夜窓より ☆私の考えなり流儀なり☆

日刊『中・高校教師用ニュースマガジン』に連載中の教育への雑感をまとめておきます。夜間定時制高校の教師の視点です。

■「理想の学び舎作りへ」(25)

2017年01月05日 | 教育
■「理想の学び舎作りへ」(25)

    瀬尾公彦(愛知県)
    seo@ksn.biglobe.ne.jp



新年あけましておめでとうございます。



現在の「理想の学び舎作り」について整理しておく。

今できていること、できていないこと。やろうとしていること。



NPOとして、日本では認可されたものの、ベトナムにおいてはなか

なか認可されず、活動は限られたものとなっている。それでも認

可に向けて少しずつ前進しているという印象である。



民家を改装した職員室棟に於いて、6月から3ヶ月ほど授業を行っ

てきたが、警察や教育委員会の指導もあり、再開できない状態で

ある。では手をこまねいていたかと言えばそうでもなく、そこか

らは、今までは一人の先生に対して数名の生徒という教室授業で

あったのを、生徒一人が30分ほどの時間に学び舎に来て、一人

の先生に課題、宿題のチェックや小テストをしてもらったりして

いる。



「理想」の考え方の中心は、学ぶことは自己の主体的な活動であ

る、というところである。現象的に言えば、まだ教室も作れない、

一斉授業もできない、という、まだまだ感が残り、NPOに関わる

方々の心証としては満足のいくものではないわけであるが、私個

人で言えば、質的には基本的な姿勢は失われておらず、単に様々

な規制に於いて、イマジネーション的な学ぶ形の広がりに制約が

できているという認識でしかない。



教える-教わる、でない、学びの支援としての場。この時期、学

ぶものたち自身に学ぶべき教材を渡し、その一人一人の習得状況

を週二回チェックしていく。このことは「先生」イメージに流さ

されて、授業の意味を忘れて、授業の形に流される弊を廃すると

いう意味ではプラスでさえあると思える。



ただし、やはり一人で学習していくことは、複数で学ぶ環境よ

りも、学ぶこと自体が本人に突きつけられていくと言う意味で

はシビアな事である。脱落者も出やすい。こちらは別に学ばな

くてもさほど支障がない「日本語」の学習であり、まだ、中学

生高校生の学習者たちにとっては、本業の学習もある。



先生たち3人は、毎日今日の学習状況を記録して連絡してくれ

る。学習の進度も一人一人違ってくる。欠席がちな子も出てく

る。しかしここは「休まずに学び舎に来なさい」というような

意味合いの場ではない。励ましはすれども、理由がどうあれ、

学びたくないものに強要することでもない。



「先生、雨が降って欠席が多いです」そういうこともあるかと

思っていたら、写真を見て驚いた。なんとその村の道の写真で、

腰くらいまで増水しているところを村人が歩いている。これで

は、自転車も使えず、長い時間をかけて学び舎に来るのも大変

である。それでもそこを学びに来る子供たちもいる。


今年も地道に一歩一歩進めたらと思う。



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===編集日記=== 

  皆様に支えられて「日刊・中高MM」第3902号です。

 瀬尾公彦さんの「理想の学び舎作りへ」、お届けします。
 
 ・現在の「理想の学び舎作り」について整理。
 ・今できていること、できていないこと。やろうとしていること。

 思うことや考えることは行動に移さないと本来の思考ではない。
 理想は理念と言い換えても佳いかもしれない。
 瀬尾先生の思考や実践は着実に一歩ずつ進歩していると考えます。
 今年の展開はどうなるか楽しみです。


■「理想の学び舎作りへ」(25)

2017年01月03日 | 教育
■「理想の学び舎作りへ」(25)

    瀬尾公彦(愛知県)
    seo@ksn.biglobe.ne.jp



この夏ベトナムに同行した高校生が、引き続きベトナムの人たちに関わって
くれている。今名古屋に来ているベトナムの先生候補らと時間を共にする機
会にマメに参加している。

それは一泊の旅行であったり、日帰りの観光であったり、高校に来てもらっ
ての「国際交流」であったり、最近はスカイプで会話までしている。

性格もあるだろうが、とにかくフレンドリーにみるみる仲良くなっていく。
逆に日本語の学習者から見れば、自分よりも10才近く若い高校生に対しては
気楽に応じる事ができる。

私などは「先生」であるので、やはりそれなりの緊張感も持っているのであ
ろうが、高校生に対してはそのような心理的距離がより近くになる。話しや
すいのである。間違いを恐れない、というのは結構大切なポイントでもある。

会話を勉強として、一つの訓練として意味づけて話をする事とフランクに話
そうとすること。そういう違いは存在する。習得において、その違いの意味
は着目に値すると思われる。

