夜窓より ☆私の考えなり流儀なり☆

日刊『中・高校教師用ニュースマガジン』に連載中の教育への雑感をまとめておきます。夜間定時制高校の教師の視点です。

「遠景のモノ語り」(6)

2022年06月05日 | 教育
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「遠景のモノ語り」(6)瀬尾公彦(愛知県)
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【連載】

■「遠景のモノ語り」(6)


  瀬尾 公彦(愛知県)
  seo@ksn.biglobe.ne.jp


◆*クロスのボールペン*(2)



 現在、夜間定時制ではどちらかというとおとなしい生徒が

少なくない。街にも「不良」の姿を見かけることが少なくな

っている。



 さて、荒れた時代の、おとなしい1人の少女のお話の続き。

彼女は成績も良く、県立大学を受験することとなった。しかし

残念ながら不合格となってしまう。

 そのあとの希望を聞いて驚かされた。中国の大学に留学した

いという。



 確かに入学当時に比べれば、随分自信もつき、積極性も又勇

気も出すことができるようになっていた。初めての一人暮らし。

海外。2000年頃の上海。



 これは他の不登校の生徒から聞いた話であるが、しばらく部

屋から出ることができない彼が少しずつ外に出る。部屋の外は、

近所でも、沖縄でも海外でも同じであると。



 夏休みになり、帰国して学校に顔を出してくれたときに、

お金を渡して彼女が選んで買ってきてくれたのがクロスの

ボールペンであった。



 当時既に、5年日記を使って、私は毎日の出来事を書き留め

ていた。それは担任を辞める最近までずっと続けられて、その

クロスのボールペンも20年ほど使用したことになる。インクも

10本以上変えたと思う。



 彼女は留学先の中国で、韓国人の留学生と恋に落ちる。

そして結婚。韓国に住む。韓国での嫁の扱いなどについて聞く

度大丈夫かと心配していたが、彼女はめげずに、明るい便りを

送ってくれた。そして、韓国の大学院を卒業もする。



 やがて一家で日本に住むようになり、現在は二児の母として

がんばっている。子供が不登校と話していたが、彼女ならば、

その子供たちにとって、最も良き理解者であってくれるのであ

ろう。



 卒業の時に彼女が書いてくれた手元に文章がある。

「@@運命的に先生と出会ったのは@@入学式でした。こんな

に長い年月を、これだけ早く感じ、楽しく過ごすことができて、

なんか私は幸せ者です。@@ありがとうございました。では足

りないなあ。言葉で言い表すのは難しいので心の中にそおっと

しまっておきます。」



 年に1,2度、ランチのお誘いがある。私としても至福の時

間である。



 拙稿を見せたら、「大事にとっておこうと思います」と返信

をいただいたので2回にわたり掲載させていただくことにした。



最近、古い映画の「学校」のモデルとなった松崎運之助氏の「

幸せになるための学校」というフレーズに再会した。映画の中

に「幸福とは何か」を知ることのために勉強をする、と言う言

葉もあったように思う。

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===編集日記=== 
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  皆様に支えられて「日刊・中高MM」第4891号です。

 瀬尾公彦さんの「遠景のモノ語り」、お届けします。

 クロスのボールペンの2回目、教師冥利に尽きるお話ですね。
 映画「学校」は4部作ですが、1作品目の舞台は夜間中学校
 山田洋次監督で西田敏行さんが先生役で生徒役の一人が、故
 田中邦衛さん、秀逸でした。「学校」の最初のカットが好き
 です。「**夜間中学、だれでも学べます」だったかな?
 もうジーンときます。「幸福とは何か」……DVDもサント
 ラ盤CDも持っているので視てみるかな、聴いてみるかな?