青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

浮浪雲 秋の古町や 照り翳り。

2021年11月22日 17時00分00秒 | 伊予鉄道

(松山の街の遅い午後@古町駅)

大手町からたった一駅ですが、古町駅にて下車します。新潟っぽく「ふるまち」と読んでしまいそうですが、「こまち」です。この駅には伊予鉄の古町車庫が併設されていて、乗降客の中心である松山市駅とはまた違ったテクニカル的な心臓部を担っています。現在の伊予鉄の主力車両である3000系は、関東モノには馴染みの深い京王井の頭線の3000系。昭和の時代はご多分に漏れず自社発注車や雑多な他社流れの車両で運用を賄っていた伊予鉄ですが、「グリーン車」なんて言われていた湘南窓の京王2000系の導入から、長い事車両に関してはずーっと京王帝都流れの車両が中心のラインナップを組んでいます。

ホームから眺める古町の車庫。伊予鉄の面白いところは、路面電車も鉄道線車両も一緒くたに車庫に並べられている事にあります。高浜線は路面電車に合わせて600Vで敷かれていますので、同じ架線が張ってある構内に並べ置いても問題はないのでしょうね。横河原線・郡中線は750Vなので、郊外線の車両が複電圧対応の装置を持っているのかと思いきやそんな事はなく、単純に750V対応の車両を高浜線では600Vで動かしているだけのようです。150V程度は機器的にもバッファーの範囲内で、かつ高浜線が平坦で低電圧がさほど問題にならない、というのもあるのかもしれませんが。

古町駅は、隣の大手町駅と同様市内線(環状線)との接続駅ですが、環状線北部と市駅・JR線方面への双方の乗り換え需要がそれなりにあるようです。大手町でJRの松山駅方面へ高浜線を跨ぎ越した市内線は、再び駅の南側で高浜線を豪快に横切り、古町駅のホームに入ります。新製能車両5000形同士の交換シーン。路面電車の国内トップメーカー、アルナ車両の「リトルダンサー」シリーズの最新鋭車両です。リトルダンサーってのは、キビキビと街中で小回りの利くダンサーを想起しますけど、超低床型バリアフリー車で「段差が小さい(リトル段差)」という意味のダブルミーニングなんだって。流石は大阪・摂津のアルナ、ナニワのセンスが効いてますなw

改札を出て、古町の車庫の裏に回ってみると、井の頭線の3000系に主力を奪われたかつての京王本線のクイーン・5000系が静かに秋の鱗雲の空の下でお休みになられておりました。こうしてみると、古町の車庫はほぼ京王中古車センターという雰囲気もあり、長年京王の車両を改造してはこの会社に供給している京王重機整備サマサマってとこでしょうか。特に5000系は本線の1372mmの軌間の車両ですからねえ。勿論18mの3扉車というサイズ感は地方鉄道向きだったのでしょうが、この名車を廃車にする事なく、他の会社の車両から発生した台車を履かせて再整備し、全国の地方私鉄に納入した事は特筆すべきでしょう。富士急・ことでん・一畑・伊予・客車でわたらせ、そして富士急・伊予を経て岳南・銚電・・・

古町の駅の西側は郊外線車両のたまり場で、東側は市内線電車のたまり場。小さなピットにキュウキュウに単車たちが押し込まれています。伊予鉄の市内線は、全車が単車で連接車も2両編成もありません。市内循環が中心で、富山や広島のように郊外に伸びている訳でもないので、単車で回収出来る程度の流動という事なんでしょう。到着した横河原行きの3000系の向こうに市内線電車を見る。駅前の銀杏並木がきれいに色付いていました。

この日の松山、浮浪雲が空を覆って晴れたり陰ったり。古町の駅で小一時間滞在してあれやこれやと撮影してみましたが、郊外線の車両はほぼ井の頭線(3000系)なんですね。導入されてもう10年、3両×10編成の大所帯だから当然か。導入時に再整備を受け、3M2Tから1M2Tにユニットを変更し、制御装置も省エネを狙ってVVVFインバータに換装していて、伊予鉄全体の体質改善に寄与した車両とも言えます。まあそれにしても、現行の伊予鉄塗装は車体が蛍光オレンジ一色で目がチカチカしますね。非常に強い色味なので、車両の細かいところのディテールを出すのが難しい。

この単一色になる前は前面のFRPがオレンジ系のベージュ、そしてステンレスボディの部分は無塗装に二線のオレンジラインという割と控えめでスタイリッシュなカラーリングだったので、そっちの方も撮りたかったでなあ。井の頭線の時代を知る世代としては、やっぱりFRP部分は独立したデザインにして欲しかったかな・・・、とやっぱりここでも「昔は良かったのに」系のお話を炸裂させてしまうのでありました。

 


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