もちろん学習者は非常に短期間に、高校生たちの言葉を聞き取り目に見えて
会話力が上がっているのである。


さて、「学校」は教育をするための場である。教師的には「授業は大切」と
いう意識が強い。それは別に悪いことでもないが。では例えば親の意識とし
ては、進学のために、というのは横に置いておけば、あらゆる教科の知識を
人として身につけておくべきだと考えているかと言えばそうでもなかろう。

高学歴の親だとしても、高一の子供が勉強している期末テストを全科目受け
たとすれば、子供よりも点数をとれる親の方が少数であろう。

では親が学校に期待するものは、授業以外でも、友人たちとの集団生活や部
活動などの広がりを持った、「中学生活」や「高校生活」などを含んだ人間
的な成長と言うことになるのかもしれない。


さて前にも書いたような気もするが、学校において、教師に意識されるもの
は、直接の「教育的視点」や「教育」である以上に「学校運営」という事で
あろう。「良い」学校はそこが乖離されていないと言うことになる。

話を戻して、「理想」の学び舎を考えるときに、習得が進むとすれば、それ
は必ずしも「授業形態」である必要もない。かつてのサマーヒルの考え方や、
街(図書館などの施設)を使った校舎のない学校に通じるところもあるが、
一つのカリキュラムの中に、街に開く発想があっても良いのではないかと感
じている。

今、名古屋に来ている学習者に、水族館や動物園に自分たちだけで行っても
らって、日本人10人と話をするという課題を出したりもしている。

教える、教えられると言う関係が習得を阻害する面もまた見ておかねばなる
まい。



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◆「かごしま朗読Cafe」(霧島プロジェクト)2016年 下半期◆

☆第56回かごしま朗読cafe in「DINIZCafe」(済)
  11月6日 10:00~11:30
   参加者:8名
☆第3回さかのうえ哲学カフェ(済)
  11月23日(水)10:00~11:30
  テーマ:「働く」ということ
  於:小さなカフェTAO(谷山北中前)
  参加者:7名
☆第15回まちさるく会
  12月4日 07:00~08:00(まちさるく)
        08:00~09:00(朝食・語らい)
       「HOTEL&RESIDENCE南洲館」(864円)
  参加者:6名
☆第57回かごしま朗読Cafe in「DINIZ Cafe」
   12月4日 10:00~11:30 
   参加者:10名

■「蕎麦打ち体験会」於:稲音館(とうおんかん)■
   12月17日(土)12:00~14:00
   募集人員:15名
   参加費:1,000円(蕎麦打ち+蕎麦食事) 
■「朗読Cafe&まちさるく会&哲学Cafe&霧プロ望年会」
   12月25日(日)18:30~20:30
    於:山有fukuitadaki
    
*直接次のメルアドへ申し込みください。
 kanoyu@po.synapse.ne.jp (かごしま朗読会)
        (連絡先:090-1346-3090)

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===編集日記=== 

  皆様に支えられて「日刊・中高MM」第3871号です。

 瀬尾公彦さんの「理想の学び舎作りへ」、お届けします。

 教育の形態変化か、あるいは本質の再確認か。
 迷うところではあるが、ポイントは「理想の追求」である。
 よりよきものを求めて仕事に邁進する、このことに尽きそうだ。
 瀬尾先生の実践はそれを教えてくれている。

■「理想の学び舎作りへ」(24)

2017年01月03日 | 教育
■「理想の学び舎作りへ」(24)瀬尾公彦(愛知県)
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【連載】

■「理想の学び舎作りへ」(24)

    瀬尾公彦(愛知県)
    seo@ksn.biglobe.ne.jp



9月末にNPOが企画して、ベトナムの村で「日本フェスティバル」を開催した。


内容は日本人が行き、様々な文化を伝えるという趣旨である。私たちの関わる
ベトナム人に伝わる「神話」を日本語の紙芝居にして、それを向こうで読む
(翻訳しながら)という、よく考えればまどろっこしいこともしたわけである
が、紙芝居自体を日本の文化と捉えれば、意味のないことではないと考える。


ちょうど、「カテ祭り」というお祭りで、大勢の人が集まってくる中での開催
であった。他に学び舎の生徒たちも含めた日本語のカラオケ大会や、同行した
フラメンコダンサーによるフラメンコなどが行われた。


私は仕事で行けなかったが、友人は帰ってから「ベトナムに行って人生観がい
ろいろと変わった」としみじみと話していた。


異文化交流の醍醐味と行って良いだろう。人は誰もが自分が中心で自分と異な
る人や文化から多くのことを学び、そのようにして成長していくといっても良
い。自己と他者。自分の国と異なる国。異なるものを受け入れて共感すること。


こういうところが教育の道筋においても原点であるのかもしれない。


学び舎の方は認可がカフカ的状況で進まず、日々一人一人の時間をずらしての
個人レッスンとして続けられている。質的にはそれほど違わないと認識してい
るが、現地の先生たちは、早く授業をすることが認められる事を心待ちにして
いる。




