寺さんの【伝えたい話・残したい話】

新聞記事、出来事などから伝えたい話、残したい話を綴っていきます。
(過去掲載分は「付録」の「話・話」を開いて下さい)

(第2781話) 旅姿の道中

2019年05月03日 | 活動

   “四十代の長男が私と一緒に歩きたいと言いだした。私は時代劇に出てくるような三度がさにももひき、わらじの旅姿で街道を歩いて十年になり、大学ノートにつづる道中日記も二十九冊を数える。旅先で親切にされた思い出を以前に聞かせて長男を誘ったが、そのときは気乗りしないようだった。それだけに長男の心変わりに私は驚いた。
 長男は照れながら「おやじが男らしく見えてきた。親孝行できれば・・・」。それを聞いて私は父のことを思い出した。旅姿で街道歩きを始めたのは父だった。若い頃の私は「みっともない」と父を恥ずかしく思ったが、帰らぬ人となってから私は旅姿に身を包むようになっていた。どこか父に憧れていたのだろう。中山道や裏木曽街道へと繰り出すうちに長男と並んで歩くのが私の夢になった。
 長男は会社勤めなので、まずは週末に岐阜県中津川市の馬箭宿方面へ出掛けようと思う。竹の皮ににぎり飯を包み、お茶の入った竹筒を持って。”(4月14日付け中日新聞)

 名古屋市の自営業・宮地さん(男・74)の投稿文です。宮地さんの旅姿の道中は以前にも読んだ気がする。そして、今回は息子さんと歩くことになった話である。これで親子3代である。こんな奇特な親子があることにびっくりする。お父さんの始められたきっかけは何であったろう。単なる余興であったのだろうか。目立ちたかっただけであろうか。でも、世の話題になった。興味をひいた人も多い。世の役立ちはすれども、悪いことはなかった。それが親子に引き継がれたのであろう。ここまで来ればもう宮地家の財産である。何でも続けることである。続ければ価値がでる。
 考えてみれば単なるウォークよりかなり楽しい。話しかける人も多かろう。それが29冊ものノートになった。全く人間様々である。


コメントを投稿