夜窓より ☆私の考えなり流儀なり☆

日刊『中・高校教師用ニュースマガジン』に連載中の教育への雑感をまとめておきます。夜間定時制高校の教師の視点です。

「遠景のモノ語り」(4)

2022年05月05日 | 教育
【連載】

「遠景のモノ語り」(4)

  瀬尾公彦(愛知県)
  (seo@ksn.biglobe.ne.jp)


*スタバのチーズケーキ*
 

三月一日。卒業式。夜間定時制高校の生徒にとってその意味

は大きい。今回は遠景を思いつつも閑話休題的に近景で。


かつて夜間定時制では退学する生徒は入学して約半数というの

が相場であった。私は基本、1年生で担任を持つと4年生まで

継続することが多かった。言い方を変えれば、4年後の三月一

日のために、4年間、生徒も教師のドラマが繰り広げられてい

ると表現しても良いであろう。



今は昔であるが、卒業式のあとに生徒達がお金を出し合って謝

恩会を開いてくれた。先輩の教師が相好を崩して「この日だけ

は生徒達がよくやってくれる」と話していたのを思い出す。



この一日は何十年たっても変わらない。簡単に言えば、「あり

がとう」感謝の言葉に包まれる。夜間定時制教員冥利に尽きる

と言っても良い。



この春もらったスターバックスのチーズケーキに添えられた

手紙から。



「私は障害を持っていたりとか多分大変な生徒だったと思いま

す。でも瀬尾先生はいやな顔せずに接してくれました。本当に

うれしかったです。瀬尾先生はどんな生徒も同じように接して

いてとても良い先生だと思っています。今までの先生より一番

だと思っています。笑。本当に4年間楽しく過ごせました。あ

りがとうございました。今度ご飯でも行こうね」(あまり手紙

書かないから言葉変なところもあるけどゆるしてね、と封筒に)



メールで感謝を伝えてくれた生徒が多い中、手紙を書いてくれ

たこともうれしい。授業の中で梶原先生の生徒達と手紙のやり

とりをさせていただいた成果の一つかもしれない。



思えば、4年前、この生徒は閑散とした感じの体育館の前の方で

少人数で繰り広げられる入学式に入ることができずに、遙か後ろ

の壁にずっと立っていた。その生徒の「楽しく過ごせました」の

重み。4年間の成長。



4年生最後の授業では、自伝を全員が原稿用紙10枚以上書き上げ

た。入学時には1時間横について、数行しか書けなかった生徒た

ちが、自身でそのことに触れながら誇らしげに出していった。



その成長。そして一つのことを成し遂げた自信。そのことが

夜間定時制における卒業の大きな意味であると思う。



教育とは生徒の人間的な成長に関わる企図である。



教員が単なる学校運営に堕することなく、教育に対する矜持を

持ち続けて行って欲しいと思う。



私も現在64才となり、4月からラストイヤーを迎える。



 *全く関係ありませんが、

「オードリータン母の手記「成長戦争」自分、そして世界との和解」

(近藤弥生子 KADOKAWA)



久しぶりに良い教育書に出会いました。 私が教員になった頃イリ

ッチやフレイレにはまり、サマーヒルなどの本を読み、日本の将

来はこのようなオータネーティブな学校となっていくのかなと感

じたものですが、遅々として進まず、台湾でこのような柔軟な教

育システムを構築していることは個人的にはちょっとした喜びで

もありました。




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===編集日記=== 
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  皆様に支えられて「日刊・中高MM」第4863号です。

 瀬尾公彦さんの「遠景のモノ語り」、お届けします。

 ・スタバのチーズケーキ

 ・瀬尾先生はどんな生徒も同じように接していてとても
  良い先生だと思っています。


手紙の効用、なにやら嬉しい作品です。

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