無茶苦茶で人間味のあふれる教師はほとんど今は昔で、

「教育」そのものを問題とするというよりは、職業としての、瑕疵のな

い「学校運営」が問題となる。

生徒の相手も出来ない先生も「学校」に適応できるようなシステム。

危機管理が「教育」に優先されるのも仕方のない時代なのか。



「学校運営」と「教育」との乖離。



これは、定時制に限ったことでもあるまいが、今「学校」で行われている

ことは「教育」なのか。

「教育」とは何か。

「教育」でないとするならば、この毎日再生産されている現象は一体何な

のか。オールオアナッシングではないとしても。



正直、なにかさびしいものを感じる昨今である。

昔は良かったという話でもない。現在の方がやはり進化していて洗練され

ている部分も当然ある。



夜間定時制高校というのは、基本少人数のクラスである。本来、個の営み

である「教育」が、「集団教育」というように流れて行っているところに

変化を感じるのである。


それでも私の周りには、熱心で、生徒思いの先生たちがあふれてもいる。

教師自身がなにか、職業として、役割を演じているところが、増えている

のであろう。演じる中での人間対人間。



100年後、ここで、教師たちがもっと人間の部分を気楽に出して、フランク

に生徒一人一人と向き合っているようになればと、この年にして思う。



AIに代替不能とされている「教師」と言う職業の、その人間的な部分につ

いて考えてしまう。



私は今しばらく、再任用教師という身で、さらに自覚的に「不良教師」とし

て存在しようと思っている。




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===編集日記=== 

  皆様に支えられて「日刊・中高MM」第4323号です。

 瀬尾公彦さんの「そして明日へ」、お届けします。

 改めて瀬尾先生の作品を拝読して、私も昔は良かったというつもりはないが、
 何かつかみ所のない奇妙な気がするのです。荒れた昔の学校とは異なるのが
 今の現場ですが、昔よりもそれぞれ、つまり、生徒と先生、親と先生、生徒
 と生徒、先生と先生といった関係性にも諍いも少ない。何ともつかみ所がな
 い世界である。「関係の希薄化」が進行しているせいでしょうか。


■「そして明日へ」(1)

2018年11月02日 | 教育
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 『中・高校教師用ニュースマガジン』(中高MM)☆第4309号☆
                  2018年10月14日:日曜日発行
   編集・発行 梶原末廣      sukaji@po.synapse1ne.jp
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■【新連載】「そして明日へ」瀬尾公彦(愛知県) 
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【新連載】

■「そして明日へ」

  瀬尾公彦(愛知県) 


        瀬尾 公彦
        seo@ksn.biglobe.ne.jp


夜間定時制の生活を書いた「夜窓から」、ベトナムの学び舎作り

のNPO活動について書いた「理想の学び舎作りへ」、バルセロナ

旅行記も入れると四度目の連載となる。今回が最もテーマ的には

曖昧な感じである。



(編集長、又お世話になります。)



 さて、今年の三月に定年退職をした。ご存じの方も多いでしょ

うが、現在は年金制度の過渡的な時期である。簡単に言えば、私

の場合、3年間は無給で、その為に3年間は希望すれば、再任用教

師として、フル或いはハーフを選択して教師を続けることが出来

る。そしてその後2年間(65才まで)年金の一部である老齢厚生

年金の受給が始まるので、ハーフとして任用を希望することが出

来る。



 最後の年に一年生の担任をしたので、継続できればと思い、

(3年再任用すればちょうど4年生で卒業)再任用のフルを希望

した。フルというのは簡単に言えば、仕事は全く同じで、給料だ

けが約4割引となる。



 ところが、思いもよらなかったのだが、別の高校の夜間定時制

に内示が出る。勿論それも想定できたわけだが、夜間定時制とい

うこともあり、これまでその学校では退職、その学校で再任用と

いう流れがあり、私自身、安易に考えていた。



 一日考えた。子供も巣立っており、奥さんと二人暮らしで、退

職金も当面使うあてもないので、場合によっては、それで5年食い

つなぐこともできる。お金のために働くという選択肢は、幸い排

除することはできていた。



 では仕事をやめて自分がやりたいこと。まとまった期間、海外

をまわる。文筆活動をする。などいくつか改めて考えてみた。



 いろいろ考えて、転勤先が夜間定時制高校ということもあり、

やはりちょっと面白そうで、上のことなどに比べても、定時制高

校でもう少し楽しんでみたいと思った。



 と言うことで現在は新しい夜間定時制高校で、一年生の担任を

やり、今までと同じようなドタバタの中にいる。



 この年になって最近感じるのは、いやいや60才、誰が?って感

じで、まだまだその年齢を受け入れられない自分がいることであ

る。



 昨年までとの違いは、ないようであるようで、あるようでないよ

うで、という感じである。そのあたりの闘い?と、教育についても

なにかしら、書いて行ければと思い、またしばらく連載させていた

だくことにした。


 そして明日へ



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===編集日記=== 

  皆様に支えられて「日刊・中高MM」第4309号です。

 瀬尾公彦さんの「そして明日へ」【新連載】、お届けします。

 瀬尾さんには、冒頭にも記されていますように、「夜窓から」
 ・「理想の学び舎作りへ」・「バルセロナ旅行記」と続き、
 今回新たに「そして明日へ」の連載をいただけるようになり
 ました。謂わば、教師の後半生の部分を担当いただいた感じ
 です。先人がありこれまではその後ろ姿を追えば何とか生涯
 を全うできた時代から先人の生き方の後を追うことが困難な
 時代を生きている。試行錯誤が披瀝され読者の皆さんも逡巡
 の読後感となるかも知れません。一人ひとりがゆっくり少し
 ずつ今日を生きることから明日がやってくるのかも知れませ
 ん。決して暗闇ではない道をぼつぼつを歩いて行くことにし
 ましょう。時折はその連れがあると愉しくなりますね。どう
 ぞみなさんご一緒に参りましょう。次回からの連載「そして
 明日へ」を愉しみにします。

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       梶原末廣【インターネット編集長】
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「中・高校教師用ニュースマガジン」2000年3月26日創刊
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