寺さんの【伝えたい話・残したい話】

新聞記事、出来事などから伝えたい話、残したい話を綴っていきます。
(過去掲載分は「付録」の「話・話」を開いて下さい)

(第3254話) 人は変わる

2022年01月03日 | 人生

 “これと言って趣味のない夫の退職後の行く末を家族中で案じていたが、周囲の心配をよそに、本人自らJAの農園を借り、畑を始めた。長年畑をやっている友人が近くにいたことも幸いし、いろいろ教えてもらい恵まれたスタートを切った。「やれやれ、何とか続いてよ」と祈る気持ちで見守った。ところで夫はもともと好き嫌いが多く、結婚当初から「ジャガイモ嫌い、カボチャ嫌い」と臆面もなく言い放った。ちなみに私は大の大人が食卓で好き嫌いを言って食べ残すのを、非常にみっともないと思う者である。
 それが、キュウリの大収穫時には、サラダ、酢の物、漬物、味噌汁にまで毎日キュウリのオンパレードに文句を言わず食べた。大根、人参に至っては葉もすんなり食べた。人参の葉は刻んで卵焼きやサラダに。大根も然り。味噌汁、チャーハンの具、菜飯、野菜炒めなど、食卓に出し続けた。「えぐい」とか「苦い」とか文句が出るかと思いきや、「美味い」と言う。驚いた!あんなに好き嫌いを言っていた同じ人間の口から出た言葉とは信じ難い。おまけに毎年、「足首が冷える」と言っていたが、今年は聞かない。齢七十を過ぎても、人は変われるのだ。身も心も。”(12月11日付け中日新聞)

 愛知県大府市の大塚さん(女・68)の投稿文です。自分で作り始めたり関わり始めると、今まで言っていたことが大きく変わることは多々聞くことである。ところがこの大塚さんの変わり様は見事である。野菜を作り始めて、嫌いが一挙に飛び去り、普通では嫌うことも喜々として受け入れる。70歳を過ぎても人は変わる、奥さんがびっくりされるのももっともである。
 人にはいろいろな楽しみがあるが、特に作ること、想像することの楽しみは誰もが覚えることである。特に野菜作りはいい。何をしておいても何とかできる。そして、手を加えれば加えるほどよくできる。ところが逆に手を加えてもその努力が報われないこともある。これがまた面白い。ますますのめり込むことになる。そしてその成果の野菜は何を食べても美味しい。これは長年野菜作りやってきたボクの感想である。誰もがこの気持ちを味わって欲しいと思う。
 今わが家には小松菜がある。何カ所かに少し時期をずらして作っている。早く蒔いて大きくなりすぎたもの、少し遅くて全く小さいもの、虫がいっぱいついているもの、全くついていないもの、この違いに驚く。同じことをやっても同じにならない。これが野菜作りの面白さ、難しさである。妻はここまで食べるのかと思う程、食べ尽くす。これも関わっているからであろう。


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