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◆「かごしま朗読Cafe」2016年 下半期◆

☆第56回かごしま朗読cafe in「DINIZCafe」
  11月6日 10:00~11:30
   参加者:8名

◆第3回さかのうえ哲学カフェ
  11月23日(水)10:00~11:30
  テーマ:「働く」ということ
  於:小さなカフェTAO(谷山北中前)
  参加予定者:6名(11/11現在)

☆第15回まちさるく会
  12月4日 07:00~08:00(まちさるく)
        08:00~09:00(朝食・語らい)
       「HOTEL&RESIDENCE南洲館」(864円)
  参加予定者:6名(11/8現在)

★第57回かごしま朗読Cafe in「DINIZ Cafe」
   12月4日 10:00~11:30 【残1名】
   参加予定者:11名(11/9現在)
 
*直接次のメルアドへ申し込みください。
 kanoyu@po.synapse.ne.jp (かごしま朗読会)
 (連絡先:090-1346-3090:かごしま朗読会)

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===編集日記=== 

  皆様に支えられて「日刊・中高MM」第3846号です。

 瀬尾公彦さんの「理想の学び舎作りへ」、お届けします。

 ・友人は帰ってから「ベトナムに行って人生観がいろいろと
  変わった」としみじみと話していた。
  異文化交流の醍醐味と行って良いだろう。

 最近のニュース、「ベトナムの第一外国語は日本語」って、新聞の活字で
 見たような気がしますが。私の見間違いかもしれません。
 瀬尾先生にはご多用の中執筆いただき感謝です。
 半歩でも前に進めることが出来ていれば幸いです。

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■「理想の学び舎作りへ」(23)

2017年01月02日 | 教育
しばらく投稿を失念しておりました。失礼いたしました。瀬尾

■「理想の学び舎作りへ」(23)


      瀬尾公彦(愛知県)
   seo@ksn.biglobe.ne.jp


前回の稿で、まだベトナムに於いて正式には活動できない事を書いた。
生徒たちの学校が始まった8月中旬から9月まで休みとして、次の9月
からの授業準備をしていた。その地区の中高では、授業が例えば、中
学一年生が午前中ならば、中学二年生が午後というようになっている
と聞き、そのようなクラス編成をした。

ところが9月に入り、日本でいう文科省のようなところから連絡があ
り、認可できるていない状態での活動はやめるように、とのことであ
った。こちらは早く認可したくて申請もしているのだが、いつになっ
たらその返答が来るのかもわからない。

それでも、あまり刺激しても行けないと判断して、9月からの授業再
開を見合わせた。ただ授業を見合わせるだけでは、熱い向学心の生徒
たちがかわいそうなので、次のような活動形態を考えた。

そもそも「理想」の基本テーマは、学ぶのは自分である、と言うとこ
ろに置いてある。そうであるのならば、まず授業ありきでもない。と
いうことで、生徒たちに、自分で学ぶ課題を出し、それを学び舎に持
ってきて、先生たちがチェックする。

1人30分で、例えばAくんは9時からBくんは9時半から、と言うよ
うにである。先生は3人いるので、同時に3人まで対応できる。その
時間に、課題で覚えてきた、漢字や語彙などの小テストをやったり、
わからないところなどを先生が個別に教えたりするのである。

10月まで約一ヶ月そのようなときが流れている。先は見えないが、
今は足下を見つめて進んで行こうと思う。



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◆「かごしま朗読Cafe」2016年 下半期◆

★第55回かごしま朗読cafe in「重富海岸自然ふれあい館 なぎさミュージアム」
  10月30日 10:00
   参加予定者:11名(9/18現在)

★第56回かごしま朗読cafe in「ガーデンカフェ アトリエ「 無」(ねん)」
  11月6日 10:00
   参加予定者:4名(9/18現在)

◆第3回さかのうえ哲学カフェ
  11月23日(水)(勤労感謝の日)
  テーマ:「働く」ということ
  於:小さなカフェTAO(谷山北中前)
  参加予定者:2名(9/19現在)

★第57回かごしま朗読Cafe in「DINIZ Cafe」
   12月4日 10:00
   参加予定者:2名(9/18現在)
 
*直接次のメルアドへ申し込みください。
 kanoyu@po.synapse.ne.jp (かごしま朗読会)
 (連絡先:090-1346-3090:かごしま朗読会)

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===編集日記=== 

  皆様に支えられて「日刊・中高MM」第3810号です。

 瀬尾公彦さんの「理想の学び舎作りへ」、お届けします。
 
 隔靴掻痒(かっかそうよう)の思いはありますが、何よりも瀬尾さんが
 一番その思いは強いと思いますが、今はできることを実施する。
 一歩ずつである。蝸牛の歩みであるが、理想の学び舎のために。

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