夜窓より ☆私の考えなり流儀なり☆

日刊『中・高校教師用ニュースマガジン』に連載中の教育への雑感をまとめておきます。夜間定時制高校の教師の視点です。

■「理想の学び舎作りへ」(19)

2016年05月10日 | 教育
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■「理想の学び舎作りへ」(19)瀬尾公彦(愛知県)
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【連載】


■「理想の学び舎作りへ」(19)


    瀬尾公彦(愛知県)
seo@ksn.biglobe.ne.jp
 

昨年に続き、科目聴講生として大学院の日本語教育の講義をを受講して
いる。素朴な印象であるが、この日本語教育、第二言語習得の世界は、
私の属する高校教育の国語科教育の世界に比べて、ここ2,30年教授
法が大きくダイナミックに変遷している。


対象の学習者や目的も異なるので一線に置いて比較もできまいが、教授
法に於いては、どう見ても日本語教育の方がより学習者サイドに立って
考えられている印象を持つ。


多くはここでは触れないが、「学習者が持つ不安や防衛的態度が大きい
と学習効果が上がらない」情意フィルター仮説などは、実際の研究に裏
打ちされてもおり、実感として定時制教育の実践者である私にも説得力
を持つ。


さて、現在大学院で読んでいる細川秀男氏の論文より。

*やはり常に「教える/教えられる」べきものの存在があるために、
ここから教育自体が解放されてこなかった。

*テキスト読解中心型という教育実践構造そのものが自分の「考え
ていること」を表現しようとする意思を疎外してしまうことがしば
しばある。(テキストヒエラルキーの説明)

*それは文学教材であろうと、社会科学教材であろうと、すべて同
じ構造になっているわけで、いつも先生がカギを握っていて、自分
では解決できない。そういう不安の中で、子供たちや学習者は学ば
なければいけない。

*では、共生型教育実践を実現するためにどうしたらいいのか、そ
れは教育実践を自己発信表現型へ転換させることである。


これはほんのワンポイントであるが、魅力的な提言がいくつか散見
できる。ただ作者はやはり「ことば」の問題について収斂されてい
くが、読み取る私にとっては、「知」と「教育」の問題に関心が残
っていく。


若い頃に惹かれた、イヴェンイリッチやパウロフレイレの問題意識
により応えようとしているのは日本語教育の世界である。公教育で
ある日本の中学、高校の「教科内容」重視の現実に於いて、アクテ
ィブラーニングなどの声が上がってきているが、それが「学校」と
いう枠組みの中での方法論として認識されてしまうとすれば、そこ
で行われる事の意味は重層的なものとならざるを得ない。


さて、「知」の習得を通じる営みを考えるとき、その時の、教師の
存在と学習者との関係性、その場の問題、そこには人としての笑顔
が重要な問題として介在しているような気がしている


ベトナムに理想の学び舎を、と言うとき、「理想」は限りなく遠く
にあると感ずると共に、「今」を構成するこの瞬間の中に一回性の
のとして、個と個の関係性の中で具現されてもいくのであろうと感
じてもいる。                  



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===編集日記=== 

  皆様に支えられて「日刊・中高MM」第3692号です。

  瀬尾公彦さんの「理想の学び舎作りへ」、お届けします。

  ・「教科内容」重視の現実に於いて、アクティブラーニ
   ングなどの声が上がってきているが、それが「学校」
   ~の中での方法論として認識されてしまうとすれば、
   そこで行われる事の意味は重層的

  ・「知」の習得を通じる営みを考えるとき、その時の、
   教師の存在と学習者との関係性、その場の問題、~
   人としての笑顔が重要な問題として介在

  ・ベトナムに理想の学び舎を~「理想」は限りなく遠く
   にあると感ずると共に、「今」を構成するこの瞬間の
   中に一回性ののとして、個と個の関係性の中で具現

  語学教育の教授法の変遷を見る感じですね。より実用的な
  ものにすると、指導法の改善は避けられない。そこが隣接
  教科(領域)といえる日本語と国語の違いは大きいのだ。 

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